花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

仙台市博物館「国宝 吉祥天女が舞い降りた!」を観た。

2015-05-26 00:36:39 | 展覧会
書くのが遅くなったが、仙台市博物館「国宝 吉祥天女が舞い降りた!-奈良 薬師寺 未来への祈り-」展を観た。


仙台市博物館

普通なら東京国立博物館あたりで人混みにまみれながら観ることになるであろう《吉祥天女像》を、ゆったりとした空間で(ガラス越しではあるが)間近に観ることのできたことは誠に幸いである。たとえ所蔵している薬師寺の公開時でも、こんなに近くでゆっくりは観られないであろう。仙台に貸し出してくれた奈良薬師寺さんのご厚情に感謝!!


《国宝 吉祥天女像》(奈良時代) 薬師寺(奈良)

初めて観る《吉祥天女像》は天平の色香を纏っていた。黒髪の花簪がふくよかな顔(かんばせ)に良く似合い、唇の紅は褪せもせず時を超えて「天平美人」の証しであり続ける。さればこそ、ゆるりとした白襟元から覗く紅重ねは呼応し、馥郁として天女のかぐわしき色香を立ち上らせる。

天女はふと優雅に身をひねり軽やかに足を進める。歩みに誘われたかのように風が舞う。天女の衣は風を孕み、風は衣と戯れる。風を遊ばせながら舞い降りた天女は掌に載せた紅き宝珠を差し出そうとしている。どうやら私たちの願いをかなえる吉祥・福徳の宝珠であるらしい…。

子細に観る天女の衣は、天平の粋を極めた意匠デザイン(模様)と綾なす色彩のハーモニーで現代人の私をも魅了する。繊細で流麗な線描や、白の効果的使い方の上手さ、紅の諧調、緑の諧調などの暈繝の巧みな組み合わせなど、当時の技術力や美意識の高さをも伺わせてくれた。

会場には《吉祥天女像》のCG復元映像も展示されていたのだが、現代に甦った天平の鮮やかな色彩は一瞬眩暈を覚えるかのような原色で、わびさび以前の当時の日本人の色彩感を思い出させてくれた。確かに大陸から渡った仏教建築や仏教美術も鮮やかな朱赤や金色などに彩られていたのだし、《吉祥天女像》の眩い清明さは金色に輝く仏像群に負けぬ色彩力を持つとも言えよう。

しかし、だ。利休のわびさびを経た現代人の私の目には(多分に古典嗜好ではあるが)、原色キラキラCG復元《吉祥天女像》はいささか漫画チックに見え、本物とのギャップの差に大いに戸惑ってしまったのだ。だって復元天女には色香なんて感じられないんだもん!

すなわち、《吉祥天女像》の纏う天平の色香は、時をかけてじっくりと熟成されたからこそのものだと、美術ド素人の私は確信したのだった。お粗末(^^;