碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日刊ゲンダイで、爆笑問題「政治ネタ却下」騒動について解説

2015年01月10日 | メディアでのコメント・論評



爆笑問題 政治ネタNG騒動
NHKの弱腰 及び腰が招く
「表現の自由」の危機

圧力ないのに“忖度”して自主規制の愚

これも「公平中立な報道」の一環なのだろうか。7日未明放送のラジオ「爆笑問題カーボーイ」でNHKからの“圧力”を暴露した「爆笑問題」。3日に生放送された「初笑い東西寄席2015」の制作サイドが政治家ネタにNGを出したと明かし、太田光(49)は「プロデューサーにもよるけど“自粛”なんですよ。政治的圧力は一切ない」、田中裕二(49)は「それが色濃くなってるのは肌で感じたね」と語った。

 NHKは「放送にあたって娯楽番組の打ち合わせを出演者とする際、その中身について普段から明らかにすることはありません」(広報局)というが、この一件に「民放もNHKの姿勢に合わせていくことになれば、テレビ全体に猜疑の目が向くのも時間の問題かもしれません」と話すのは上智大の碓井広義教授(メディア論)だ。

「以前、自民党が民放各局に公平中立な報道に配慮するよう要請したのも正直、圧力だと思います。籾井(勝人)さんが会長になって以降、目に見えない自主規制をたくさんしているんだろうなと感じました。ネタうんぬんに限らず、扱うニュースの順番、長さ、論調に至るまで気にしているのではないでしょうか。

しかも今回、そういった空気がエンターテインメントにまで浸透しつつあるということがハッキリした。これは嫌な世の中になってきているなと。『爆笑問題』はこれまで何度も生放送をこなしてきたプロですから、どこまでならOKか分かっているはず。それなのに過剰に気にして表現の自由を奪うのはいかがなものか。

今の政治家は特に器が小さいところもあるから過敏になるのかもしれませんが、今回NGの前例をつくってしまったことで、今後の影響が気になります」


一方、民放はというと、元日の「爆笑ヒットパレード」(フジテレビ系)では爆笑問題の政治ネタはなかった。しかし、昨年12月26日深夜放送の「検索ちゃん ネタ祭り」(テレビ朝日系、※事前収録)では、太田が「小渕優子なんて当選した瞬間、“小渕ワイン”で乾杯。ルネッサ~ンス! その後、だるまの目にドリルで穴開けて」とボケ、「うちわ問題」で蓮舫(47)が松島みどり(58)を追及する場面を顔マネを交えて再現。これぞ爆笑問題の本領だろう。

安倍政権に対して弱腰及び腰をバラされてしまったNHK。4日から始まった大河ドラマ「花燃ゆ」も、安倍首相のご当地・山口を舞台にした「ゴマすり大河」といわれているが、政治介入もないのに、勝手に忖度して自主規制とは愚の骨頂だ。

(日刊ゲンダイ 2014.01.08)



・・・・以下、続報です。

NHKの籾井会長が、この件に関して”反論”を行ったそうです。

政治ネタ没問題
NHK籾井会長の“反論”で強まる自主規制

お笑いコンビ「爆笑問題」の政治家ネタをボツにし、批判されているNHK。8日、NHKの籾井勝人会長(71)が批判に対して“反論”した。

定例会見でこの問題を問われた籾井会長。「(自分は)全く関与していない」と話す一方で、一般論として「個人名を挙げてネタにするのは品がない。しゃべる人も品性や常識があってしかるべきだ」と言い放ったのである。

現在、2000人近いNHKのOBから「辞任要求」を突き付けられ、「失格」の烙印を押されている会長とはいえ、仮にも表現の自由を重んじる報道機関のトップなら「ボツにするべきではなかった」と発言するべきなのに、ボツに「賛意」を表したのだから驚くばかりだ。NHKの「言論封殺」を会長自身が認めたようなものだ。しかも「個人名うんぬん……」とは風刺そのものを全く理解していないことになる。

そもそも「政府が右と言っているものを、我々が左と言うわけにはいかない」などと公言する籾井会長は「表現の自由」を“余計なもの”と考えているのではないか。

元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏がこう言う。

「会長が公の場でこういう発言をすると、現場はいま以上に萎縮するでしょう。自己規制の連鎖が始まりますよ」

皆様のNHKが消える日がどんどん迫っている。

(日刊ゲンダイ 2014.01.09)


・・・・権力を風刺する行為に対して、「個人名を挙げてネタにするのは品がない」と。

うーん、このままで本当に大丈夫なんだろうか(笑)。