Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 184

2021-07-08 17:05:14 | 日記
 私はハッと目覚めた。頭が重い。漸く目を開くとぼんやりとした視界が目に入る。私は目を擦ろうと思うが、手も重く全く動かない。今回の昼寝の目覚めは頗る悪い様だ、私は思い、もう少し寝むっていようかと考えると、目覚めから起きようとしていた自分の力を抜いて、その場に安んじる様に身を横たえた。すると、自分が伏せている場所が確りと感じられて来る。肌が触れている部分の感触が何だか気になる。何故だろうか?。

 ぼんやりと、何かしら何時もと違う気配を感じる。と、私は目を閉じた儘手に触れている物を弄って指先や掌でその感触を探ってみる。…これは?、…畳だ!。私は漸く気付いた。

 伏している私の手の指が床の畳に触れてくるのだ。そう感じると、横たわっている体の下の感覚も固く感じて来る。如何もの布団の上にいる訳では無い様子だ。『私の昼寝が?、』私にはこの状態が少し奇異に感じられた。そう感じると私の感覚もやおら目覚めた。

 昼寝じゃなかったのかな?、疑問に思った。私はこの状態に陥る前の事を思い出してみる事にした。すると、そう言えば昼ごはんを食べていないという事に気付いた。そこで私はこれは昼寝では無いと確信した。

「朝寝というものかしら?。」

そんな事を考えて呟いた。頭を動かすと、ごりごりと弾む様な感触がした。畳の目に頭の地肌が擦れたのだ。私は自分の頭が硬い畳の目に載っているのだと改めて了解した。そこでこれは2階の畳かな?、と私はパチクリと目を見開いた。布団の上で寝ていないのが私には意外だった。

 私の視界に土間の下り口の材と、その向こうにある土間入り口の玄関木戸、その桟の下部の濃い褐色の色合いと形が映り込んで来た。そこでこれは確実に居間だと判断した私だった。ではと、私は家の居間で特徴の有る吹上の天井を、自分の考えを再度確認する為見上げてみる事にした。

 だが思うように視点が定まらない。そんな中、それでも何とか居間の天井に視線が合うと、私はその屋根の裏の枠組みを見上げて、自分は居間で横になって寝ていたのだと了解した。

『子供をこんな所で寝かせて…。』

不遜に思う。何時もきちんとしろと言う私の親が、こんな事を自分の子供にするなんて。内心ムカムカ怒りながら、それでも、『私が自分でここに寝込んだのだろうか?。』とも考えてみた。

 「大丈夫かい?。」

声がして、私の目に祖母の顔が映った。祖母は私にその儘じっとしているように、動かない方が良いと私に注意するのだ。

「目が、ロンドンとパリになっているからね。」

脳震とうだろう。その内治るだろうから、じっとして休んでおいで。と彼女は言った。

うの華3 183

2021-07-08 16:14:12 | 日記
 聞かないのに、見ないのに、分かる人なんてこの世の中にいないわよ。しかも子供でなんて、いる訳無いじゃ無いの。如何にも可笑しいと長女は笑った。

 一頻り笑って彼女は言った。

「その場にいないと分からないわよ。」

冗談好きな母だと、自分の母が子供っぽく思われて来る彼女だ。

「いても分からない子が此処にいるとは。」

小さく脇へと、これは母が溢した言葉だった。

 その間、次女は要領よく、姉の機嫌の頃合いを見て取ると、事情の判じられない儘有頂天に近い状態でいる姉の背後へとやって来た。ここで次女は母に微笑んだ。母と次女、2人は了解し合ってにこやかな笑顔になった。

 この様に、母娘三者三様にこの場が収まって来たので、母である彼女は舅の家での元々の目的を果たそうと子等を誘った。「いざ、出陣!。」、彼女の号令で母娘3人は彼女達が元住んでいた家へと歩み出した。

 足早に進む次女と母、遅れを取った姉娘は心持ち歩みが遅くみえた。が、それは確かで、瞬く間に2人対1人の距離は開いていった。益々長女の歩みは重く、その歩はぴたりと止まり掛けた。

 不意に横の家の窓からこの長女の名を呼ぶ声がした。「…ちゃん、帰って来たの。」。彼女に取って聞き覚えのあるその声は、この道に面した家の若奥さんだった。若奥さんは内に入って遊んで行ったらと彼女に声を掛ける。「おばさん…。」思わず彼女はにっこりと微笑み横壁に開いた窓に目を遣った。

「ありがとう、おばさん。」

礼を述べながら、熱いものが彼女の目頭に湧いてくる。彼女は目を瞬いておばさんから顔を背けた。「これから…、」声が震えて来る。彼女はグッと唾を飲み込んだ。空咳をして、喉の調子を整えた。

 おばさんは風邪かいと気を利かせて彼女に言った。案じ顔で自分を見詰めている彼女に、私達これから用があるのだと、娘は曖昧に説明した。おばさんの方は、この顔馴染みの長女の説明に納得したのかどうか、そうしつこくも無くじゃあ後でねと彼女を送り出してくれた。昔馴染みのおばさんに、親身になって声掛けされた事で彼女は気持ちが軽く明るくなった。「じゃあ、おばさんまた後で。」にこやかに愛想良く返事をすると、彼女は距離の離れた母と妹のいる場所へと走り出した。

 「あの子も苦労だね。」「相変わらずかい。」気の毒にねと、後に残ったこの家の若奥さんとその姑である大奥さんは話した。「親はどうしたものかね、よく出来た子なのに。」「きっと手放して後悔してるよ。」そんな話を嫁姑は互いにし合った。2人の覗く窓の道の向こうには、まだ出来てからそう月日の経たない食堂の勝手口が見えた。2人は何時もの様に、その入り口に下がった暖簾の模様に難癖をつけ始めた。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-07-08 12:22:50 | 日記

うの華3 6
 しかし、ここ迄下りて来たからには戻るという訳にも行かない。厄介事が待っていると分かってはいたが、降りなければならない。 とは言っても、直ぐに階段を下る事に気乗りのしなかった。私は......

    今週は雨続きです。蒸し暑い日が続きそうです。
    今年は料理より、手芸に目が向くようです。出来上がれば写真をアップするかもしれません。それにしても、何かと気忙しい7月です。