Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダンスは愉し 19

2019-02-13 19:58:33 | 日記

 「またお前から彼女を紹介されると困るからな。」

大さんは割合真面目な顔つきになると、鈴舞さんからやや顔を背けて言いました。

「だからもう俺に女の子を紹介する話は無しにしてくれな。」

と念を押すのでした。

 その後、鈴舞さんは何時もの様に大さんと連立って大学まで行ったのですが、何となく2人の会話は遠慮がちになって仕舞うのでした。

 『そうか、大ちゃんにはもう彼女がいるんだ。』

そう思うと、鈴舞さんは何だか胸にぽっかりと穴が開いたような寂しさを覚えるのでした。心のひだに秋風がスースーと吹き抜けて行くような涼しさを覚えました。その日の彼女の瞳には、校内のタイル張りの床が妙にすっきりと隅々まで見えて、講義室の部屋や窓辺の建材が妙にしんと心に沁みるのでした。

 それからは、鈴舞さんと大さんが一緒に歩くという事は、極端に少なくなってしまいました。鈴舞さんの方はまだ見ぬ大さんの彼女に何となく遠慮してしまい、大さんの方はと言うと、やはり交際している事を鈴舞さんに告白してしまった手前、あっちもこっちもという様な器用な事が出来ないタイプだったのでしょう、本来の彼女オンリーとなった様でした。


ダンスは愉し 18

2019-02-13 19:34:58 | 日記

 「みどりちゃんって、何時もすずと一緒にいるあの子だろ。」

青山大さんは答えました。「知っているよ。」そう言ってから、彼はさも気乗りしなさそうに「あの子は感心しないなぁ。」と付け足しました。

 大さんの話では、彼が目にするみどりさんは、しょっちゅう横にいる男性が変わっているというのです。そんな、とっかえひっかえ付き合う相手が変わる様な女の子は願い下げだ。という返事でした。

「すずの方から適当に断っておいてくれ。」

大さんはそう言うと、この話はもうお仕舞だとポンと鈴舞さんの頭を軽く叩きました。

「痛いじゃないの。」

鈴舞さんが膨れっ面をすると、彼女のそんな不満そうな顔を見て大さんは言いました。

「そんなお多福みたいな顔をしていると、男が皆逃げて行くぞ。だからお前には彼氏が出来無いんだな。」

等と、さも小馬鹿にしたように言って笑うのでした。

 鈴舞さんは透かさず「失礼ねぇ。」と大さんに言いましたが、内心そんな風に気安く気心の知れたやり取りが出来る、実のお兄さんの様な大さんに心底安らぎを覚えるのでした。小さな頃から知っている、幼馴染ってよいなぁと、ホンワカした気分になり鈴舞さんが大さんを見上げて微笑んでいると、

「それに、もう俺、彼女がいるんだ。」

と、唐突に大さんは、ぼそりと真実を告白するのでした。「この機会だから言っておくよ。」