花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ティッセン=ボルネミッサ美術館「カラヴァッジョと北方の画家たち展」感想(3)

2016-09-21 00:53:28 | 展覧会

・ローマのカラヴァッジョ(その2)

カラヴァッジョ作品の前半(その1)は初期風俗画が中心だったが、後半は宗教画が中心だった。東京の「カラヴァッジョ展」がある意味静物画描写の際立つ傑作風俗画2点を中心とした構成であったのに対し、ここではドラマ性の際立つ宗教画ゆえに、作品と対峙した時により深く画面に惹き込まれる。もちろん、静物画好きの私であるから前者を軽んじるつもりはない。

・《聖女カテリーナ》(1598年)ティッセン=ボルネミッサ美術館

・《ゴリアテの首を斬るダビデ》(1600年)プラド美術館

・《イサクの犠牲》(1601-02年)ウフィッツィ美術館

・《荒野の洗礼者聖ヨハネ》(1604-05年)ネルソン=アトキンズ美術館

・《瞑想する聖フランチェスコ》(1605年)クレモナ市立美術館

このうち4作品は最近観ているので、やはり久しぶりの《荒野の洗礼者聖ヨハネ》に目が行く。2013年に観たロザンゼルスのカウンティ美術館「身体と影-カラヴァッジョと彼の遺産」展以来か?

ネットから綺麗で見やすい画像を拝借(^^ゞ ↓

オッタビオ・コスタの注文により描かれたこの《荒野の洗礼者聖ヨハネ》、ここでは美しい若者であり、観る者をにんまりさせてしまう「際どさ」がある。コルシーニ美術館作品もカピトリーノ作品(笑うイサク)もだが、スポットライトに浮かび上がるが故に、視線が身体の線を追ってしまうのだよね(汗)。言わば、カラヴァッジョは聖と俗の間(あわい)をニヤリとしながら描いてみせるのだ。 

背景は闇に落とし込んだ鬱蒼とした葉の茂みで、左前方からの光に浮かび上がる聖者(深い影の下の眼差しは瞑想と言うよりも何か思索をしているようだ)とその紅色の衣紋描写がひときわ目を惹く。だが、その下からのぞく左足(対向右)のヒザカブがやはりキモでしょ?(^^;; そして、下草にまで届く光のニュアンスがこの空間を形成しているのだと思う。 

(ということで、続く...) 



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14 コメント

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むろさんさん (花耀亭)
2016-10-22 00:02:14
三井の内容が良かったとおっしゃっていただき、ジモティとして何やら嬉しいです♪
で、やはり空いていましたかぁ(^^; 。「ぶらぶら美術館」でやっていたので、少しでも観客が増えると良いのですがね。

>自分の心に感じた作品・作家を少しずつ増やしていけばいい
むろさんさんのおっしゃる通りだと思います。私もそのようにして好きな画家・作品を増やしている最中です。それに、美術館に行っても興味を持っていないと、見ていても記憶に残ってなく、後で残念に思う事が多々あります(^^ゞ
むろさんさんのご興味がどんどん広がり、海外の美術館制覇に向かわれるご様子もよくわかります。好きな画家や観たい作品が増えるのって嬉しいですよね(^^)。むろさんさんの次回の海外美術館遠征がまた楽しみです。アバウトな私と違い、きっと念入りな下調べをされるのだろうなぁ(笑)
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遅くなりましたが (むろさん)
2016-10-20 00:30:00
三井記念美術館は仏像についてはなかなか通好みの展示をしてくれます。過去には大津石山寺多宝塔の快慶作大日如来とか鳥取三仏寺の蔵王権現とか。館長と主任学芸員がともに仏像の専門家なので、ファンの気持ちがよく分かっているようです。今回の松島展もなかなかいい内容でした。混んでいないのは助かりますが、営業的にはちょっと心配ですね。

私としては北イタリアの画家に限らず、自分の心に感じた作品・作家を少しずつ増やしていけばいいと思っています。ヴェネツィア派やバロック絵画については、無理に勉強しようというのではなく、自然体で興味のある部分からということで、特にバロックは数年前からカラヴァッジョ、ベルニーニ、天井画のだまし絵とかローマの建築あたりから見ていくようにしています。アメリカの美術館巡りは30年ぐらい前に1度行ったきりで、しかもその時はボッティチェリ、フィリッポ・リッピとルネサンスの3巨匠が主目的だったので、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館、ハーバードのフォッグ美術館、フリックコレクションなどへ行きましたが、メトロポリタンでもカラヴァッジョやクリムトの記憶はありません。次回行けるのはいつになるか分かりませんが、メトロポリタンとワシントンNGはそれぞれ2日ずつぐらいかけてじっくり見たいですね。キンベル美術館はちょっと行きづらいかもしれませんが、カラヴァッジョの他にもラ・トゥールのいかさま師、ミケランジェロ?の聖アントニウスの誘惑(Rizzori―集英社版美術全集「ミケランジェロ」の全作品リストでは一番最初に出ている絵)、快慶作の釈迦如来など見るべきものがいろいろあるので、将来是非行ってみたいと思っています。でも、アメリカよりもロンドンNGでカラヴァッジョやクリヴェッリを見る方が先かもしれません。(過去に何度か行ってますが、カラヴァッジョの記憶はなし。)その時はダブリンのカラヴァッジョも見たいと思います。
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むろさんさん (花耀亭)
2016-10-09 23:54:35
おっしゃる通り、時代によって変わるのは仕方ないのでしょうね(溜息)
ちなみにバルベリーニは一時時間制だったのが、今は普通に入場できています。
で、むろさんさんは仏像鑑賞もされているのですね!地元民の私は瑞巌寺ぐらいしか...(^^;;。三井で展覧会をやっているようですが、お客さんは入るのだろうか?とちょっと心配したりしています(^^ゞ

クリムトはむろさんさんにとってボッティチェリと共通する魅力を感じられたようですね。追いかけたくなる画家が増えると嬉しくなりますよねっ♪
>マンテーニャ、ジョルジョーネ、クリヴェッリなど
私的にはむろさんさんが北イタリアの絵も気に入られたことがなんだか嬉しいです(笑)
アメリカも名画揃いですから、きっと充実の旅になると思います。もちろん、キンベルは珠玉の美術館ですし、お勧めですよ!♪
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ボッティチェリ、クリムト、カラヴァッジョ (むろさん)
2016-10-08 22:55:11
美術館や教会の状況は時代によって変化するので、最新状況を把握しておかないと失敗することがありますね、写真が撮れるかどうかはあまり大きな問題ではありませんが、以前は自由に見ることができたのに予約制になったり、(フィレンツェの洗礼堂やサン・ロレンツォのように)以前は自由に入れた教会が有料になったり、時代に応じて変化していくのは仕方がないことと思っています。日本でも例えば宮城県の仏像を例に上げると、松島の五大堂の五大明王が東京で見られるとは思ってもいませんでした。双林寺の薬師如来も40年ぐらい前に築館町まで見に行きましたが、昨年上野の東博で会津の勝常寺、水沢の黒石寺薬師と一緒に拝観できた、といった具合で時代の変化で見られるようになるものもあれば、美術の大衆化で見る人が多くなって見にくくなるものもあるのでしょう。ローマの教会で今は自由に見ることができるカラヴァッジョの絵も将来は有料になったり予約制になったりするのではないでしょうか。ボルゲーゼも40年ぐらい前に初めて行った時はすぐに入れましたが、今は予約制ですね。バルベリーニも3年前は自由でしたが、今は予約制?

クリムトですが、今回の旅行はボッティチェリとカラヴァッジョが主目的だったのに、行ってみたらクリムトと北イタリアの絵(マンテーニャ、ジョルジョーネ、クリヴェッリなど)を見るのがメインになっていたようです。美術史美術館階段左側のクリムトのヴィーナス、クリムトの絵では最もボッティチェリに近づいた作品だと思います。双眼鏡で長時間眺めていました。クリムトの出身が工芸美術学校であり、一方ボッティチェリは金細工師から出発しているということで、私がクリムトに惹かれるようになったのも当然と言えば当然です。数年前にニューヨークへ移ったアデーレの像やメトロポリタンのメーダ・プリマヴェージを追いかけて来年あたりアメリカ東海岸へ行ってしまおうかとも思っています。(そうなったら当然カラヴァッジョの若者たちの合奏やキンベルのいかさま師も視野に入ってくるのですが。)

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むろさんさん (花耀亭)
2016-10-05 01:17:07
サンスーシ絵画館の貴重な情報をありがとうございます!! 何と撮影できたのですねっ(・・;) わぁ~、私も再訪したくなりましたです。
ちなみに、私が行った時はベルデヴェーレでクリムトやシーレ作品を撮影できました。クリムトは《接吻》ぐらいしか撮りませんでしたが(^^ゞ
写真撮影ですが、プラドは昔良かったのに今はダメ、ウフィッツィは大昔は良くて、つい昔はダメで今は良い、というように美術館の方針って変わりやすいですね(-_-;)
で、むろさんさんはクリムト好きでもいらっしゃったのですね♪ ボッティチェリもですが、描く女性像が特に魅力的ですよねぇ。アルベルティーナの展覧会もタイミングが良かったですね!今回、存分に鑑賞されたようで、大満足のご旅行だったことが推察されます(^^)
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クリムト巡り (むろさん)
2016-10-01 00:51:27
サンスーシ絵画館は3ユーロ払って写真撮影の許可証をもらうシステムだったので、ビデオとデジカメで撮影しました。今回行った中で撮影禁止だったのはウィーンのベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、アカデミー、ベルリン絵画館のうち特別展の部屋(スペイン絵画の黄金時代)、博物館島新博物館の王妃ネフェルティティの部屋ぐらいでした。

ウィーンミュージアムカールスプラッツで展示されていたクリムト作品は旧ブルク劇場の観客席の他、パラス・アテナ、エミーリエ・フレーゲなど4枚のみ。このうちブルク劇場の絵はガラス貼りの表面10cmぐらいまで近づいて観察できたので、当時の上流階級の人々の表情や衣装の細部まで見えて、画集では分からなかった素晴らしさを堪能できました。モネやルノワールも同時代の紳士淑女を描いていますが、また違った良さがありました。この他クリムトで良かったのは応用美術館で見たストックレ邸フリーズの下絵。ブリュッセルにある完成作が非公開なのでこの絵を見るしかないのですが、これはこれで十分良い作品です。アルベルティーナでやっていた特別展(印象派の時代展?)に予想していなかったクリムトの水の精が出ていたのもラッキーでした。クリムト関係で美術館の中に入らなかったのはレオポルド(死と生の1枚だけなので省略)と分離派館のベートーベン・フリーズ(以前池袋のセゾン美術館で複製を見たので省略)だけ。ブルク劇場の天井画もガイドツアーの時間(毎日15時)に間に合ったので、双眼鏡でしっかり見てきました。

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むろさんさん (花耀亭)
2016-09-29 23:34:49
確かに、ルーベンスの女性は豊満ですからねぇ(笑)。肌合いはサスガなんですけどね(^^;

で、おっしゃる通りサンスーシ絵画館は宮殿側から細道を通って行くので分かり難いかもですね。
それにしても、やはりショップは変わらずでしたかぁ(-_-;)。カラヴァッジョだけでなくユトレヒト派作品も見応えありなのに、撮影もダメだし、カタログも無しだし、観客のことなど考えてくれないのが残念です。

おお、今回のむろさんさんのお気に入りは初期のクリムトだったのですね!! 私はカールスプラッツは外観しか見ていなくて、中には入らなかったのですよ。クリムトやシーレの作品があるなんて知りませんでした(>_<)。もしウィーンに行く機会があったらぜひ訪ねたいと思います。むろさんさん、貴重な情報の数々、ありがとうございました!!
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ポツダムのことなど (むろさん)
2016-09-28 00:36:52
実はルーベンスはあまり得意ではないのです。昔アントワープへ行った時も例の祭壇画を見ても何も感じなかったし、三美神はプリマヴェーラのものと比べてしまうので太った裸婦としか見えない、といった具合です。今回のポツダムでもルーベンスの小品が何点かあるな、ぐらいにしか思いませんでした。記憶に残ったのはウィーンの四大陸の鰐と虎、メデューサの首ぐらいです。でも、カラヴァッジョのロザリオの聖母の売買を斡旋した画家でもあり、もう少し真剣に付き合わないといけませんね。

ポツダム・サンスーシ絵画館の売店はおっしゃる通り買うようなものは何もありませんでした。それより入口が分からなくて焦りました。もう少し分かりやすい案内表示にしてほしい。

今回良かったのはクリムトの初期作品です。特にウィーン美術史美術館の階段左側のヴィーナスとカールスプラッツで見た「旧ブルク劇場の観客席」は気に入りました。
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山科さん (花耀亭)
2016-09-25 23:14:35
ルーベンスの文献情報、ありがとうございます!! それに、フェルモ作品を知らなかったので勉強になりましたです(^^ゞ
今回の展覧会ではルーベンスとエルスハイマーを扱ったコーナーを面白く見てしまいました。ルーベンスがローマでカラヴァッジョだけでなく、友人エルスハイマーの影響も受けただろうことも推察できました。山科さんが言及されているように、模写をしながら貪欲に吸収し、模索していた時期なのでしょうね。
で、末尾になりましたが、山科さんのブログで拙ブログをご紹介いただき恐縮しております。ありがとうございました!!
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ルーベンス (山科)
2016-09-25 06:58:05
ティッセンのガイドカタログでみた、ルーベンスの「羊飼いの礼拝」が、あまりルーベンスらしくなく、エル=グレコみたいだったので、少し調べてみたんですが、文献的には、この習作の拡大版・完成作(イタリアのFERMO)は、注文書も残っていて、ルーベンスで良いようです。イタリア時代のルーベンスって、ちょっと違う感じですね。模写も多量にやってたみたいですしね。
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むろさんさん (花耀亭)
2016-09-24 23:42:16
充実のご旅行から、おかえりなさいませ~!お疲れ様でした!!
きっと、名画を浴びるようにご覧になったことと存じます♪
ウィーンのダビデが不在だったようで残念でした! で、ベルリンのアモルはやはり魅力的でしたかぁ(^^)。カラヴァッジョはバリオーネと格が違いますからねぇ(偏愛者の偏見でスミマセン(^^;;)。
ポツダムの聖トマスも素晴らしいですよね。ポツダムはルーベンスを含めカラヴァッジェスキ作品が結構充実しています。あそこのショップ品揃え、少しは良くなったでしょうか??(^^;

で、マドリッドのボス展も充実していましたよ。ベルリンとウィーンのボス作品も来ていました♪
せっかく美術館を訪ねても、お目当ての作品が出張中というケースが多々ありますよね。プラドでもデューラー自画像がリスボン出張中でしたし。(ボスと交換でしょうね、きっと)
むろさんさん、落ち着きましたら、ぜひご旅行のご感想・レポートをお願いしたいです。楽しみにしております(^_^)/
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ウィーンとベルリンのカラヴァッジョ (むろさん)
2016-09-24 01:11:14
つい数時間前にベルリンから帰ってきました。今回ヨーロッパ旅行に行くことになったきっかけの1つは、以前に花耀亭さんからのコメントで「ポツダムの『聖トマスの不信』は冬場は閉まっている」という話からです。ということで、まずはウィーンとベルリンの報告を。

結果的には予定していたカラヴァッジョ作品5点のうち、ウィーンの『ゴリアテの首を持つダビデ』だけが修復中で展示していなくて、あとの4点(ロザリオの聖母、荊冠のキリスト、勝ち誇るアモール、聖トマスの不信)は見ることができました。中で一番良かったのは、やはり予想通りアモールでした。バリオーネの聖愛と俗愛第一ヴァージョンと並んでいたので、おっしゃられた通り比較もできました。比べてみて感じたのはバリオーネの聖愛の肩から胸にかけての肌の表現が、まるで映画のペンキ絵の看板のように感じたこと。これに対しカラヴァッジョのアモールの皮膚の質感のなんと素晴らしいことか!なお、ローマ・バルベリーニのバリオーネ聖愛と俗愛第二ヴァージョンでは、もう少しうまく描けていたような気がします。

これ以外の絵ではウィーンとベルリンのボス作品(十字架を担うキリスト、パトモス島の聖ヨハネ)がプラドへ出張中で見られなかったことが残念でした。(マドリッドではご覧になりましたか?)結局今回の旅行で見たボス作品はウィーンアカデミーの最後の審判だけでした。
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momoさん (花耀亭)
2016-09-23 23:04:41
Buonasera!
ウフィッツィの《イサクの犠牲》は瑞々しさを感じる作品ですよね♪
で、momoさん、カラヴァッジョ作品を観たいと願っていれば、きっとまた観るチャンスが訪れると思いますよ(^_-)-☆
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私の知らない世界…|_-)))) (momo)
2016-09-23 01:02:24
あ~この中で実物観たのは≪イサクの犠牲≫しかないのでした…( TДT)
まだまだですね~
次回の日本でのカラヴァッジョ展に期待を込めて…( ・∇・)
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