かなり雲に覆われた空を飛行する物音が聞こえ、網戸を
透かして見上げたが何も見えません。雲に隠れているのか、
音速と飛行する物の速度と高さの違いで、見当違いの所を
見ているのか、そのうち音は消え風の涼しさが網戸の目を
抜けて伝わってきます。
あわせて、まだ暑さも混じった感じでもし風の涼しい部分
が青、暑い部分が赤で表わされ流れて来たとすればかなり
美しく入り混じった渦状の流れとなって、身体をとり巻き部
屋を流れ過ぎていくのでしょう。
9月の上旬、赤い部分が多く青い流れが少なかったり、そ
の反対だったりしながら、全体として青の勝ち、ということに
なっていくわけです。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
昔の人は聴くことのなかに見ることを感じていたのでしょう。