碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

朝日新聞で、「医療ドラマ」について解説

2021年04月17日 | メディアでのコメント・論評

 

今こそ!見たい

医療ドラマ 

強烈な主人公にドキドキ

 

医療ドラマといえば、刑事ドラマと並ぶ2大テーマです。生と死を扱い、医療現場のリアリティーを追求したものから、個人と組織との対立を描いたものまで様々です。また、恋愛や時代劇の要素が入ったものもあります。みなさんの「イチオシ医療ドラマ」は何ですか?

数ある医療ドラマの中で1位に輝いたのは「白い巨塔」。山崎豊子さんの同名の小説を元に、1960年代から何度もドラマ化、映画化された。大学病院を舞台に、権力を追い求める外科医・財前五郎と、人の命を無欲で救い続ける内科医・里見脩二の対照的な2人の生きざまや組織の暗部を描いている。

何人もの俳優が主役を演じてきたが、「田宮二郎派」と「唐沢寿明派」に分かれた。田宮派は「視聴者にとってはたまらなく魅力的なヒール・財前五郎のハマり役っぷりに後進の俳優さんたちは歯が立ちません。田宮さんが財前の中に息づいているのです」(兵庫、56歳女性)。一方の唐沢派。「唐沢さんの財前教授は、すごい演技だと思う。毎週ゾクゾク、ドキドキして見ていた」(奈良、48歳女性)

2位の「JIN―仁―」は、現代の医療知識と技をもったドクターが、タイムスリップをするという時代劇。「いわゆる医療ドラマの枠を超え、幕末へタイムスリップした医師を中心に、人間愛や家族愛を絡めた壮大な物語です」(静岡、64歳男性)。いまのコロナ禍に絡め、「現代と過去を行き来しながら過去の病を治療する、そんなことができたら今のこのコロナもいとも簡単に根治できるのでは」(京都、57歳女性)という意見もあった。

そして3位は、「私、失敗しないので」が決めゼリフの「ドクターX~外科医・大門未知子~」。滋賀の女性(31)は自身の境遇を大門に重ねる。「実社会ではあり得ないながらも、私の理想を大門が貫いています。上司にひたすら頭を下げる日々ですが、会社で言いたいことを言えたらどれだけ気持ちがいいか。私のできないことをしてくれて、人間関係の現実味も持ち合わせているので、何回みても楽しい」

トップ10には、アメリカのドラマが二つ入った。4位の「ベン・ケーシー」と6位の「ER緊急救命室」である。

60年代初めに放送されたベン・ケーシーには60~70代の方々から、多くのコメントが寄せられた。「ドラマの最初に、男、女、誕生、死亡、無限と記号を黒板に書いた後で病院のドアが開き、ストレッチャーに乗った患者が現れてエレベーターに乗り、連れて行かれた部屋でベン・ケーシー医師が登場するという場面が大好きで毎回見ていました」(東京、64歳女性)

鹿児島の男性(43)は「群を抜くリアリティーで『ER』です! 特にシリーズ初期、医療に映し出される社会問題を、圧倒的な作り込みとスピード感で描いています。繰り返し見返しました」。その影響か、いちどはあきらめた医療の道に進み、いまは看護師10年目となったという。

救急と対照的にへき地医療を取り上げたのが、5位に入った「Dr.コトー診療所」。「豊かな自然を背景に皆それぞれ悩みを抱えながら生きていて、沖縄らしさも満載で、ある意味今より良き時代だったなあとつくづく思います。吉岡秀隆さんや柴咲コウさんら、みな自然な演技で、涙したりため息が出たり、とても感情移入して見ていられました」(神奈川、75歳女性)

 ■社会システムえぐる

メディア文化評論家で、多くのドラマ評論を手がける碓井広義さん(66)に、今回のランキングや医療ドラマ人気の秘密などについて聞いた。

まず、ランキング1位の「白い巨塔」から。「何と言っても、山崎豊子さんの原作のすばらしさでしょう。財前五郎の魅力、奥深さだけでなく、それまで内部をうかがい知れなかった医学界や大学病院の内側、そこにうごめく人間模様を、見事にえぐり出していた」と評価する。

2位の「JIN―仁―」は、「異色ぶりが魅力」と評する。現代のドクターが、タイムスリップをするという面白さだけではないという。「坂本龍馬や勝海舟らも登場する、日本人が大好きな幕末歴史ドラマ、そして恋愛ドラマの要素もある、三位一体のぜいたくなドラマになっています」と分析する。

そして3位の「ドクターX~外科医・大門未知子~」。「来たか、という感じ(笑)。大学病院の権威などと闘う一匹狼(おおかみ)の女性医師の爽快感。医療ドラマにおける水戸黄門といえますね」

「ベン・ケーシー」の4位は、「ちょっとびっくりだった」というが、「日本人が初めて出会った医療ドラマでしたから、とても鮮烈で、思い出深いのではないでしょうか。脳神経外科医として成長し、次々と患者を救っていく姿はかっこよかった」。

同じアメリカのドラマでいうと、90年代から放映された「ER緊急救命室」も、日本人が初めて見る「救命モノ」だったという。原作は「ジュラシック・パーク」を書いたマイケル・クライトン。「彼は小説家で医学博士だったので、原作がリアルだった」

日本のドラマに戻ろう。5位に入った「Dr.コトー診療所」。「物語の舞台が島で、緊密な人間関係のなか、島の人とつながる医師を、主役の吉岡秀隆さんがナイーブに演じた。とても新鮮な印象を受けた」

7位の「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―」。「2008年から放映され、これからドクターヘリを全国配備していくぞ、というときで、ドラマが先取りして、その存在を知らしめた役割も大きかった」

 医療ドラマは、なぜこうも人気があるのか?

「まず、医療ドラマは、同時に社会派ドラマであるということ。医療システムイコール社会システム、でもあるんですね。さらに医療って、経済と同じように関心があるけど、なかなか実態が見えづらい。そこを見たいというのもあるのでしょう」

さらに碓井さんは続ける。「医療ドラマの主人公は、医師。病気を抑え、患者を助ける。強きをくじき、弱きを助ける存在。ヒーロー。生と死という究極のテーマを扱うヒーロードラマなんです。典型は『ドクターX』です」という。

ところがここ数年、この「ヒーロー路線」が若干変わってきているという。「ヒーローが1人ではない、また主人公自身も悩み、迷いながら生きていくパターンが出てきたんです」。

2015年に第1期放映の「コウノドリ」は、医療スタッフ全員で考え悩む「チーム医療」がテーマになり、放射線技師や薬剤師が主役になるドラマも登場してきた。

「コロナ禍で物事を単純に割り切れない時代、世の中にグレーな部分が増えてくると思います。人間的な葛藤を描いた医療ドラマは、今後も様々な形で出てくるのではないでしょうか」

 

<調査の方法> 3月中下旬、1498人が回答。11位以下は(11)監察医 朝顔(12)コウノドリ(13)宮廷女官チャングムの誓い(14)ナースのお仕事(15)透明なゆりかご(16)アンナチュラル(17)法医学教室の事件ファイル、などと続く。

【佐藤陽】

 

朝日新聞「be」2021.04.17


言葉の備忘録228 ひとは・・・

2021年04月17日 | 言葉の備忘録

空知川 2021

 

 

 

ひとは

思い出を忘れることで

生きていける。

だが、

決して

忘れてはならないこともある。

 

 

――碇ゲンドウ

映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

 

 

 


サンデー毎日に、放送開始40年「北の国から」について寄稿

2021年04月16日 | メディアでのコメント・論評

「サンデー毎日」2021.4.25号


本邦初の超高齢妊娠出産ドラマ「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」

2021年04月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

本邦初の「超高齢妊娠出産ドラマ」

NHKドラマ10

「70才、初めて産みます

  セブンティウイザン。」

 

妻から「私、妊娠しました」と告げられた時、夫はどう答えるべきか。正解はもちろん、即座に「おめでとう!」だ。

しかし夫が65歳で妻が70歳だったら、どうだろう。「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」(NHK)である。

定年退職したばかりの 江月朝一(小日向文世)も戸惑った。妻の夕子(竹下景子)と結婚して40年。まさかの「おめでた」だが、夕子に産むことへの迷いはない。朝一も胎児のエコー画像を見て父親になろうと決意する。

とはいえ周囲の反応はほとんど否定的。夕子はパート仲間に「生まれてくる子に無責任」となじられ、兄(竜雷太)から は縁を切ると脅される。

これは本邦初の「超高齢妊娠出産ドラマ」だ。すべてが初体験の熟年夫婦には、喜びだけでなく不安もある。ママパパ教室で赤ちゃん人形の手に触れて、「この小さな手を私は守れるのか?」と自問する朝一。

だが、暗くなったりはしない。いつまで子供を育てられるかなど心配は尽きないが、「子供には子供の未来がある」と腹をくくる。

飄々とした生き方の奥に強さを秘めた朝一に、小日向がピッタリだ。また命懸けの出産に挑む超高齢妊婦をたんたんと、ごく自然に演じている竹下もいい。シーンによっては、2人の舞台劇を見るような充実感がある。

今週金曜が全3話のラスト。「奇跡の赤ちゃん」にも会えそうだ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2021.04.14)


言葉の備忘録227 まあ、・・・

2021年04月14日 | 言葉の備忘録

 

 

 

まあ、

進んでりゃあ、

そのうち着くわよ。

 

 

――葛城ミサト

映画 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

 

 

 


『俺の家の話』の先へ! 没後40年の「向田邦子」を継承する<シン・ホームドラマ>への期待

2021年04月13日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

『俺の家の話』の先へ! 

没後40年の「向田邦子」を継承する

<シン・ホームドラマ>への期待

 

3月まで放送されていた連続ドラマには、強い印象を残す「ホームドラマ」がありました。

その一つが、宮藤官九郎脚本『俺の家の話』(TBS系)です。

振り返ってみれば・・・

観山寿三郎(西田敏行)は、能楽の二十七代観山流宗家で人間国宝。脳梗塞で倒れて、車いす生活となり、認知症も抱えてしまいます。

長男の寿一(長瀬智也)は、プロレスラーでしたが、父の介護をするため、実家に戻ってきました。

介護する側も、される側も、初めての体験。当然のことながら、家族とはいえ、戸惑いや遠慮や誤解もたくさんあります。

このドラマは、介護を日常的な「当たり前のこと」として、ストーリーに取り込んでいました。

しかも、全編に笑いがあふれていた!

型破りな「ホームドラマ」であると同時に、秀逸な「介護ドラマ」でもあった所以(ゆえん)です。

もう一本が、北川悦吏子脚本『ウチの娘は、彼氏が出来ない‼』(日本テレビ系)。

「恋愛小説の女王」である作家、水無瀬碧(菅野美穂)と娘の空(浜辺美波)の物語です。

かなり浮世離れした母と、漫画オタクの娘は、大の仲良しですが、やがて「実の父親」をめぐって騒動が起きます。

血の繋がりだけでは測れない、家族の絆。コメディタッチでありながら、「そもそも家族って何だろう」と考えさせてくれる、異色の「ホームドラマ」でした。

家族の人間模様を描くドラマで思い浮かぶのが、『寺内貫太郎一家』(TBS系)や『あ・うん』(NHK)などで知られる脚本家、向田邦子さんです。

1981年に、台湾旅行中の航空機事故で亡くなったのですが、今年は没後40年に当たります。

向田さんが書いたセリフには、家族についての深い洞察が散りばめられていました。

たとえば『寺内貫太郎一家』では、父・貫太郎(小林亜星)への不満をぶつける息子・周平(西城秀樹)を、母親の里子(加藤治子)がたしなめます。

「一軒のうちの中にはね、口に出していいことと、悪いことがあるの」

それから、『だいこんの花』(テレビ朝日系)。

主人公、元巡洋艦長の永山忠臣(森繁久彌)は、息子の誠(竹脇無我)と二人暮らし。元部下に向って、こう言っていました。

「男は長生きすると子不孝だぞ、覚えとけよ」

考えてみれば、一つの家族って、ある期間しか、家族でいられないんですね。

親が亡くなることも、子供が独立していくこともあるわけで、一緒に暮せる時間は、意外と短い。

それに、家族なんだから、互いによく知っているかといえば、実はそう単純じゃない。

家族だからこそ、逆に知らないことも多かったりして、ちょっと不思議な関係です。

向田さんが精魂かたむけて書き続けた、「家族」というテーマ。そして自在に駆使した「ホームドラマ」という枠組みは、今も古びていません。

むしろ、コロナ禍が続く中で、「家族」は大いに見直される存在になっていると思います。

庵野秀明監督が、『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリヲン』『シン・ウルトラマン』などに続いて手掛けるのは、『シン・仮面ライダー』。怒涛の<シン・シリーズ>です。

今後、テレビ界にも、<シン・ホームドラマ>とか、<シン・向田ドラマ>とか呼ばれるような、ニュータイプの「ホームドラマ」が登場しても、いいのかもしれません。


「日清もちっと生パスタ」CMの江口のりこさん

2021年04月12日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

日清もちっと生パスタ

「こども相談室」編

スイッチON、怒涛の解説

 

かつて「全国こども電話相談室」というラジオ番組があった。前の東京オリンピックが開かれた1964年に始まり、44年も続いた長寿番組だ。今回、小学生の女の子が電話で江口のりこさんに質問する、「日清もちっと生パスタ」のCMを見ていて懐かしく思い出した。

お餅なのか、パスタなのか。問われた江口さんは、「冷凍の生パスタです」と穏やかに答える。ところが、「よく見るやつですね」と言われた途端、スイッチが入った。

「いいえ、全く違います! 日清食品だからたどり着いた、もちっとの中のもちっと!」などと怒涛の解説が止まらない。その生真面目かつ真剣な表情に、つい吹き出しそうになる。

ドラマ「半沢直樹」の国土交通省大臣も、「俺の家の話」の主人公の妹も、予測不能で目が離せない存在だった。そしてこの春、「ソロ活女子のススメ」では堂々の主演だ。生パスタの魅力を説いているのは、まさに〝旬の女優〟である。

(日経MJ「CM裏表」2021.04.11)

 


言葉の備忘録226 パリは・・・

2021年04月11日 | 言葉の備忘録

 

 

 

 

パリは四月である。

雨もひと月前ほど冷たくはない。

 

 

ギャビン・ライアル『深夜プラス1』

 

 

 


毎日小学生新聞で、カンニング竹山さん関連記事

2021年04月10日 | メディアでのコメント・論評

 

 

 

 

<NEWSの窓>

メディア

竹山さんの発言に抗議 

東京都、見せしめか当然か

 

山田やまだ道子みちこ サンデー毎日編集長

 タレントのカンニング竹山たけやまさんが、3がつ28にちのTBSけい生放送なまほうそう番組ばんぐみで、小池百合子こいけゆりこ東京都知事とうきょうとちじらが出演しゅつえんする広報動画こうほうどうが制作せいさくについて「1ぽんに4.7おくえんがかかっている」などとべました。その、「(東京都とうきょうとの)広告こうこく全体ぜんたい経費けいひでした」などと番組内ばんぐみない間違まちがいをただし、あやまりました。にもかかわらず、東京都とうきょうと放送ほうそう、「訂正ていせい内容ないよう都民とみん十分じゅうぶんつたわっていない」とTBSと竹山たけやまさんの事務所じむしょ抗議こうぎしたことが、「表現ひょうげん自由じゆう」をおびやかすのではと議論ぎろんになりました。

 毎日新聞まいにちしんぶんデジタルの4がつ4(よっ)配信はいしん記事きじ専門家せんもんか見方みかた紹介しょうかいしました。元上智大学もとじょうちだいがく新聞しんぶん学科がっか教授きょうじゅ碓井広義うすいひろよしさんは、すみやかに訂正ていせい謝罪しゃざいしたのだから竹山たけやまさんやテレビきょく問題もんだいはないとし、「テレビきょくに『このタレントを起用きようしたら面倒めんどうくさい』という印象いんしょうあたえ、圧力あつりょくをかけているようにしかおもえません。『前代未聞ぜんだいみもん対応たいおう』とかんがえます」と批判ひはんしています。

 一方いっぽう芸能界げいのうかい法務ほうむなどにくわしい石井いしい逸郎いちろう弁護士べんごしは「社会的影響しゃかいてきえいきょうりょくのあるひとがテレビでコメントをする以上いじょう覚悟かくご必要ひつようで、間違まちがった情報じょうほうつたえてしまったとき抗議こうぎけるのは当然とうぜんのことです」との見方みかたをしました。そして、「行政機関ぎょうせいきかん基本的きほんてきにはマスコミや市民しみん批判ひはんをそのままあまんじてけるべきだ」としたうえで、あやまった情報じょうほう拡散かくさん過剰かじょう演出えんしゅつ抑制よくせいされるべきだと指摘してきしました。

 新聞記者しんぶんきしゃ時代じだい予算よさん保険ほけんなどおかねかんする記事きじいたあと関係かんけいする官僚かんりょうらが「説明せつめいしたい」というのでったら、「記事きじのここが問題もんだいだ」と“説明せつめい”されたことが一度いちどならずありました。「だったら訂正記事ていせいきじもとめればいいのに」とおもいましたが、今後こんご記事きじくときに慎重しんちょうになるよう「威圧いあつ」するためにたのだとめました。今回こんかい問題もんだいでも、東京都とうきょうとには、小池都政こいけとせいきびしい竹山たけやまさんの今後こんご発言はつげんをおさえようという意図いとがあるのでは?とかんぐってしまいました。


 毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ政治部せいじぶ夕刊ゆうかん編集部へんしゅうぶ政治せいじなが取材しゅざい週刊誌しゅうかんし「サンデー毎日まいにち編集長へんしゅうちょうとして新聞しんぶんそとから経験けいけんをして、メディアに関心かんしんつようになった。1961ねんまれ。


テレ朝「殴り愛、炎」 脚本・鈴木おさむの3原則が炸裂!

2021年04月09日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

テレ朝「殴り愛、炎」

脚本・鈴木おさむの3原則が炸裂!

 

2日に前編が放送された「殴り愛、炎」(テレビ朝日系)。結婚を控えた1組のカップルがいる。病院長の息子で、心臓外科医の明田光男(山崎育三郎)。肉体労働者を父に持つ、看護師の豊田秀実(瀧本美織)だ。

2人が働く病院に、秀実が高校時代に憧れた先輩で、現在は陶芸家の緒川信彦(市原隼人)が担ぎ込まれた。この偶然の再会から、殴り殴られる「愛の闘争」が始まる。3人を揺さぶる仕掛け人は、光男との結婚を夢見ていた社長令嬢、徳重家子(酒井若菜)だ。

このドラマ、いわば「絵にかいたような」ドロドロ愛憎劇の設定と展開を楽しむ一本と言える。格差恋愛、邪魔する者の存在、誤解の連続、疑心暗鬼、憎しみの醸成、そして暴発!

ドラマ「奪い愛、冬」などを手掛けてきた脚本の鈴木おさむは、今回も「照れない・ブレない・ためらわない」を3原則に、光男を狂気へと追い込んでいく。出張と偽り、秀実と信彦が会っている工房に乗り込んで、「(僕は)ここにいるよ~!」と目を見開いて笑う光男。

人の命を救うための手であり、一度も人を殴ったことがないと叫びながら、信彦に鉄拳を振るう姿が尋常ではない。後編では光男が抱える「心の闇」も解明されるはずだ。

笑ったのは、映画「ゴースト」ばりの、ろくろラブシーン。まさに泥(ドロ)キュンである。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.04.07)


言葉の備忘録225 一切の・・・

2021年04月08日 | 言葉の備忘録

 

 

 

一切の生きとし生けるものは、

幸せであれ。

 

 

中村元訳『ブッダのことば(スッタニパータ)』

4月8日はブッダの誕生日(前463年)

 

 

 


東京堂書店さんの週間ベストで「文庫」1位! 感謝です!

2021年04月07日 | 本・新聞・雑誌・活字

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火曜日のお楽しみ!
 
神保町の東京堂書店さんの週間ベスト発表です!
 
文庫の1位は、
 
碓井広義編 『少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉』
(新潮文庫)
 
でした。
 
(「本の雑誌」ツイッターより 2021.04.06)
 
感謝です!
 
 
+++++++++++++++++++++
 
 
ジュンク堂書店池袋本店さんの
「今週の文庫ランキング」、
10位だそうです。
 
こちらも
感謝です!
 
 
【今週の文庫ランキング1位~10位】
 
1位 辻村深月『かがみの孤城 上』ポプラ文庫
2位 辻村深月『かがみの孤城 下』ポプラ文庫
3位 村田沙耶香『地球星人』新潮文庫
4位 岩槻秀明『子どもに教えてあげられる散歩の草花図鑑』
      ビジュアルだいわ文庫
5位 小野不由美『ゴーストハント5』角川文庫
6位 西加奈子『おまじない』ちくま文庫
7位 東野圭吾『魔力の胎動』角川文庫
8位 塩田武士『騙し絵の牙』角川文庫
9位 浅葉なつ『神様の御用人10』メディアワークス文庫
10位 碓井広義 編『少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉 』
   新潮文庫
 
(ジュンク堂書店池袋本店文芸文庫担当さんのツイッターより 2021.04.05)
 
 
 

 


毎日新聞で、橋田寿賀子さんについて解説

2021年04月06日 | メディアでのコメント・論評

 

 

橋田寿賀子さん、

こだわり続けた女性視点 

背景に戦争への嫌悪

 

テレビドラマの世界で、数々の話題作を残してきた脚本家の橋田寿賀子さんが4日、亡くなった。女性の視点に徹底してこだわった橋田作品は、それまで顧みられることがなかった女性のリアルな思いを浮き彫りにしたが、その背景にあったのは自身も体験した戦争への恐怖と嫌悪だった。

橋田さんは、ドラマ史の中でエポックメーキングといえる作品を少なくとも3作発表している。1作目は「となりの芝生」(NHK、1976年)。

山本陽子さん演じる嫁と、沢村貞子さん演じる夫の母が繰り広げるいわゆる「嫁しゅうとめもの」だ。事あるごとに難癖をつけるしゅうとめの嫌みや愚痴をたたみかけることで、それまでアットホームでほのぼのとした作品がほとんどだったホームドラマで、誰もが抱えるリアルな感情を描き切った。

家族という集団の中に潜み、それまで顧みられることがなかった葛藤を女性の視点で浮き彫りにした衝撃作だった。この流れは、平成以降続いた「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)へと続く橋田作品の柱の一つとなっていく。

2作目は「女たちの忠臣蔵」(TBS系、79年)。男性の視点のみで描かれてきた時代劇に女性の視点を持ち込み、資料がほとんどない分、自身の想像力を大いに飛躍させ、新たな世界を創造した。この流れは、大河ドラマ「おんな太閤記」(81年)、「春日局」(89年)へと続いていく。

3作目は「おしん」(83~84年)。女性の一代記を描くことが多い連続テレビ小説枠でも、異例の1年間にわたって放送された作品だ。

山形県の寒村に生まれたヒロイン、おしんの生涯を、小林綾子さん、田中裕子さん、乙羽信子さんが演じた。「おしん」といえば、誰もが最上川で父母と別れるシーンを思い出すが、少女期、青年期、老年期の各時代を濃密に描き通し、視聴者の関心を1年間、引っ張り続けた筆力は橋田さんの真骨頂といえる。

実は「女たちの忠臣蔵」の裏テーマは戦争の悲しみ。愛する男たちを戦いに送り出す女性を描くことで、時代劇の場を借りて戦争の悲劇を伝えたのだという。

「おしん」では、奉公先を逃げ出した幼いおしんが、雪山で中村雅俊さん演じる男性に助け出される。彼は日露戦争で戦争のむなしさを知った脱走兵で、憲兵に見つかって射殺される。おしんに大きな影響を与える人物として描かれた。

空襲を知る橋田さんにとって、戦争は大きなテーマだった。「人は人を殺してはいけない」。戦争への強烈な嫌悪を持ち続けた橋田さんは、殺人事件を扱ったドラマだけは生涯書かなかった。【佐々本浩材】

描き続けた普通の人たちの人生

元上智大教授でメディア文化評論家の碓井広義さんの話 

「おしん」などNHKの連続テレビ小説を4作、大河ドラマを3作も担当した実績は空前絶後と言っていい。それだけ、視聴者を引き込む物語を構築する力のある人だった。橋田さんのドラマに登場する人物は「特別な人」ではなく、市井の人々。普通の人たちの普通の人生の中にこそドラマがあると確信して物語を書いていたと思う。視聴者は橋田さんのドラマから、自分たちの日常を肯定し、大切なものだと感じることができたのではないか。

人間の言葉の「マジック」

俳優・藤山直美さんの話 

橋田先生は、NHKの連続テレビ小説「おんなは度胸」(1992年)の(ヒロインをいびる義理の娘)花村達子役で、私を世に出してくださった方で、本当にお世話になりっ放しでした。長期にわたるドラマを数多く手掛けられましたが、たとえ途中で1回抜かしても、途中から見始めても、物語がわかりやすくて人物の人間性がよくわかりました。あれはもう人間の言葉の「マジック」だったと思います。国の財産みたいな方。さみしいです。

(毎日新聞デジタル 2021.04.05)

 


言葉の備忘録224 一番好きな・・・

2021年04月05日 | 言葉の備忘録

 

 

 

一番好きなことというのは、

挫折しても

挫折感がないことなんです。

 

 

大林宣彦『大林宣彦の体験的仕事論』

 

 

 


没後40年の向田邦子 継承されるテーマ「家族」

2021年04月04日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

碓井広義の放送時評>

没後40年の向田邦子 

継承されるテーマ「家族」

 

3月まで放送されていた連続ドラマには、強い印象を残す「ホームドラマ」があった。その一つが、宮藤官九郎脚本「俺の家の話」(TBS-HBC)だ。

観山寿三郎(西田敏行)は、能楽の二十七世観山流宗家で人間国宝。脳梗塞で倒れて車いす生活となり、認知症も抱えてしまう。長男の寿一(長瀬智也)はプロレスラーだったが、父の介護をするために実家に戻ってきた。だが、介護する側も、される側も初めての体験だ。家族とはいえ戸惑いや遠慮もある。介護ヘルパー(戸田恵梨香)など他人との関係も難しい。

このドラマは、介護を日常的な「当たり前のこと」としてストーリーに取り込んでいた。しかも全編に笑いがあふれている。型破りなホームドラマであると同時に、秀逸な「介護ドラマ」でもあったのだ。

もう一つが、北川悦吏子脚本「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ-STV)。「恋愛小説の女王」である作家、水無瀬碧(菅野美穂)と娘の空(浜辺美波)の物語だ。

かなり浮世離れした母と漫画オタクの娘は大の仲良しだが、やがて「実の父親」をめぐって騒動が起きる。血のつながりだけでは測れない家族の絆。コメディータッチでありながら、「そもそも家族って何だろう」と考えさせてくれる、異色のホームドラマだった。

家族の人間模様を描くドラマで思い浮かぶのが、「寺内貫太郎一家」(1974年)や「あ・うん」(80年)などで知られる脚本家、向田邦子だ。81年に取材旅行中の航空機事故で亡くなったが、今年は没後40年に当たる。

向田が書いたセリフには、家族についての深い洞察がちりばめられていた。たとえば「寺内貫太郎一家」では、父への不満をぶつける息子(西城秀樹)を母親(加藤治子)がたしなめる。「一軒のうちの中にはね、口に出していいことと、悪いことがあるの」と。また、息子(竹脇無我)と二人暮らしの父親(森繁久弥)が、元部下に向かって「男は長生きすると子不孝だぞ、覚えとけよ」と言っていたのは「だいこんの花」(70年)だ。

家族は期間限定。父、母、子として過ごすことで互いを熟知していたはずなのに、ふと相手の中に自分が知らない「他者」を感じて驚いたりする。向田はそんな瞬間を見逃さなかった。

昨年来のコロナ禍の中で、あらためて家族の存在に目を向けたと言う人も多い。向田邦子が精魂傾けた「家族」というテーマは、さまざまに形を変えながら現在も新しい。

(北海道新聞  2021.04.03)