ユトレヒト・セントラル・ミュージアムで「ユトレヒト、カラヴァッジョ、そしてユーロッパ」展を観た感想をサクッと
https://www.centraalmuseum.nl/en/exhibitions/utrecht-caravaggio-and-europe
1600年代初頭、ローマ教皇庁のお膝元であるローマは芸術の中心地であり、カラヴァッジョもだが、イタリア国内外から多くの芸術家が集っていた。ローマの画家の5人に1人は外国人だったようだ。オランダのユトレヒトからローマに赴き、当時のローマ画壇に旋風を起こしたカラヴァッジョの革新的画法に触れ、すっかりと魅せられた3人の画家がいる。(公式サイトの記述順=ABC順)
ディルク・ファン・バビューレン(Dirck van Baburen, 1592/3-1624年)
ヘンドリック・テル・ブリュッヘン(Hendrick ter Brugghen, 1588-1629年)
ヘラルト(ヘリット)・ファン・ホントホルスト(Gerard(Gerrit )van Honthorst , 1592-1656年)
彼らユトレヒト派カラヴァッジェスキとともに、当時のローマで同じようにカラヴァッジョの影響を受けた画家たちの同主題作品を並べることにより、ユトレヒトの画家たちの共通性と独自性を際立たせようとする展覧会だった。
例えば、下↓の写真のように、カラヴァッジョ《聖ヒエロニムス》を中心に各画家たちの「聖人」を描いた作品が並び、カラヴァッジョからの影響の痕跡をどのように留めているかが私的にも比較検証できる面白さに満ちていた。
ちなみに、左正面に見えるのはローマから来ていたホントホルストの祭壇画《洗礼者聖ヨハネの斬首》である。
ヘリット・ファン・ホントホルスト《洗礼者聖ヨハネの斬首》(1617-18年)サンタ・マリア・デッラ・スカラ教会(ローマ)
照明の関係で撮影が難しかったのだが、向かって左上の天使(見え難いけど)はカラヴァッジョの影響大だと私的には思うのだよね。カラヴァッジョは光源を描かないのだが、ホントホルストは光源(炎)を描くところに彼の独自性がある。
ということで、この展覧会のサクッと感想は多分、間を置きながら不定期に続く予定だ(あくまでも予定)。ついでに、↓は今回の展覧会の図録である。
年寄りは重いものが大の苦手なのだから、図録はハードカヴァーではなくソフトカヴァー(ペーパーバックで結構)にして欲しいものだ。>各美術館さま
影響関係など考えるとき、ある時点での各画家の年齢という問題を念頭におくといいと思います。勿論、年齢推定が間違っていることもあるでしょうし、不明ということもあります。が、17世紀以降だとかなり確からしいものがでてます、 テルブリュッヘンは他の2人より10年ぐらい年長ですがカラバッジョの息子世代。リュベンスはカラヴァッジョよりは若いが3人より年長、 ラトゥールは3人よりも数年以上若い、
先輩画家が流行を追って若い天才の技法を盗むということもあったかもしれませんが、やはりその逆のほうが多かったでしょうからね。
URLのサラチェーニの下宿人Pensionante del Saracenは、ラトゥールとカラヴァッジョ派のリンクかもしれないとか思ってます。
私も画家の生没年から年齢や時代背景を確認するようにしています。おっしゃる通り影響関係を考える上で大切ですよね。
で、オークション解説は詳細で勉強になりますね。貴重な情報をありがとうございました!!
私の持っているAlessandro Zuccari監修『I Caravaggeschi』(2010年)でも、カルロ・サラチェーニ(Carlo Saraceni)とペンショナンテ・デル・サラチェーニ(il pensionante del Saraceni)とは分離記述され、ペンショナンテの方が記述量が多いです。イタリア語初心者なので深く読めないので、プラド美術館のサイトをチェックしましたら…
https://www.museodelprado.es/aprende/enciclopedia/voz/pensionante-de-saraceni/80d24f1e-dc52-47f3-81fa-62c8091d441a
・時折、未知の芸術家はナンシー出身のフランス人Jean Leclercとして識別され、サラチェーニの助手とされる。
・フランドルまたはオランダからの芸術家にもっとポイントを絞る他の可能性も考慮されている。
ということで、ナンシー出身のLeclercだとすれば、ラ・トゥールに結びつきますね(^^)
数年前に話題となった南仏トゥールーズの屋根裏で発見されたカラヴァッジョ?ルイ・フィンソン?の「ホロフェルネスの首を斬るユディト」ですが、今年6月に予想価格190億円でオークションにかけられるそうです。
https://www.cnn.co.jp/style/arts/35133542.html
https://www.theartnewspaper.com/news/from-attic-to-auction-the-intriguing-story-of-the-lost-caravaggio-so-far
なお、この作品については2016.4.13の下記貴ブログで話題となっていますね(私もコメント、質問しています)。
https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/00ce61b87a4018f15c79cebc85878e8c#comment-list
と書きましたが、記憶違いだったようです。5年前後ぐらいですから兄貴分ですね。ごめんなさい。
Art and Artist(事典)をひっくりかえしていたら、カラヴァッジョの伝記で話題にでるバリオーネはカラバッジョと同年、カラバッジョと暴れ回っていたオラッチオ・ジェンテレスキーは8も上? ホントかなあ。ホントならこの人、チンピラの親分だったんじゃないかな。?
石鍋真澄著カラヴァッジョ伝記集(2016)のP193によれば「バリオーネはカラヴァッジョより5歳年長」とあります。
ブレラでフィンソン作品と並べて展示されたことがあったのですねぇ(^^;;
実物を観ないと何とも言えないところですが、ルーヴルが購入を見送っていることもあり...う~ん、難しいですよねぇ。
まぁ、ミーナ・グレゴーリが疑問を呈したのはイタリア人的立場とも言えますが、やはり、真作だという確信は持てなかったのだとも思います。
とにかく、オークションによりプライヴェート・コレクション入り(死蔵)は困るところで、どこかお金持ちの美術館に購入していただきたいですね(;'∀')
ジェンティレスキはカラヴァッジョに天使の羽(小道具)を貸したり、気難しいカラヴァッジョとウマが合ったのは、同じチンピラ気質だったからなのでしょうかね(;'∀')
2016年「カラヴァッジョ展」図録では、バリオーネ(1566年頃-1643年)になっていました。ちなみに、カラヴァッジョ(1571年-1610年)。
トゥールーズ新発見の絵については、ロンドンの老舗画商コルナギまで絵をもっていって、結局ロンドンやニューヨークでのオークションでなくトゥールーズでのオークションになったというのも、どうもそれほど評価が高くないということのように感じます。関係者の利害の問題やBREXITの関係かもしれませんが、なんか尻すぼみになりそうな気もします。 ルーブルが先買い権を放棄したということも示唆的です。
ルーヴルが見送ったので、多分...とは思いましたが、はやり...のようですね(^^;;