Jun日記(さと さとみの世界)

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傘の思い出

2018-01-11 10:37:07 | 日記

 そこで私は傘に背を向けて、お店に背を向けて、またアーケードの元の位置に戻ると空を見上げました。もう少しで止むと思うんだけどなぁと、殺風景な風景を眺めました。愛想無い景色を背景に雨はまだ暫く続きそうです。そこで所在無さに、雨の粒が線を引いて広い空間を落ちていく様を眺めてみました。

 『楽しくないわ。』と思います。何もない空間を経過して行く雨粒は素敵なのに、背景に何かある宙を落ちる雨粒を見詰める事は詰まらないわ、と思います。雨の鑑賞はやはり見る場所によるのだと再認識したのでした。そう思うと、無意識に私の意識はやはりあの有色を持つ傘に向くのでした。

 私が眺めていた景色は商業ビルが1つ2つ色合いを発しているだけ、目に映るのはほぼ無彩色の光景だったのです。そこで私は自身の嗜好に、多分一般的な人もそうなのだわと気付くと、本当にこのお店の人って的を射た事をしているんだわ、と感嘆しました。ハーッと、肩を落として、敗北感に似た脱力感でした。流石に此処は都心の一角なのだと感ずるものがありました。

 当時の私は唯でさえ湿っぽくなりがちな頃でした。それで何時も明るい物や楽しい物に目を向ける事で自分を鼓舞していました。その為この時も、『予想外の雨に降られて此処でこう沈んでいるより、ぱぁっと明るく、いっそ後ろのお店の人の思惑に乗ってしまい、気に入った傘の1つも買ってしまおうかしら。』、そんな考えが胸の内に閃いて来ました。

 『無駄遣い。』そんな言葉も脳裏に点滅していました。が、私はちらっと後ろの傘を見ました。そして意を決して振り向き、お店のガラス戸に近付いて行きました。まぁ、見ているだけなら…。戸の外で鑑賞しているだけなら…。見るだけなら只よね。こんなに奇麗な色々は無いのだから。断片的に私はそう思いました。此処に開いた傘達は、私がかつて見たことの無い(買った事が無い)様な花模様、色合いをしているのです。物珍しく、そして地方から出て来てそう間も無い私にとっては、やはり「素敵」の一言なのでした。

 ここで突然ですが、気が付いたので訂正します。この通りは杉並駅の近隣ではなく、練馬駅の近隣です。私は当時上石神井に住んでおり、練馬区と杉並区の狭間と言えるような場所にいました。それで杉並の地名もとても印象が強いのです。上石神井は当然練馬区です。この日私は区役所に用がありました。その途中での出来事なのです。

    

 


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