碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2023】円堂都司昭『ミステリースクール』ほか

2023年12月16日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

円堂都司昭ほか:著、講談社:編『ミステリースクール』

講談社 3850円

古今東西の名作ミステリーを、テーマ別に解説する連続講座だ。たとえば吉野仁が選ぶ「冒険小説」は、ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』や志水辰夫『飢えて狼』など15冊。また「恋愛」の講師は吉田伸子だ。レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』、東野圭吾『容疑者Xの献身』などを紹介する。他に「本格」「翻訳」「警察小説」といった講座が並ぶ。全作品を読みたくなるので要注意だ。(2023.10.05発行)

 

宮城谷昌光『諸葛亮 上・下』

日本経済新聞出版 各1980円

漫画やゲームなどで若い世代にも人気の天才軍師・諸葛亮、字(あざな)は孔明。本書は8歳の少年時代に始まり、五丈原において54歳で病没するまでの軌跡を描く大河小説だ。「憧れをもつことだ。それは志とひとしくなる」という父の教えを守り、思想と行動の美しさを貫いた生涯。「天下三分の計」など多くの逸話が登場するが、ここにいるのは伝説の超人ではなく、生身の人間としての諸葛亮だ。(2023.10.18発行)

 

山田太一

『山田太一未発表シナリオ集~ふぞろいの林檎たちⅤ/男たちの旅路〈オートバイ〉』

国書刊行会 2970円

ドラマ『ふぞろいの林檎たち』が放送されたのは1983年。97年のパート4で幕を閉じた。本書には制作されなかった幻の続編のシナリオが収録されている。かつて大学生だった良雄(中井貴一)や健一(時任三郎)、そして実(柳沢慎吾)も40代になった。「人生ここ止まりじゃないのか」という焦りも感じながら、林檎たちは動き出す。さらに、本書では『男たちの旅路』の未発表作品にも逢える。(2023.10.20発行)

【週刊新潮 2023.11.30号】