碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「ハヤブサ消防団」は、あくまでも「池井戸ミステリー」

2023年07月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」テレビ朝日系

あくまでも「池井戸ミステリー」

 

池井戸潤の小説が原作のドラマと聞けば、やはり気になる。木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)のことだ。

しかも物語の舞台は銀行でも町工場でもない。山奥の小さな集落である。それでいて、あくまでも「池井戸ミステリー」なのだ。興味津々、13日の初回を見てみた。

主人公はミステリー作家の三馬太郎(中村倫也)。かつて「明智小五郎賞」受賞で注目されたが、その後はあまり売れていない。

ふとしたことから、山間部のハヤブサ地区に移住することを決意。そこには母と離婚して長年疎遠だった亡父が暮らした、古い民家があった。

ストレスも減って、執筆もはかどる太郎。最大の変化は地元の消防団に参加したことだ。工務店勤務の勘介(満島慎之介)をはじめ、団員たちとの交流も始まる。

実は、この地区では連続放火と思われる火事が頻発していた。のどかな山村での陰湿な事件。放火犯かと疑われていた男性の住民が遺体で見つかり・・・。

ゆったりした風景の中、ミステリアスな事態がいいテンポで進んでいく。また集落全体をフルに使ったロケーション映像がドラマにリアル感を与えている。

そして、クセの強い消防団の面々。生瀬勝久、梶原善、橋本じゅん、岡部たかしなどドラマ好きには堪らないキャスティングだ。

望洋としていながら観察眼が光る主人公はもちろん、彼らからも目が離せない。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.07.18)