碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「週刊文春」と「週刊新潮」の広告掲載を拒否した「朝日新聞」

2014年08月29日 | メディアでのコメント・論評



朝日新聞が掲載を拒否した両誌の広告


「朝日新聞」が、「週刊文春」と「週刊新潮」の広告掲載を拒否。

この件で取材を受けました。


拒否の理由は、明らかにされていません。

広告の内容(朝日に関する見出し部分)が「違っている」と判断したからでしょうか。「嘘の情報は紙面に載せられない」と考えたのでしょうか。

それとも、朝日にとって「不都合」「不利益」だと思ったのでしょうか。

もしも、両誌に書かれている内容が「間違っている!」と言うなら、きちんと反論すればいいのです。記事のどこが、どんなふうに誤りなのかを。

市民(読者)は「文春」や「新潮」を読み、そして「朝日」の反論を読んで、自身で内容の当否を判断すべきだと思います。

広告拒否は、そうした機会を読者から奪うことにつながります。

また、この広告には「慰安婦問題に関する追及キャンペーン記事」だけでなく、当然、ほかの記事に関する情報も含まれていました。

朝日の読者は、その情報を得ることも出来なかったことになります。

それと、言うまでもありませんが、広告は「情報」であるだけでなく、「表現」であり、「文化」です。

そのことについて、朝日はどう考えているのか。

このあたりも、かなり気になります。


2014年夏 ひと味違う「注目CM」はこれだ!

2014年08月29日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

テレビ番組もそうですが、CMは時代を映す鏡です。その時どきの世相、流行、社会現象、そして人間模様までをどこかに反映させています。

「うーん、あるある、そういうこと」という共感や、「もしかしたら、こういうの、待ってたかも」という潜在的な期待感に応えるCMは、やはり目を引きます。

この夏、流されているCMの中から、注目作を選んでみました。


ジョージア「海の家従業員」編

山田孝之さんはカメレオン俳優だ。ある時は脱力系ヒーロー・勇者ヨシヒコ、またある時はコワモテの闇金・ウシジマくんと化す。そんな山田さんが海の家で焼きそばを売っている。なんとも地道な商売だ。

しかし、誰にも魔がさす時はある。うっかりミスってやつだ。買いに来たのは笑顔と水着姿が魅力的な佐野ひなこちゃん。ふいに身をかがめ、山田さんを見上げて聞く。「暑くないですか?」

その瞬間、「うむ、いい娘だ」と山田さんは思ってしまった。冷えた缶コーヒーを「オマケであげるよ」と鷹揚なところを見せてしまう。しかも目は胸元に釘づけだ。

ところが突然、カレシが現れる。これがまた絵に描いたようなチャラ男だ。こいつにお礼を言われた山田さん、「お前にじゃねえよ!」と声には出さず憤る。その怒りと自嘲を押し殺した笑顔が絶品だ。

この夏も、”うっかり男”と”ちゃっかり娘”の対決が各地で展開されているだろう。でも、オトナの男は勝ってはいけない。山田さんはそう教えている。




DODA「チャップリン」編 ・「キング牧師」編

その演説は映画「独裁者」の終盤に置かれている。約3分半のワンカットだ。

ファシズムの国の独裁者と間違われた床屋(チャップリン)が、兵士たちに向かって呼びかける。「君たちは機械ではない。家畜でもない。人間なんだ!」と。

CMには現在の仕事と将来に迷いを抱えた青年、綾野剛さんが登場する。鏡に映る自分を見つめた時、チャップリンの声が聞こえてくるのだ。

「君たちには力がある。人生を自由で美しく、素晴らしい冒険に変える力が!」。チャップリンにそこまで言われたら、綾野さんじゃなくても転職を決意してしまいそうだ。

「キング牧師」編も、「友よ。今こそ、夢を見よう」で始まるメッセージが強烈なインパクトで迫ってくる。姿こそ見えないが、肉声の背後にある彼らの思想と行動、つまり生き方を想起するからだ。

閉塞の時代こそ、行動せずに悔やむより、一歩踏み出す勇気を。「戦え!自由のために」の声は転職以外の岐路に立つ者の背中も押してくれる。