『なんだ、お父さんとおじさん仲がいいんだ。』何だか父の様子が怒っているようだと感じ、2人は自分を遠ざけて、
その後喧嘩でもするのではないかと案じていた蛍さんは、思わずほっとして胸を撫で下ろしました。
蛍さんが父の険悪を感じながらも2人の傍を離れたのは、父がそうでも、
相手のおじさんがにこやかで喧嘩腰ではなかったからでした。
その様子に、彼女は2人がそう変な事にはならないだろうと予測して2人の傍を離れて来たのでした。
又、もし喧嘩が始まれば、自分より母の方が仲裁として頼りになると知っていたからでした。
『一応お母さんにこの事を報告しておかなくちゃ。』と、彼女は座敷へ急ぎました。
お父さんと、お父さんのお友達のおじさんが、仲良く本堂で話をしている。
そう娘から聞かされた母は、まぁ、あの人は知り合いと話し出すと長いからねぇと、ホホホと微笑むと、
お父さんの友達って誰かしら?と気になり、何となく本堂へ行ってみるのでした。
そこで彼女は夫をなだめて座敷へ連れ帰るという大仕事を遣り終える事になり、皆が待つ座敷にやれやれと帰って来ました。
父は廊下の端で頭を冷やしてから入ると、頬を赤くすり成して、気持ちが静まるのを待っていました。
本堂では、腰を落として頬を撫でながら、光君の祖父が、やれやれと、娘の父というのは真面に相手に出来ないと呟くと、
孫娘の祖父としての自分の立場を初めて第三者の目で見て考えてみるのでした。
『ああ、孫もやはり男が一番だな。男同士だ。』そう考えると、この案外気に入っていた世界も急に色褪せて来て、
元の光君のいる世界に帰りたいと願わずにはいられ無くなって来ました。
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