碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】 阿川佐和子『話す力』

2024年01月27日 | 書評した本たち

 

 

SNS時代の会話の極意とは?

 

阿川佐和子

『話す力 心をつかむ44のヒント』

文春新書 990円

 

本来なら10年前に出ていた本かもしれない。阿川佐和子『話す力 心をつかむ44のヒント』である。

ベストセラーとなった『聞く力』の出版は2012年1月。「聞く」が売れたら、当然次は「話す」をテーマに書くものと思われた。

しかし、著者はそうしなかった。「聞く」と「話す」は表裏一体であり、連続すれば似た内容になった可能性がある。10年にわたる知見やエピソードの蓄積と熟成を経て、ようやく本書を登場させた。

思えば、旧ツイッターのXなどSNSのインフラ化で、現在ほど多くの人が積極的に発言している時代はない。同時に自分が発した言葉で窮地に陥る事態も頻発している。本書が示すヒントは今こそ有効だ。

たとえば、「問題は何を話したいか」だと著者は言う。話したいこと、そして話したい情熱の有無が出発点だ。また「相手の話に共感し反応する」、「相手との距離感をつかむ」、その上で言葉を「使い分ける」ことも、SNS時代の話す力として必須だ。

さらに本書では、著者が出会った多彩な人たちの言葉も紹介されていく。中でも「人の話は九十パーセントが自慢と愚痴である」という東海林さだおの名言が光る。

確かに自慢も愚痴も話す側は気持ちいいかもしれないが、聞く側はつらい。これを意識するだけでも、自分の話す内容や話し方が変わってきそうだ。

昔から「文は人なり」といわれるが、話すこともまた人格の表れだと知る。

【週刊新潮 2024.01.25号】

 


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