碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】 『対談集 ららら星のかなた』ほか

2024年10月19日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

谷川俊太郎、伊藤比呂美

『対談集 ららら星のかなた』

中央公論新社 1980円

詩人・伊藤比呂美にとって谷川俊太郎は「詩人の神様」だ。神様はいかにして現在に至り、何を思って生きているのか。旺盛なる好奇心で話を引き出していく。少年時代から親しんだ狂言。生身の志賀直哉や三島由紀夫。あらゆる原稿の注文を受けていた頃。三度の結婚と離婚。自分には物語の発想がなく、「いま、ここ(Here and Now)」の人だと明かす神様は、老いや死も率直に語っている。

 

有馬 学

『「戦後」を読み直す~同時代史の試み』

中公選書 2090円

歴史学者の著者が、リアルタイムで読んできた書籍を再読することで「戦後」を再考する試みだ。サラリーマンが社会の主役となる時代をとらえた、山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』。テレビの新たな表現と方法意識が衝撃的だった、萩元晴彦ほか『お前はただの現在にすぎない』。戦後思想という「世界を写す鏡」の歪みを正す里程標となった、関川夏央『ソウルの練習問題』などが選ばれている。

 

芦原 伸『辺境、風の旅人』

産業編集センター 1650円

著者は雑誌『旅と鉄道』などの元編集長で旅行作家だ。太古から変わらない辺境の風景は「魂に治癒力を与えてくれる」という。極北のイヌイットの村で一晩中オーロラを眺める。中央アジアのトルファン郊外でウイグル家庭料理を味わう。オーストラリアのタスマニアでは湖での鱒釣りに挑む。約30年間の旅の記録だが、どこへ行っても変わらないのは、その地とそこに暮らす人たちに対する敬意だ。

(週刊新潮 2024.10.17号)


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