Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

蝶ちょう(1)

2018-12-15 17:34:00 | 日記

 私はどうやら飛ぶ動物が好きな様です。最初に好きになったのは蝶でした。多分私の目線の前をひらひらと飛んで目に捉え易かったからでしょう。鳥を好きになったという記憶がこの時分には有りません。鳥の飛ぶ位置とスピードに私の視覚が対応していなかったのでしょう。

 この頃の私は戸外へよく散歩に出かけていたものです。家から連れ出されて、と書き加えた方が良いでしょう。お供は父でした。そうですね、私が父のお供で戸外へ運動に連れ出されていたのです。そんな散歩の途中で私は蝶に出会ったのでした。蝶は地面近くの花等に止まり、暫く吸蜜していてくれるので、目で捉え易く分かり易かったのでしょう。それと気付いて見ている内にひらひらと飛び上がって宙に舞う、その地面から空間へと飛翔する事が出来るという蝶という動物に、幼い私は生まれて初めての憧憬を抱いたのでした。

 『私も飛べるのだろう。』こうやって動く事が出来る自分も、動物の仲間として何時か蝶のように空間へ舞い上がれるのだろう。そんな事を思ったものです。この頃は、動き回れる物と静止していて動けない物との区別はついていました。それは概ね動物と植物でしょうか、そんな違いも漸く理解した頃と言えばそうでした。

 物体と生物の区別もついていたので、私は父に自分は何時飛べるようになるのかと尋ねたのでした。自分は動物なのだから、動く事が出来る生き物なのだから、生きている動物の蝶と同じで飛べるのでしょうと言うと、それは何時になるのかと聞いたのでした。勿論父はそんな私を一瞬酷く小馬鹿にした顔で見詰めると、一体全体如何して私がそんな妙な考えを持ったのかと、子供の思考の突拍子もない発展性に呆れ果ててしまい、口をポカンと開けて私を見ると、まるで異質な物を見るように冷たい他人の視線を注ぎました。そして問い掛けた私には特に何とも返事の言葉を発しないで、静かに私に背を向けると帰途についたのでした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿