碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「日本一うさんくさい男」は、俳優・山田孝之の称号

2016年11月09日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、フリマアプリ「フリル」のCM、手数料篇を取り上げました。

フリマアプリ「フリル」手数料篇
理不尽さ際立つ
山田さんの怪しさ

相変わらず山田孝之さんはカメレオン俳優だ。

コワモテ闇金「ウシジマくん」にも、脱力系ヒーロー「勇者ヨシヒコ」にも見事に成りきってしまう。そして、フリマアプリ「フリル」のCM「手数料篇」が、これまた怪しくておかしい。

フリマで買い物をした女性が5000円を支払おうとしている。いきなり現れたチンピラ風の山田さん。すっとお金を取り上げ4500円を売り主に手渡す。差額の500円は手数料だと言うのだ。

「取られているのは君だけじゃない。俺も取られているからね」と、山田さんが説明すればするほど理不尽さが際立つ。

怪訝(けげん)な表情の売り主と同様、視聴者だって納得がいかない。追い打ちをかけるように「販売手数料ってバカバカしい」とナレーションが入り、「手数料ゼロ」のアピールが俄然効いてくる。  

「日本一の無責任男」といえば往年の植木等さんだが、いま、「日本一うさんくさい男」は山田さんの称号だ。

(日経MJ 2016.11.07)

「恋愛ドラマ」が消える!?

2016年11月08日 | メディアでのコメント・論評



週刊現代で、「恋愛ドラマ」についてコメントしました。

フジテレビだけ置いてきぼり?
テレビドラマから「恋愛」が消える日 
なぜミステリー、職業モノばかりなのか

トレンディドラマの時代からおよそ20年。いまや恋愛至上主義のドラマは一部を除いてほとんどない。厳しい現実と向きあっている視聴者は、浮き世離れした男女の恋物語など興味がないのだ。
ジャニーズもいらない

「今年の夏はリオ五輪があったため、各局とも秋のドラマに大物俳優を起用して勝負をかけていました。その結果はテレビ朝日の完勝に終わりそうですね。マーケティング担当者のシミュレーションでも、これで今年のゴールデンタイムの年間視聴率1位はテレ朝でほぼ確定しました。勝因は『恋愛ナシ』と『安定感』でしょう」(大手広告代理店社員)

テレ朝は、米倉涼子がフリーランスの天才外科医を演じる『ドクターX ~外科医・大門未知子~』の第4シリーズが、初回視聴率20・4%を記録し、大台を超えた。

「『ドクターX』は、極端なキャラクターがたくさん登場し、主人公には『私、失敗しないので』という決め台詞があり、最後には難手術を成功させて患者を救って結果を出す。毎回そんな分かりやすいストーリーだから、F2層(35歳~49歳の女性)やF3層(50歳以上の女性)が安心して見られるんです。

もし主人公が恋愛をしたら、女性視聴者は賛否に分かれて、ドラマは途端にダメになるでしょう。色恋沙汰はナシと大胆に割り切ったからこその人気なんですよ」(コラムニスト・ペリー荻野氏)

同作の主要キャストは、米倉のほか、西田敏行、泉ピン子、岸部一徳、吉田鋼太郎、生瀬勝久、草刈民代と実力派揃い。恋愛の要素はまったくなくても、見応えは十分だ。

優等生の女優が多いなかで、私生活でも奔放なイメージがある米倉に、権力に媚びずに言いたいことをズバズバ言う女医役はハマリ役です。

作り込まれた明快なストーリーに、役柄に合った俳優を起用していけばドラマは当たるんですよ。どんな設定のドラマでも必ず男女の色恋を入れなければヒットしないというセオリーはもう古いんです」(テレ朝関係者)

テレ朝の早河洋会長が、9月の定例会見でSMAP解散に関連して、記者から「事務所の力は強いか? と質問され、「プロダクションはいっぱいあるわけで、その中の優れた俳優をそろえて編成していく」「事務所の影響力で(テレビ局が)右往左往しているように見られるのは、ちょっと残念です」と答えたことが、テレビ業界で話題になった。

「ジャニーズのタレントに頼らなくてもヒットドラマは作れると言っているわけです。ジャニーズの若手を起用すると、ターゲットがF1層(20歳~34歳の女性)になり、どうしても恋愛がテーマになる。

しかし、その層はもはやテレビドラマを見ないので、数字が取れない。早河会長は米倉のことを『涼ちゃん』と呼ぶほど信頼を置いている。今回の『ドクターX』第1話において、米倉が大好きなニューヨークでロケが行われたのはまさにご褒美です」(前出・広告代理店社員)

さらにテレ朝は今クールに『相棒』シリーズ15作目と『科捜研の女』シリーズ16作目を投入している。これらも15%前後の高視聴率は確実だ。『ドクターX』と共通するのは、20代の人気俳優はほとんど出演せず、「恋愛」「結婚」といったテーマは皆無なことだ。

真面目に頑張る人を描く

「『相棒』には人気女優の仲間由紀恵がエリート警察官として3番手で出演していますが、もちろん色恋はない。仲間はここで主演の水谷豊に認められれば、反町隆史の後釜に座る可能性もありますから、気合が入っています。

他にも山本耕史が後釜という声もあり、次の相棒役は誰かというのも視聴者の楽しみの一つです。『科捜研の女』の沢口靖子は中高年男性にとって、永遠のアイドル。もはや『笑点』と同じレベルで、中高年層に視聴習慣がついているんです」(テレ朝関係者)

今クールでこの3本以外に高視聴率を獲得したのが、初回が13・1%だったTBSの日曜劇場『IQ246』である。

「家族で安心して見られることが、日曜劇場のウリですから、恋愛はナシ。ただし局側はシリアスな『相棒』を意識していて、一方、主演の織田裕二はコメディドラマをやりたかった。今後、テレ朝の3本に迫れるかは微妙です。ちなみに来年1月からの日曜劇場は木村拓哉主演ですが、設定は外科医。キムタクドラマでさえ恋愛は封印します」(テレビ誌ライター)

歴史や実話をもとにしたNHKの大河ドラマや朝ドラ『べっぴんさん』も含め、今クールで視聴率10%以上を獲得し、視聴者から高評価を得ているテレビドラマはいずれも「恋愛」をメインにした作品ではない。

石原さとみが主演する日本テレビの『校閲ガール』は、出版社の校閲者という「言葉のプロフェッショナル」を主役にした職業ドラマである。

TBSの『逃げるは恥だが役に立つ』は、若者に人気がある新垣結衣と星野源が出演する男女の物語だが、いわゆる「恋愛ドラマ」ではない。

新垣が演じるのは、文系の大学院で学んだものの就職先が見つからない求職中の女性。彼女は生活していくために、家事代行業の仕事先で知り合った会社員の男性(星野)と「契約結婚」(事実婚で性的な関係はなく、女性は給料をもらって家事を担当)する……というストーリーだ。

元毎日放送プロデューサーで同志社女子大学教授の影山貴彦氏はこう解説する。

「このドラマは社会的な問題に一石を投じています。大学院生が仕事で報われない社会システム、特に女性に対しては厳しいままだという裏テーマがあるんです。主人公は社会の不条理さに怒りながらも、置かれた立場で花を咲かそうとする。

非現実的な設定なようで、一皮むくと、そこに厳しい現実が描かれています。中高年の鑑賞にも十二分に堪えうるドラマです」

『校閲ガール』や『逃げるは恥だが役に立つ』は、「地に足をつけて真面目に働く女性」の物語なのである。それは『半沢直樹』や『下町ロケット』と同じテイストなのだ。

月9は一昔前のメロドラマ

一方で、フジテレビの看板「月9ドラマ」だけが、いまだにピントが外れている。元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏が語る。

「見た目のいい男女が、すれ違いながら、最後は結ばれる。そんなバブル期の恋愛ドラマの作り方を引きずっているんです。いくら目先を変えても、若い視聴者からは『私たちだって恋愛のことばかり考えているわけじゃない』と、そっぽを向かれてしまっている。

人生経験豊富な40~50代の女性も『月9みたいな恋愛ドラマはもう見たくない』と飽きてしまっています。そんな状態が、ここ何年も続いています」


今クールの月9『カインとアベル』も初回視聴率8・8%と低迷しているが、それも当然だろう。主演はジャニーズの人気アイドル・山田涼介で、大手不動産会社社長の次男である主人公を演じる。副社長を務める優秀な兄との葛藤のなか、兄の恋人と三角関係に陥る……まるで一昔前のメロドラマである。

ドラマ評論家の黒田昭彦氏が語る。

「恋愛ドラマが数字を取れなくなってきた決定的な分岐点は、やはり'11年3月の東日本大震災です。そのため'12年の月9は、『嵐』の松本潤や大野智を主演に起用しても恋愛モノにはしなかった。

フジだって現場は薄々分かっていたんですが、過去の栄光を忘れられない上層部が『月9は恋愛ドラマだ』と言い出して、恋愛ドラマに回帰してしまったのでしょう」

かつてトレンディドラマをプロデュースしていた大多亮氏や亀山千広氏が、'12~'13年からそれぞれ常務、社長に就任し、明らかに迷走が始まった。

昨年11月の定例会見で、亀山氏は、月9についてこう語っている。

「今まで押し出してきたワクワク感だったり、ドキドキ感だったり、少し浮き世離れしたお祭り感がどこかで絵空事に見えてしまうようになったのかなと思います」

フジの若手社員はタメ息まじりにこう明かす。

「分かっているなら、なぜ変えないのか……。上層部は'90~'00年代前半に大手芸能事務所にお世話になった恩義があります。そのためキャスティングにしがらみが残っていて、いまだに大手事務所が売り出し中の若い俳優を起用する必要があるんです。

すると恋愛モノを作るしかなくなる。ギリギリの人間性を表現する本格ミステリーや社会派の作品にはベテランの演技力がいりますからね」

恋愛ドラマが視聴者に受け入れられない理由について、中央大学教授・山田昌弘氏は社会学の視点からこう分析する。

「第一点は、若者に恋愛離れが起きているということ。恋愛自体に興味関心がない若者が増え、交際相手がいる割合は減少している。さらに彼氏彼女が欲しいと思っている人も減っている。若者全般に恋愛に対するあこがれがなくなってきたということです。ただし結婚はしたいと思っている。

つまり、結婚に結びつくマニュアルになるならまだ見たいけれど、恋愛はもういらない、ということなのでしょう。ドラマの恋愛はモデルにならなくなった、ということです」

何度も都合よく男女が偶然出会う話は参考にならない。そもそも、SNSで24時間相手の動向がわかる現代では「すれ違い」や「会えない時間の辛さ」といった要素は、もはや何の共感も呼ばないのだ。

「さらに言えば、中高年はいまさら『若者がこういう恋愛をしている』というドラマを見させられてもまったく意味がありません」(山田氏)

やるならよほど上手くないと

前出の碓井氏が嘆く。

「とは言っても、人を好きになるという基本的な感情に変わりはありません。その点では、作り手の力量が問われている。いい脚本といい役者がいたら、いまでも映画『君の名は。』のように恋愛モノはヒットする。しかし、テレビにはその2つがないということです」


作り手である30代の民放テレビ局ドラマプロデューサーが語る。

「単純に恋愛モノで主役を張れるような、幅広い世代から支持を受けている20~30代の若手男性俳優がほとんどいないんですよ。各局とも恋愛ドラマを捨てたわけではないですが、よほどよくできた原作がないと、会議で通らないんです」

各局のプロデューサーはリスクも高い恋愛ドラマに及び腰だという。

「まず過激なベッドシーンはいまの時代できないので、無難な絵になります。しかも恋愛ドラマはツイッターなどで話題が広がりにくい。ミステリーやサスペンスが有利なのは、その後の展開予測でネットが盛り上がってくれるから。

また、いまのドラマは『相棒』のように人気が出たら映画化や続編も作るというのが主流ですが、恋愛ドラマは続きが描きづらいため、ヒットしても儲からない」(前出・プロデューサー)

観るほうも、民放各局の作り手も「恋愛ドラマ」を求めていないのだ。

そんな中、このクールで異彩を放つのがNHKのドラマ。『運命に、似た恋』ではクリーニング店店員役の原田知世が新進デザイナー役の斎藤工と恋に落ちる。また、観月ありさ主演のNHKプレミアムドラマ『隠れ菊』は不倫がテーマだ。

「1話に愛人が3人も出てくるドラマって、なかなかないですよ(笑)。ドロドロした愛憎劇が好きな少数派の受け皿は、今はNHKになっています」(前出・ペリー荻野氏)

今秋はNHKだけが恋愛ドラマの良作を作っているのが現状だ。時代に合った新しいタイプの恋愛ドラマは今後生まれるのだろうか―。

(週刊現代 2016年11月5日号)

秋ドラマで本領発揮の「新垣結衣」と「石原さとみ」

2016年11月07日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


ヤフー!ニュースに、秋ドラマについて寄稿しました。

秋ドラマで本領発揮の
「新垣結衣」と「石原さとみ」

新垣結衣の「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)と、石原さとみの「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)は、この秋のドラマの“台風の目”だ。

●新垣結衣の「低欲望系高学歴女子」

今期ドラマのナンバー1として挙げたいのが、「逃げるは恥だが役に立つ」である。津崎(星野源)とみくり(ガッキーこと新垣結衣)は、ごく普通の新婚夫婦に見えるが、実は「契約結婚(事実婚)」だ。しかも夫が雇用主で、妻は従業員の関係。「仕事としての結婚」という設定が、このドラマのキモであり、核になっている。

みくりは、学部と大学院、2度の就職活動に失敗した。派遣社員となるが契約を切られてしまう。家事代行のバイトで津崎と出会い、契約結婚する。戸籍はそのままだが、住民票の提出によって健康保険や扶養手当も可能となる。業務・給料・休暇などを取り決め、家賃・食費・光熱費は折半。もちろん性的関係は契約外だ。

「こんなの、あり得ない」と言う人も、「あるかもしれない」と思う人も、気づけば、ガッキーと星野の奇妙な同居生活から目が離せなくなっている。2人が見せてくれる「誰かと暮らすこと」の面倒臭さと楽しさに、笑えるリアリティーとドキドキ感があるからだ。

何より、このドラマのガッキーが反則技的に可愛い(笑)。そして、ヒロインのみくりが魅力的だ。自分が美人であることの自覚がなく、様々な社会的欲望にも恬淡(てんたん)としている。また高学歴女子の知性も嫌みにならず、性格の良さと相まって天然風ユーモアへと昇華している。加えて、津崎を演じる星野が、これ以上の適役はないと思えるほどのハマリぶりだ。星野あっての「逃げ恥」である。

みくりも津崎もちょっと変わったインテリで、ガッキーと星野が真面目に演じれば演じるほど、見ていて可笑しい。いわばマイルドなラブコメだが、初めてのものを見たような”出現感”のある、“新商品”的ドラマになっているのだ。

今後の見どころは、みくりと津崎の“距離感”だろう。相手に対する気持ちや意識が変われば、快適だった契約結婚生活も危うくなってくる。成り行きから目が離せない。

●石原さとみの「フルスロットル系校閲女子」

「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」の舞台は、春クールで好評だった「重版出来!」(TBS系)と同じく出版社である。しかも出版社と聞いて、すぐ思い浮かぶ「編集部」ではなく、「校閲部」という設定が特色だ。

開始前、「校閲の仕事がドラマになるのか?」という不安はあった。基本的には目立つ存在ではない。本や雑誌の原稿の誤字・脱字、事実誤認などをチェックする、重要ではあるが縁の下の力持ち的役割だからだ。

しかし始まってみれば、石原さとみのフルスロットル演技がすべてを凌駕(りょうが)している。出版社としての人事や、校閲の守備範囲を逸脱するような仕事ぶりに対し、リアリティーうんぬんの意見もあるだろうが、過剰と純情こそがヒロイン・悦子のキャラクターだ。

編集部への異動を主張し続けていることは変わらないが、校閲者としての悦子も進化している。校閲という仕事における、結果的には無駄に終わることの多い、地道な「確認作業」の大切さが、物語から十分に伝わってくる。先日も、校閲部の先輩・藤岩(江口のりこ、好演)を「鉄のパンツ」とからかう若い女性社員たちを、悦子が校閲で得た知識を武器に撃退していた。もはや騒々しいだけの校閲ガールではないのだ。

近年の石原は、松本潤や山下智久の相手役、松下奈緒の妹役といった立場で、完全燃焼とは言えなかった。だが今回は、「鏡月」のCMで表現した大人の女性の可愛らしさも、「明治果汁グミ」のCMで見せたコメディエンヌの才能も、思う存分発揮できる。

「逃げ恥」も、「地味スゴ」も、ヒロインの魅力を支えているのは、絶妙な設定であり、よく練られた脚本であり、そして自在な演出だ。

たとえば「逃げ恥」では、「情熱大陸」や「サザエさん」、NHK・Eテレの深夜番組「2355」、さらに「エヴァンゲリオン」までがパロディーの題材となっている。それもかなりのクオリティで。また「地味スゴ」では、ヒロインのファッションを物語展開のアクセントとして強調したり、校閲した文字が画面上で乱舞したりする。いずれも、ドラマの雰囲気と作り手の遊び心がマッチした好例だ。

もしかしたらこの2本のドラマは、新垣結衣と石原さとみ、それぞれの“セカンドデビュー”ともいえるような、代表作の1本になるかもしれない。

(ヤフー!ニュース 2016.11.05)

6日の「TBSレビュー」で、経済番組について話をします

2016年11月05日 | テレビ・ラジオ・メディア



6日(日)朝の「TBSレビュー」で、経済番組について話をします。


「TBSレビュー」

テーマ:
マネーから日本をみる~経済番組のあり方とは~

出席者:
上智大学教授 碓井広義

進行:
TBSアナウンサー 木村郁美

放送日時:
11月6日 日曜日 午前5時30分~6時

内容:
テレビで経済を扱うことは難しい。
そうした中、がっちりマンデーは、
隙間ビジネスなどを元に
日本経済について考えてみようというものだ。

また、ウィークデーの深夜に放送している
ビジネスクリックは、
海外市場の動きや国内の経済動向を
リアルタイムで伝えていく。

いずれも経済番組にありがちな
堅苦しさや難しさを排除して、
分りやすく見せることに徹している。

ただそれだけでいいのだろうか。
テレビで経済を伝えることには
なにが必要なのか。

番組では、ふたつの番組を例に、
テレビで経済を扱う時には
どのような視点が必要なのか。
テレビにおける経済番組のあり方と
課題について考える。

(TBS番組サイトより)


上映会予告! 「鬼才・実相寺昭雄 映像の世界」

2016年11月05日 | テレビ・ラジオ・メディア



実相寺昭雄研究会と京都文化博物館の主催で、実相寺昭雄監督の回顧上映を行います。


没後10年/生誕80周年記念
「鬼才・実相寺昭雄 映像の世界 
ウルトラマンから仏像まで」

11月29日、12月6日~11日


会場:京都文化博物館 フィルムシアター

11月29日(火)実相寺監督の命日がオープニング。
12月6日(火)から12月11日(日)まで。
トータル7日間の上映会です。

幻のテレビドラマデビュー作品「おかあさん」(TBS、昭和37年)、
「哥(うた)」の実相寺監督編集バージョンといわれる秘蔵作品、
円谷プロ作品、ATG作品、新作ドキュメンタリーなどの上映を行います。


〇11月29日(火)オープニングイベント

会場:京都文化博物館 3F フィルムシアター

映画鑑賞料1,000円 (各回入替制)  
〔京都文化博物館 友の会 会員 500円〕

昼の回
13:30~「無常」(144分)
15:45~ 新作ドキュメンタリー 「KAN TOKU 実相寺昭雄」(30分)
16:15~ 終了

夜の回
18:30~ ウルトラマン 「故郷は地球」(25分)
18:55~ ウルトラセブン「第四惑星の悪夢」(25分)
19:20~ ウルトラセブン「円盤が来た」(25分)
19:45~ 怪奇大作戦 「京都買います」(25分)
20:10~ トークライブ  安齋レオさん 宇治茶さん (50分)  
21:00~ 終了

主催:実相寺昭雄研究会
    京都文化博物館


実相寺昭雄研究会


実相寺昭雄オフィシャルサイト
http://jissoji.wixsite.com/jissoji-lab

“レコ大の黒い霧”をめぐって

2016年11月04日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム



ヤフー!ニュースに、「レコ大買収疑惑」について寄稿しました。


“レコ大の黒い霧”をめぐって

週刊文春が報じた「レコード大賞1億円買収疑惑」。

この件について、新聞やテレビなど、いわゆる大マスコミの報道がほとんどありません。様子見ということなのかもしれませんが、タブーに触れるのを避けるかのようで、やはり異様な感じがします。

先日、ネットニュースのビジネスジャーナルから取材を受けました。現時点での感想ということでしたので、以下のように回答しました。

● 近年のレコード大賞への違和感

2008年から昨年までの8年間、レコード大賞の受賞者はEXILE(4回)、EXILEの兄弟グループである三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(2回)、そしてAKB48(2回)の3組のみです。特に“EXILE関連銘柄”の圧倒的な強さが目立ちます。

音楽の趣味が細分化・多様化し、1年を代表する曲を選ぶことが難しくなっていることは理解できますが、特定事務所の独占的受賞に、音楽ファンも含め多くの人が違和感をぬぐえませんでした。

レコード大賞の選定に関して、この事務所が大きな権限、もしくは影響力を持っているという「噂」は以前からありました。しかし、今回のように、一種の「物的証拠」が提示されたのは初めてです。

もしも報道されたように、「1億円で大賞が売買された」のであれば、これほど音楽ファンを愚弄する話はありません。

● レコード大賞と放送局

またレコード大賞は、単なる音楽賞として存在しているわけではなく、TBSが毎年、年末に放送する大型番組「輝く!日本レコード大賞」と不可分な関係にあります。

視聴者は、レコード大賞を日本で最も権威のある音楽賞の一つとして認識するからこそ、今年で58回目となるこの番組を見続けてきました。

しかし、厳正であるべき選定に、このような疑義があるとすれば、それは視聴者に対する裏切りでもあります。

今回指摘された昨年の選定をめぐる疑惑は、まさに放送内容に関わる大問題です。TBSは独自に調査を行い、その結果を公表すべきであり、それが放送した側の責任だと思います。

また、真相の解明をしないまま、今年もTBSがレコ大の放送を行うのであれば、法律的にはともかく、倫理的に大きな問題があると言わざるを得ません。

華やかな音楽賞の背後に、“レコ大の黒い霧”ともいえる、恥ずべき癒着や腐敗が広がっていて、しかも放送局がその実態を知りながら、黙認する形で放送を続けてきたのか、といった疑いを持たれないためにも、TBSの可及的すみやかな対応が望まれます。

(ヤフー!ニュース個人 2016.11.02)

ヤフー!ニュース個人
「碓井広義のわからないことだらけ」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuihiroyoshi/

新垣結衣「逃げ恥」の不思議なリアリティーとドキドキ感

2016年11月03日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、TBSのドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を取り上げました。


TBS系「逃げるは恥だが役に立つ」
ガッキーが反則技的に可愛い

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の津崎(星野源、適役)とみくり(新垣結衣)は、ごく普通の夫婦に見えるが実は契約結婚だ。夫が雇用主で妻は従業員。「仕事としての結婚」という設定がこのドラマのキモである。

ヒロインのみくりは、学部と大学院、2度の就職活動に失敗。派遣社員となるが契約を切られて求職中だった。家事代行のバイトで津崎と出会い、契約結婚(事実婚)する。戸籍はそのままだが、住民票を提出することで健康保険や扶養手当もOKとなる。業務・給料・休暇などを決め、家賃・食費・光熱費は折半。もちろん性的関係は契約外だ。

「こんなの、あり得ねー」と言う人も、「あるかもしれない」と思う人も、気づけば、ガッキーと星野の奇妙な同居生活から目が離せなくなっている。2人が見せてくれる「誰かと暮らすこと」の面倒と楽しさに、不思議なリアリティーとドキドキ感があるからだ。

そして何より、このドラマのガッキーが反則技的に可愛い。自分が美人であることの自覚がなく、また高学歴女子の知性も嫌みにならず、性格の良さと相まって天然風ユーモアへと昇華している。

今後の見どころは、津崎とみくりの“距離感”だ。相手に対する気持ちや意識が変化すれば、快適だった結婚生活も危機を迎える。どんな展開も受け入れるが、ガッキーだけは泣かせないでね。

(日刊ゲンダイ 2016.11.02)


書評した本: 『[アルファの伝説] 音楽家 村井邦彦の時代』ほか

2016年11月02日 | 書評した本たち



「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。


松木 直也
『[アルファの伝説] 音楽家 村井邦彦の時代』

河出書房新社 2,700円

昨年の8月、『アルファレコード 〜We Believe In Music〜』というタイトルのCDが発売された。2枚組で38曲が収録されている。一部を挙げると、赤い鳥「翼をください」、荒井由実「海を見ていた午後」、ハイ・ファイ・セット「スカイレストラン」。さらにブレッド&バター「あの頃のまま」、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)「ライディーン」なども並ぶ。曲名を眺めるだけで70年代から80年代にかけての風景や当時の自分が甦ってくるが、それはまさに“村井邦彦の時代”だったのだ。

1945年生まれの村井は学生時代から音楽に携わり、24歳で音楽出版社を設立。作曲家、またプロデューサーとして、数多くのアルバムを送り出した。ライター&編集者の著者は、村井本人や関係者への取材を積み重ね、半世紀以上におよぶ音楽活動の軌跡を再構成している。

読んでいて興味深いのは、ラジオやレコードを通じて毎日のように聴いていた楽曲が生まれていく過程だ。中でもユーミンとの出会いとアルバム作りはその白眉だろう。彼女を支える演奏者は「キャラメル・ママ」の4人(細野晴臣、松任谷正隆、林立夫、鈴木茂)。今思うと、何とも贅沢なデビュー戦だ。「レコードはずっと残るものだから、完璧に近いものをつくっていかなくてはいけない」と考える村井は、作品はともかく、ユーミンのピッチ(音程)がバラバラになる歌い方を決して許さなかった。時間と費用を惜しみなく投入し、格闘の末に完成した『ひこうき雲』は73年に発売される。

その後、村井はYMOを構想していた細野と契約し、この画期的なプロジェクトを支援していくことになる。それは音楽プロデューサーとして、「まだ水面に顔を出さない大衆の音楽的嗜好性を敏感に察知して、誰よりも早く、それを商品として世に出すこと」に才能を発揮し、戦後の新たな音楽の流れをつくった村井を象徴する仕事だった。


平川克美 『喪失の戦後史』
東洋経済新報社 1,620円

日本人の意識が大きく変化したのは、「70年代から90年代まで続いた、安定期における列島全体の消費化による」と著者は言う。人口動態という指標に注目しながら、戦後史を再検証したのが本書だ。人々の日常的選択とその結果を踏まえ、今後の社会を考える。


小川義文 『小川義文 自動車』
東京書籍 4,212円

著者は世界的な自動車写真家。美しすぎるクルマの写真と、その魅力を伝える文章を堪能できる。フェラーリもシトロエンも素敵だが、著者の撮るポルシェこそ絶品である。闘争的かつ官能的な美しさを支える、このクルマが持つ哲学と技術を熟知しているからだ。


田中小実昌 『題名はいらない』
幻戯書房 4,212円

著者が亡くなって16年。こうして86編もの単行本未収録エッセイが読めるのは有難い。旅の話、本の話、テーマもストーリーも、もちろん題名も決めずに書くという小説の話。いずれも柔らかいのに、どこか芯がある文章で、読後に淡い印象が残るコミマサ調だ。

(週刊新潮 2016年10月27日号)



「家族」をキーワードに、「昭和」の姿を浮き彫りにする

2016年11月01日 | 本・新聞・雑誌・活字


本のサイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。


「家族」をキーワードに、
「昭和」の姿を浮き彫りにする

昭和天皇の弟・三笠宮さま、俳優の平幹二朗さん、アニメ「ドラえもん」のスネ夫の声で知られる声優の肝付兼太さん。

10月、いくつもの訃報があった。いずれも、どこか「昭和」という時代を思わせる方々だ。


「回想」はもういい。昭和を「歴史」に。・・・という凄みのある文句が本の帯(それも背中)に入っていた。関川夏央さんの『家族の昭和』(新潮社)である。

昭和を象徴するいくつかの「作品」を、「家族」をキーワードに解析し、「昭和」の姿を浮き彫りにする。素材となるのは、向田邦子『父の詫び状』吉野源三郎『君たちはどう生きるか』幸田文『流れる』、そして鎌田敏夫脚本のドラマ『金曜日の妻たちへ』である。

向田作品や『流れる』が並んでいるのは不思議ではなかったが、『君たちはどう生きるか』と『金曜日の妻たちへ』(それもパート3「恋に落ちて」が軸)が登場したのは意外だった。

『君たち・・・』を読んだ最初は中学生のころだったが、主人公のコペル君は同じ中学生といっても、まったく違う。これが書かれた昭和12年当時の中学校とはもちろん旧制中学であり、すでにエリートの一員だ。ちなみに、関川さんによれば、コペル君が通っていたのは「おそらく大塚の高等師範付属中学」、現在の筑波大付属である。

コペル君が銀座のデパートの屋上から、下の道を行く人や車の流れを眺めながら「自分を見つめる、もう一人の自分」を意識するくだりは、中学生だった私をどきりとさせた。確かに、初めて出会った「哲学小説」だったのだ。

関川さんの文章を読みながら、あらためて、これが「東京地生えの中流上層と上流、そういう家庭に育った少年たちの目をとおしてえがかれた」物語だったことを知った。また、この小説と吉野源三郎から発して、丸山真男、鶴見俊輔、さらに堀辰雄にまで言及していくところが関川さんの著作の醍醐味だ。

そして、鎌田さんの『金妻』。舞台は昭和の末期であり、同じ元号とは思えないほど社会状況が変わっている。登場人物たちを見る関川さんの視線も、どこか厳しい。「(ドラマの男女たちは)平和と退屈ゆえに「過去をひきずる快楽」に身を委ねているだけではないかとも思われる」と書いている。もしかしたら、この辺りの時代を嫌いなのではないか、などと勝手に想像したりして。

文芸表現を「歴史」として読み解きたいという希望が、かねてからある。・・・そう関川さんは言う。そこには向田ドラマや『金妻』のような映像作品も入るそうだ。おかげで、これまでに出ているドラマに関する評論とは、かなり違った刺激を受け、発見も、思うことも、たくさんあった。関川さんに感謝である。

(シミルボン 2016.10.30)