「困ったわ。」
彼女は呟きながら、迷惑そうな視線を叔父に投げかけました。何だか何時もと雰囲気が違うなと叔父は思いました。先ほどの義姉さんのお茶出し時の様子、そして今の姪の困惑した表情と自分に送った視線、長男の甥にしても、何時もはこの家に来た自分に対して、如何したのだと尋ねたりした事は無かったのでした。
『父さん達だな…。』
彼は今日、自分の家にも来た両親の言動を思い出すと、兄の家族達の様子にも思い当たり合点しました。
「お前、もう少し一家の所帯主らしくしたらどうだい。」
彼の家の座敷で、座布団にきちんと正座して座卓に着くと、彼と面と対した父はそんな言葉で彼に切り出したのでした。
商売の方も今一つ身が入っていないよ。一家の生計を立てるという事を考えていないからじゃないのか。お前ももう子を持つ親なんだよ。家族を養う為に自分で生計を立てて行かないといけないんだ。家族が生活出来るだけの収入を、自分できちんと稼がないといけないんだよ。…。云々。
そして父は最後に、「何時までも私や兄さん達に頼っていてはならん。今後は自分の事は自分でしなさい。」と、確り彼の目を見据えると、可なり生真面目な顔付になり、また言葉も叱る様なきつい調子で言い渡したのでした。
「子供にかまけて、何時までも子供と一緒になって遊んでいてどうする。もっと大人になりなさい。」
と、父ばかりで無く、父に並んだ母までも彼を叱りつけると、
「女子供の教育は母に任せて、お前は仕事の事だけを考えていなさい。もっと気合を入れてお父さんの仕事を見習い、せっせと商売に励みなさい。」と母も彼に発破を掛けたのでした。
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