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東京新聞に連載中のコラム「言いたい放談」。
今回は、tvkのドキュメンタリードラマ『希望の翼~あの時、ぼくらは13歳だった』について書きました。
時間と国境を越えた友情
二日の夜、ドキュメンタリードラマ『希望の翼~あの時、ぼくらは13歳だった』を見た。tvk(テレビ神奈川)と韓国KBSの共同制作によるものだ。
一九四五年、日本の植民地支配下にあった朝鮮半島で二人の中学生が出会う。実在の日本人、寒河江正(さかえ・ただし)と韓国人の羅逸星(ナ・イルソン)だ。当時、校内で朝鮮語は禁じられていたが、羅はつい口にしてしまう。非難する日本人の同級生たち。その時、寒河江が叫ぶ。「朝鮮の人たちが朝鮮語を話して何が悪い!」
こうして始まった友情も日本の敗戦で途切れてしまう。再会できたのは四十一年後のことだ。寒河江は音楽プロデューサーに、羅は天文学者になっていた。一昨年、二人は対談と記録で構成された共著『あの時、僕らは13歳だった~誰も知らない日韓友好史』を上梓したが、それがこのドラマの原作である。
主演、国広富之。総合監督は『岸辺のアルバム』の大山勝美だ。描かれる戦時中のエピソードはもちろんだが、韓国で日本文化が開放される以前から寒河江たちが続けてきた、音楽による民間交流の取り組みも見どころだ。そこには互いの歴史と文化に対する敬意がある。
二十三日の午後二時からBS-TBSでも放送される。Tvkは二十七日午後七時から再放送。若者を含む幅広い年代の人たちに見てもらえたらと思う。
(東京新聞 2013.03.06)