次に見たのは旧ユーゴスラビアのサラエヴォ出身の映画監督エミール・クストリッツァの大作
「アンダーグラウンド」です。
昨年録画していた映画をテレビの録画容量が足りなくなってきたので、時間のある時に見て消さないとと思って見たら
ものすごい映画だったので驚きました。
単なる寓意的なストーリーかと思っていたら、ファンタジーにしなければ、コメディにしなければ作れないような
ユーゴスラビアの半世紀の歴史です。記憶のどこかに引っ掛かっていた映画です。
1995年製作/171分/フランス・ドイツ・ハンガリー合作
原題:Underground
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
日本初公開:1996年4月
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた、エミール・クストリッツァ監督のブラック・ファンタジー。ナチスによる占領を機に
半世紀にも渡って続いた、旧ユーゴスラビア動乱の悲劇の物語を群像劇として描く。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ問題など、旧ユーゴスラヴィアの混乱の戦後50年の歴史を綴る映像絵巻。監督は「パパは出張中!」「ジプシーのとき」
「アリゾナ・ドリーム」のエミール・クストリッツァ。エグゼクティヴ・プロデューサーはピエール・スペングラー。旧ユーゴ出身の劇作家デュシャン
コバチェヴィチの戯曲を基に、彼とクストリッツァが脚本を執筆。撮影のヴィルコ・フィラチ、音楽のゴラン・ブレゴヴィチ、「デリカテッセン」を
手がけた美術のミリェン・クチャコヴィチ“クレカ”は、「ジプシーのとき」以来の常連スタッフ。中でも音楽は、民族音楽をアレンジしたサウンドが印象的で
また第二次大戦中のドイツで圧倒的な人気を集め、連合軍側でもヒットした『リリー・マルレーン』が挿入曲として使われて実に皮肉な効果を出している。
出演は、ピーター・ブルックの劇団などで活躍する国際的な名優で、「マハーバーラタ」映画版(NHK教育テレビで放映、LD発売)にも出演した「パパは
出張中!」のミキ・マノイロヴィチをはじめ、旧ユーゴ映画・演劇を代表する俳優たち。95年カンヌ国際映画祭で賛否両論を集め、やはり旧ユーゴ問題を
背景にしたテオ・アンゲロプロスの「ユリシーズの瞳」を抑えてグランプリ(パルム・ドール)を受賞。96年度キネマ旬報外国映画ベストテン第3位。
監督 エミール・クストリッツァ
脚本 デュシャン・コバチェヴィッチ
撮影 ヴィルコ・フィラチ
音楽 ゴラン・ブレゴヴィチ
美術 ミリェン・クチャコヴィチ・クレカ
キャスト
プレドラグ・"ミキ"・マノイロヴィッチ
ラザル・リストフスキー
ミリャナ・ヤコヴィッチ
スラヴコ・スティマチ
エルンスト・ストッツナー
テオ・アンゲロプロス監督のギリシャ映画『旅芸人の記録』(希: O Θίασος、翻字: O Thiassos)が思い出されます。
映画『アンダーグラウンド』予告編
"Underground" Music - Intro: Kalasnjikov
猥雑でグロテスクでエネルギッシュな映画に巻き込まれます。最初この映画どうやって終わるのだろうと
果てしない感じがしました。高田純次に似たコミカルさを出すミキ・マノイロヴィッチ。他のキャストも最高でした。
途中から話が怪しくなり、地下で生活する人たちの時間まで支配する武器商人。途中実写のフィルムも流れ、ナチスドイツの
支配からチトー大統領の時代、そして内戦へと目まぐるしく変わる時代を知らされない地下生活者。外に出たらユーゴスラビア
という国は無くなっていた。セルビアとクロアチアの内戦は隣人を殺しあった記憶のまだ残る内戦です。リリーマルレーンの曲が流れて、
何かどこかで聞いた曲だと懐かしく思えました。ナチより連合軍(NATO)の空爆の方がすごかったというのが皮肉的です。
なんだか最初面白く見ていたのですが、この映画の深さにどんどん引き込まれました。
ラストシーンの死後の世界か楽そうな結婚祝いの席での
ナレーションが刺さります
昔あるところに国があった。
この物語に終わりはない・・
映画が次世代に残さなくてはいけないこと・・そんな監督の思いが伝わってくる映画を超える映画でした。
「許そう、でも忘れないぞ」
離れていく土地の形がなんと旧ユーゴスラビアの形をしているそうです。