花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

横浜美術館「ホイッスラー展」を観た。(1)

2015-01-22 23:59:21 | 展覧会
前回空振りした横浜美術館で、やっと「ホイッスラー展」を観ることができた。

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler, 1834 -1903)は米国出身で、主にフランスや英国で活躍した。
展覧会構成は… 第1章 人物画 → 第2章 風景画 → 第3章 ジャポニズム → 参考展示映像:ピーコックルーム…と続いた。

さて、展示は初期の人物画から始まり、ホイッスラーの画風の変遷がよくわかる展覧会だった。特にホイッスラーがクールベから影響を受けたというのが意外で、クールベから唯美主義へというのは振幅が大き過ぎるのではないかと思った。が、その間に色々と試行錯誤を重ねたようで、エッチング作品で身を立てたり、バルパライソに逃避したり、作品が売れ名声を得るまでの苦労(あがき)が作品からそこはかとなく偲ばれた。まぁ、有名になってからもラスキンとの裁判があったり、ピーコックルーム事件があったりと、画面に見える美々しい色調のハーモニーと画家の個性(アク)の強さとのギャップがなかなかに興味深くはある。うむ、もしかして一房の白髪、或いは《ノクターン》の金色の花火こそ、ホイッスラーなのかもしれない。

で、私的にモヤモヤだった風景画の「唯美主義」についても、作品や解説からようやく了解できた。特に公式サイトからダウンロードできる「ジュニアガイド」がわかりやすく、「こども」だけでなく「美術ド素人年齢だけオトナ」も楽しくお勉強できた。これから観る方は印刷(プリント)して持参しませう。

■□ホイッスラーは「どんな色で描くか」、「どうやって色と色をひびきあわせるか」を大事にした画家です。さまざまな楽器の音色が合わさってひとつの音楽となるように、色や形が調和した絵を目指したので、シンフォニーやハーモニーといった音楽で使われる用語を題名につけました。□■

さて作品の方だが、初期の《煙草を吸う老人》の厚塗りの目鼻立ち部分はクールベというよりレンブラントっぽく見えたのは気のせいだろうか?《灰色のアレンジメント:自画像》は画家自身のスカした感じが微笑ましく、自意識の強さが透けて見える。いかにもダンディらしいが、ロベール・ド・モンテスキューと同時代人だったのね。って、今調べたら二人はお友達だった(・・;)


《灰色のアレンジメント:自画像》(1872)デトロイト美術館

灰色と黒のアレンジメントはベラスケスからの影響のようで(マネもそうだけど)、黒の諧調は実にシック。《トーマス・カーライルの肖像》の構図の面白さ(画家の母の構図と一緒)、《スペイン王フェリペ2世に扮したサー・ヘンリー・アービング》のコスプレの面白さ(ティツィアーノ作品想起)、《ライム・リジスの小さなバラ》はモデルが可愛らしく、すごく得していると思う。まっすぐな眼をした少女に赤の諧調がとても似合っているのだ。


《灰色と黒のアレンジメントNO.2:トーマス・カーライルの肖像》(1872-73)グラスゴー美術館

《灰色と黒のアレンジメントNO.1:画家の母の肖像》(1871)オルセー美術館


《ライム・リジスの小さなバラ》(1895)ボストン美術館

ということで、次回に続く。