3・11直後、破壊された生活の場から人びとは何を求めていたのでしょう。
言うまでもなく、食べ物、水、そして衣類に体を休めるところ、衣食住です。
ですから、石巻市にある金港堂という書店が営業を再開した日・4月27日
ある店員が「やっと再開できたという気持ちの一方、書店なんかにお客さん
は来ないんではないかとも思っていた。本というのは趣味の一部で、生活が
苦しい時最初に切られる部分だから本は売れないだろう」と、考えたのも肯け
ます。
ところが 「それが逆だったんです、お客さんが書店に集ってくる様子を見て、
自分の仕事ってこういうものだったんだと発見した思いでした」と語っています。
1995年1月の阪神・淡路大震災のとき、ジュンク堂書店・サンパル店が再開
したのは2月3日、震災からわずか半月余でした。人の住んでいないこの地域で
開店してなにになるのか、との後悔をしつつの営業開始だったそうです。
ところが、「シャッターを開けた途端、だぁーとお客さんが入ったこられてね。そし
て僕(ジュング堂工藤会長)が忘れられないのは、その方々から口々にお礼を言
われたことなんです」、続けて「これまで本屋は非常時に必要とされる商売ではな
いと思っていたのです。本当はそうではないんですね」
私の経験でも昨年の5月、石巻市に支援活動でいろいろな物品を団地に持ち込
み人びとに渡していた時、小学一年生くらいの子どもから 「こどもの本はないの?」
と聞かれたのでした。 玩具は幾つか置かれていましたが子ども向けばかりでなく、
本類は何も持ち込んでいませんでした。
私達の生活の本質は「衣食住本」、といっては言い過ぎでしょうか。