ご近所にある兄の家に着いた彼は、何時もの様に彼の声を聞いて、玄関へ迎えに出てきた2番目の甥っ子に声を掛けました。「よっ、出迎えありがとう。」彼は声を掛けると、そのまま甥っ子と2人で家の奥へと入って行きました。
「やあ、相変わらず闊達だなぁ、男の子はいいなぁ。」
今年のこの界隈の大将に決まったんだって、こいつは凄いや、叔父さんも鼻が高いよ。そんな事を言って彼は甥っ子を高い高いと抱き上げたりします。甥っ子の方も、叔父ちゃん、俺頑張ったんだ、といってはしゃぐと有頂天になり得意気です。2人は大層仲の良い叔父甥の間柄なのでした。
「叔父ちゃんの言った通りにしたら、本当に大将に成れたんだ。ありがとう、おっちゃん。」と言って、2人で満面笑みになると小躍りして喜ぶのでした。そこへ玄関にただいまの声がしてこの家の長男が帰って来ました。長男はもう中学生でした。真新しい学生服など着て、精悍できりりとしている姿は若竹の様に見えます。
「おお、お前も帰って来たのか、見違えたよ。学生服姿は凛々しいなぁ、大人っぽく見えるよ。」
彼は長男の甥の未だ新品で真新しい学生服姿を見ると、眩し気に目を細め羨まし気に褒め言葉をかけました。そして一頻長兄の甥を囃すのでした。
「如何したの?叔父さん、今日は何だかおかしいよ。」
流石に中学生ともなると、彼は叔父の常とは違う雰囲気が分かるのでした。何時もは弟にばかり愛想をして僕はそっちのけなのに、今日は僕にまで愛想を振り撒くなんて、なんかあったの?
「さては、今日は…ちゃんと喧嘩でもしたのかい。」
叔父の心を見透かすように長男は言うと、にやりと笑って叔父の目を探る様に見詰めました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます