Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、199

2017-06-05 20:36:25 | 日記

 「そんな話があったなんて、私は初耳です。家内に確かめてみます。」

光君の祖父が真顔でそう言うものですから、蛍さんの父と祖父もこれはと看護婦さんの話の方が眉唾物じゃないのかと感じました。

何しろ光君の祖父の性格が、歯に衣着せぬ言い方をする真摯な人柄という事が分かっていましたから、言葉の通りで嘘はないと思えたのでした。

 それで、と、光君の祖父は再び口を開きました。

「何故この病院に来られたんです?一旦お家に帰られたのではないのですか?」

わざわざこんな遠い病院まで来られなくても、お宅様は街中の方、お家の近くに良い病院が沢山おありでしょうに、

「私の方が不思議に思っていたのですよ。こんな田舎の家の隣の病院で、昨日の後、先程初めてお会いしたのですからね。」

孫の光の方は大層喜んでいましたが、私にすると驚きでした。あの後ずーっと入院しておられたのだそうですね。家の子のせいだったんでしょうか?

「どうしてもっと早くに申し出てくださらなかったんです。」

こちらでも誠心誠意事に対処いたしましたのに。と、ここ迄一気に言うだけ言うと、光君の祖父は肩を落とし、蛍さんの病室から出て行こうとしました。

 こうまで言われては、こちらが誤解していたのだと蛍さんの父も祖父も気付きました。酷く極まりが悪くなり頬も赤らんで仕舞います。

 「いやいや、こちらに誤解があった様です。真に申し訳ない事です。失礼致しました。」

出て行こうとする光君の祖父の背中に慌てて言葉を掛けて、蛍さんの祖父は、

「本当に申し訳の無い、どれ私にお宅様の坊ちゃんのお見舞いに伺わさせてください。」

と明るく先方の気を引き立てるように言うと、光君の祖父と同行して蛍さんの病室を後にしようと、彼に続いて廊下へ出ようとしました。

 それを手振りで軽く制して光君の祖父は言いました。

「いえいえ、それには及びません。孫はまだ治療中でしょうし、私も家内に先程の事の真偽を確かめてみますから。

この場はこの儘少しお暇させてください。」

そう寂しく笑って言うと彼は病室内に深々と頭を下げ、その背に疲労感を漂わせて蛍さんの病室から姿を消したのでした。

 「返って申し訳の無い事をしたんじゃないか。」

あんな生真面目な人につっけんどんな言い方をして、だからお前は早とちりなんだ。と、蛍さんの祖父は息子を叱ります。

「だっておとっちゃん、おとっちゃんだって看護婦さんの物言いを聞いただろう。」

そう蛍さんの父は弁解するのでした。

「誰だって、変な事になっていると思うじゃないか。」

「そうなっていなかっただろう。」

そう蛍さんの祖父は息子の言葉を打ち消すと、ぷいっと息子から顔を逸らし、窓辺に歩いて行って病院の中庭を見下ろし気晴らしを始めました。

が、それでも気が晴れなかったのか、到頭病室からふいっと姿を消してしまいました。


います

2017-06-05 20:23:15 | 日記

 古くは三遊亭円楽さんでした。現在は新しい方が勤めておられますね。昔の志の輔さん?でしたっけ。

もう交代されてから長いので、忘れました。歌丸師匠も好きですね。仁鶴さんや、

もう亡くなられましたが、…名前が出てきません。顔だけ浮かびます。

創作落語のうまい方だったのですが、その内その方の名前を思い出すかもしれません。

 三枝さんですね、思い出しました。

検索したところ、まだ健在の方だったので、大変失礼をしてしまいました。申し訳ありません。

最近テレビを見ないので、こんな事になってしまいました。お名前が変わったのですね。

現在は桂文枝(6代目)さんでした。世事に疎い私の事、お許しくださいませ。


ダリアの花、198

2017-06-03 10:03:33 | 日記

 蛍さんの父が彼女の病室で帰り支度をしていると、病室の入り口に光君の祖父が顔を出しました。

蛍さんの祖父がそれを見ておやと声を発します。

「おまえ、…」

そう祖父が息子に声をかけると、蛍さんの父も入口の光君の祖父に顔を向けました。

「あら、これは、」

そう言ってから、先程はどうもと、まあまあという感じで内心冷や汗をかきながら笑顔を作ると、如何されましたかと尋ねます。

「いえ、内の孫も入院する事になりましてね。」

ほー、それはそれはと大袈裟に父が気の毒がると、蛍さんの祖父は、こらこらという感じで目で息子を制し向こうの祖父に

「大変ですな、ご心配でしょう。」

と声をかけました。

 「はは、まぁ、大したことは無いのですが、先程治療した後家に帰る途中で転んだとかで、間の悪い事に家の角にある電柱にぶつけましてね、」

たん瘤を電柱に巻いてあった金属の看板の先で切りまして、今縫っている所です。大事を取って入院させることにしました。

「この部屋から直ぐの向こうの部屋です。入院仲間という事で、良かったら遊びに来てやってください。」

孫も喜びますから。そう一言添えると光君の祖父は笑顔で挨拶を終えました。

 「へー、そんな事がね。」

と、父はあくまで強気で大袈裟に驚いて見せます。

「大層な災難にお遭いになって、余程日頃の行いが良いのでしょうなぁ。」

等と嫌味の1つも出てしまいました。光君の祖父は顔を曇らせました。

 「あなたさん、家の孫に何か一物おあり何ですか。」

こっちは先程の、お嬢さんの言葉の非礼の事は言わないでいるのに、孫には因縁をつけるんですか?

「あら、娘がここにいるのは、元はと言えばそちらさんのせいじゃないですか。」

そう父が言い出した時、蛍さんの祖父が再びそれを制しました。

 「いえ、実は、この病院がお宅様の隣と知りましてね、妙だという事になりまして。」

「しかも、こちらの病院のお嬢さんとお宅のお孫さんは同い年で酷く仲が良いと聞きました。だからもう退院してくれと言われる始末でして。」

それで今せっせと家に帰る準備をしている所なんです。

退院すればここに入院していない事になる訳ですから、お宅様とは仲間にはならないと思いましてね。

そう祖父も非難するような眼で光君の祖父を見ながら、口調だけは丁寧に落ち着いて話します。

 「まあ、誰がそんな根も葉もない事を言ったんですか?」

光君の祖父はええっとばかりにそう言うと、意外な事に本当に驚いたようでした。


ダリアの花、197

2017-06-02 14:44:20 | 日記

 『ライバル登場か。』

蛍さんの父は娘の病室に戻り、娘を寝台に寝かせ自分は寝台の傍らの椅子に腰を下ろすと考えました。

そして、隣の坊ちゃん、という言葉にはたと気付くのでした。

 「隣だって?!」

つい言葉に出てしまいます。

えー、じゃあここは、そう思うと自分達が良いように相手の手の内に取り込まれているのだという不安感、

恐怖めいたものをひしひしと感じ取るのでした。

 『それで義姉さんがいち早く姿を消したのだ!』あの丁寧な義姉さんが、あっけなく消えてしまったのは実に不思議だと思ったが、

義姉さんはこの内に劣勢な情態を何かでいち早く察知して、機敏に事に対処したんだなぁと、蛍さんの父は改めて兄嫁の世渡りの巧みさに感じ入るのでした。

 「うーむ。確かに兄さんは良い嫁を貰った。」

全く父の言う通りだと感服して唸っている所へ、当の蛍さんの祖父、彼の父が入り口から入って来ました。

 「お前何かあったのか?」

不安げに顔を曇らせて蛍さんの祖父は息子に尋ねました。

「今階下で、何だか婦長さんとかいう人から直ぐ退院してくれと言われたが、ホーちゃんの具合は?大丈夫なのかい?」

さあな、と蛍さんの父は答えます。

「この病院は人の怪我より身内の事大事なのさ。」

そう言って、診察室で聞いた話を父にするのでした。

 「おとっちゃんは知っていたのかい?」

そう蛍さんの父が彼の父に尋ねると、ああ、昨日知ったんだよと父は平静に答えます。

「お前から向こうの電話番号を貰っただろう。」

 そう言って蛍さんの祖父は胸元から白い紙きれを取り出して息子に渡しました。

「その紙に書いてある住所が隣だよ。」

じゃあ、本当に向こうさんはこの隣に住んでいるんだね。蛍さんの父は全くもって信じられないという感じで目を丸くしてしまいました。

何でこんな事になったんだい?タクシーは家に帰る途中でこの病院に来たんだろう。

この住所からすると、ここは寺から家に向かう方向と逆の方向じゃないのか。そう蛍さんの父は不安そうに、不思議そうに声を落として喋るのでした。

 「そこだよ。」

祖父は言います。私もこの事実を知った時には愕然としたものだ。どうなっているのかねぇ。

何処でこんな事になる羽目になったのか、どう考えても合点がいかないんだ。祖父は事態を読み切れ無かった事に息子同様不安感を抱いていました。

が、今更考えてもどうなるというものでもあるまい。向こうさんの方が一枚上手だったという事だよ。

そうだろうと祖父は覚悟を決めたように息子に言うのでした。父の言葉に息子は顎を出すと、

「そうだけど、今からでも何とかなるんじゃないか。」

病院では退院してくれと言っているんだから、このまますぐに車を呼んで家に帰ってしまおう。明日になれば向こうでも大きな病院が開くだろうし、

ここより病院も大きい方が安心というものだ。そう蛍さんの父は祖父に自分の意見を言うのでした。

 

 

 


作りません

2017-06-02 09:59:14 | 日記

 過去には梅干しも、梅シロップも作ったことがありますが、現在は全く作っていません。

幼い頃から、家では梅干し作業は毎年の初夏の風物詩でした。が、市販の物が多く出回り、

大気が汚れ始めてから、我が家では手作り梅干しが段々廃れてしまいました。

私自身も実際に手作りしましたが、日干し作業の時に白くカビが来るようになって、これはと思い止めてしまいました。

 その後、梅シロップという物の作り方を知り、2年ほど作ってみました。かき氷や、水で割って夏に愛用しました。

この梅シロップ、舌が痺れる感じがあり内心不安でした。アレルギーのせいかなと思ったり、それでも梅の事、

青梅は昔から要注意と聞いていたので、それが頭にあり不安を払拭仕切れなくて、

とうとう作るのを止めてしまったというのが本音です。