徐々に話題になってきた、録画再生率。
産経新聞の取材を受けて、コメントしました。
録画再生率、来年スタート
上位はドラマ、CM約5割視聴
集計データ一部初公開
調査会社のビデオリサーチ(東京都千代田区)は来年1月、テレビ番組の録画再生率(タイムシフト視聴率)について、テレビ局などにデータ提供を始める。先月には初めて一部データを公表し、ドラマが他の分野の番組より高い再生率を記録したことが判明した。現行のリアルタイム視聴率では把握しきれなかった視聴実態を示す新指標として注目を集めている。(三品貴志)
ビデオリサーチは平成19年から録画視聴調査の研究を始め、昨年10月から関東地区300世帯(このうち録画視聴可能世帯は約78%)で試験測定を実施。公表されたのは今年3月31日~6月29日の調査結果で、録画番組が放送後7日以内に再生された割合をランキング形式で集計した。
その結果、ドラマが上位をほぼ独占し、公表された全53番組中24番組と最も多かった。20位以下を中心にアニメやバラエティーも各10番組近くがランクイン。スポーツ番組は48位のサッカーワールドカップ「スペイン×オランダ戦」(2.1%)だけだった。
◆「コア層」の把握も
録画再生率とリアルタイム視聴率(対象600世帯)は調査の母集団が異なるため、数値を単純に足すことはできない。ただ、民放幹部は「各局とも連続ドラマの視聴率は低迷傾向にあるが、『ドラマは後で見る』という視聴者の実態が目に見えるようになった」と歓迎する。
2つのランキングが必ずしも連動していないのも特徴だ。例えば、リアルタイムでの平均視聴率が16.0%だった「花咲舞が黙ってない」(録画再生率7位)よりも、同11.0%の「MOZU」(録画2位)や11.1%の「アリスの棘(とげ)」(録画4位)の方が上位に入っている。
上智大の碓井広義教授(メディア論)は「ランキング上位には、必ずしも万人向けでない作り込まれた作品が多い。そういう作品は集中して見たいという視聴者のニーズが反映されたのではないか。これまでは数字に表れなかった『コアな視聴者層』の動きを把握できるようになったのは大きい」と指摘する。
一方、アニメでは「ワンピース」(16位)、「ドラえもん」(26位)などの番組が複数ランク入り。ビデオリサーチによると、作品に関係する商品CMが多いアニメの場合、録画再生中のCM視聴率も高い傾向にあるといい、同社担当者は「録画した番組を週末などに親子で一緒に見る習慣が根付いている」と推測する。
◆パンドラの箱にも
リサーチ評論家の藤平芳紀氏は、録画再生率について「米国では2005年から導入されており、日本でも多様化する視聴形態を把握する上では一歩前進といえる。だが、録画再生はCMを飛ばすこともできるため、局とスポンサーとのバランスを揺るがしかねない“パンドラの箱”を開けたことにもなる」と指摘する。
ビデオリサーチによると、1~3月の試験測定では、録画再生中も約5割のCMが飛ばされずに視聴されていたという。民放幹部は「録画再生中のCM視聴は2、3割程度という米国調査も聞いていたので、想像より高い」と驚きつつ、「もっと継続的なデータを見たい」として、新指標をセールスに活用することには慎重な姿勢を示している。
◇ツイッター指標は10月
ビデオリサーチは多様化する視聴動向を測定する研究を重ねており、今年10月からはテレビ番組に対するツイッター反応を集計した「ツイッターTV指標」を導入する。当初は6月を予定していたが、システム開発が遅れたという。
ツイッターTV指標は、テレビ番組に関係するキーワードを抽出し、投稿数や投稿者数を集計。米ツイッター社と連携し、つぶやきの拡散量を示すインプレッション(露出)数も集計するのが特徴で、ソーシャルメディアでの番組に対する反応を測定する数値として注目されている。
また、BSデジタル民放各社は来年4月から、ビデオリサーチに委託し、全国1千世帯を対象に地上波テレビと同じ機械式の視聴率調査を始める予定だ。ビデオリサーチは現在、BS民放6社からの委託を受け、毎月1週間、視聴番組などを記録するアンケートを実施している。BS視聴可能世帯の広がりやスポンサーからの要望を受け、より厳密な視聴率調査を行うことになった。
(産経新聞 2014.8.12)