Jun日記(さと さとみの世界)

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マルのじれんま 35

2020-05-28 10:51:06 | 日記
 ばらばらばら…。大粒の雨粒です。雲行きが怪しいと思ったら、とうとう雨が降り出しました。

「生暖かい風が吹くと思った。」

やはりねと紫苑さん。雨が降ってきましたな、避難しましょうとお隣のマルに声を掛けながら、彼は手早く釣糸を水中から上げるとぱたぱたと道具を仕舞い始めました。

 そんな紫苑さんの言葉を受けて、マルも釣り仲間と同様急いで道具を片付け始めました。「では、家に避難しましょう。」、こうマルは紫苑さんに応えます。2人はその場で即座に話しをまとめ、彼らの内ここから家の場所が近い方のマルの寺へと避難する事に決めました。

 「ずぶ濡れにならない内に、さぁ急ぎましょう。」

こう言って釣り道具を抱えて駆け出したマルの声掛けに、紫苑さんも自分の釣り道具を携えて後に続きました。マルは駆け出しながら、素早く宇宙船に向かって伝言を発しました。それは艦長のバツ・クパック宛の物でした。また他にも、船内のシルに向けて心の内で呼びかけてみます、

『シル、聞こえるかい?、聞こえたら返事をしてくれ。』

彼はこう内心強く念じて彼女を呼び出してみるのでした。シル、聞こえたら相談に乗ってくれないか。

 公園のお堀端から雨に降られて駆け出してきた2人は、公園傍の舗装路の家並みの辺りまで来ていました。頭を下げて走る2人でしたが、大粒の雨に共にもうずぶ濡れ状態でした。走り込んだ丁度この道の角に在る家の軒先に、煙草屋さんの赤い看板が見えます。あそこの煙草屋でちょっと軒先を借りましょう。紫苑さんが言うと、マルも目を上げて看板を確認しああと応じました。

 マルは家にかけるからと称して、煙草屋の軒先に在った公衆電話、通称ピンク電話の受話器を手に取り話し中でした。電話の相手はシルです。彼女は既にバツ艦長の許可を得て、この地表に降りて来る事になっていました。

「ええそうです。艦長から指示を受けました。」

シルは答えました。マルの先程の要請を艦長は許可したのです。傍で雨宿りする紫苑さんの手前、マルは差しさわりなく客連れで帰宅するという旨の言葉を発しながら、じつはその胸中でシルに紫苑さんについての援助を頼むのでした。

『そういう訳でね、地球人の男性なんだが、一つ君も面倒を見てやって欲しい。』

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