「週刊新潮」に寄稿した書評です。
加藤宗哉
『遠藤周作 おどけと哀しみ~わが師・狐狸庵先生との三十年』
河出書房新社 2310円
著者は慶應義塾大学在学中に遠藤周作編集の「三田文学」に関わり、以後生涯の師弟関係となった。若き日の著者が書いた小説について、〈暑さ〉を描きたいのなら、太陽や光ではなく「カゲを書くのや」と言っていた遠藤。ケタはずれの読書家・勉強家でありながら、そのイタズラ心は晩年まで衰えなかった。「融通がきかぬほどに真面目な人だった」師が、弟子の前だけで見せた素顔がここにある。
箕輪顕量:編著、東京大学仏教青年会:著
『日本を変えたすごい僧侶図鑑』
産業編集センター 1980円
仏教には学問と修行の2つの道がある。その大きな流れの中で活躍した50人の僧侶を紹介するのが本書だ。総合的な仏教体系を目指した最澄。日本各地に伝説を残す空海。浄土宗を開いた法然。こうした〝有名人〟はもちろん、修験道の祖である役小角(えんのおづぬ)や室町期の禅宗興隆を招いた高僧・夢窓疎石(むそうそせき)など、知る人ぞ知る傑僧たちの人生と教えに接することができる。
(週刊新潮 2024.10.24号)