「週刊新潮」に寄稿した書評です。
中川右介
『第二次マンガ革命史~劇画と青年コミックの誕生』
双葉社 2420円
戦後、日本の漫画を激変させたのが手塚治虫の「ストーリーマンガ」だ。著者はそれを「第一次マンガ革命」と呼ぶ。そして1960年代に「劇画」が牽引したのが第二の革命だ。本書は、貸本マンガにおける劇画の登場から青年コミック誌の創刊までを辿る文化史である。同時に、辰巳ヨシヒロ、佐藤まさあき、さいとう・たかを、白土三平など最前線で活躍したマンガ家たちの熱い群像劇でもある。
町田てつ
『ビジュアル 恋猫パラダイス~浮世絵から映画、切手まで猫三昧』
天夢人 2200円
今や空前の猫ブーム。家族やパートナーとしての存在を「恋猫」と称して愛でるビジュアル本だ。国芳など歌川派の浮世絵師たちが題材にした猫には、美人との関係を想像させる妙がある。小さな切手の中に再現された、菱田春草の名作「黒き猫図」。映画『ティファニーで朝食を』や『ハリーとトント』などの名優猫。さらに絵師・川崎巨泉が集めた猫絵や猫人形など、猫好き必見の名コレクション。
渡辺将人『アメリカ映画の文化副読本』
日本経済新聞出版 1980円
本書はいわゆる〈映画案内本〉ではない。政治学が専門の慶大准教授が、映画やドラマをとば口にして「アメリカ社会」を読み解いていく。映画『ソーシャル・ネットワーク』で描かれた、クラブという文化が反映する「社交と恋愛」。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に見られるような、スクールカーストが象徴する「教育と学歴」などだ。日本との差異も含め、リアルなアメリカ像が浮上する。
(週刊新潮 2024.03.28号)