初心者の老人です

75才になって初めてVISTAを始めました。

観 客・上

2009年04月11日 22時47分32秒 | Weblog

 撮影所の従業員には年一回の稲荷祭りがあります。制作した映画を購入してくれる全国の映画館の館主を招待する館主会もあります。主だった俳優さんも

「いつもわが社の映画がお世話になっています…」

と挨拶に出席します。館主の方も日頃気が付いたことや、今後の映画についての意見も出るのでしょう。

 昔は、テレビの芸能ニュースなどはありませんから、映画愛好家にとっては俳優さんのプライベイトな生活やゴシップは知りません。スターさんは文字通り雲の上の人でした。俳優さんの噂話は映画館でくれるパンフレットに小さく書かれているくらいでした。

 制作した映画は映画館で上映されます。豪華な俳優さんの配役も、十分に練った企画もヒットになるとは限りません。
 大阪のお初天神の近く梅新に映画館がありました。東映会館、梅田日活、梅田大映とありまして、この梅田大映が大映映画のモデル館になっていました。モデル館とは、この映画館に観客が多入りになると、西日本は大丈夫だと言うのです。

 今回の作品の興行成績は赤字だと製作部がよく言いました。しかし本当の赤字ではなく、配給前に予想した観客動員数に満たないということなのでした。つまり皮算用です。皮算用の収入と実際の収入の差を赤字だといっていました。テレビが普及するまでは、映画は興行的に赤字はなかったはずです。

 一方、演劇の方で、渋谷天外、藤山寛美の松竹新喜劇は道頓堀の中座がホームグランドでした。新喜劇の営業方針か団体客がいつも大勢でした。団体客は劇場入り口で、飲み物と幕の内弁当の袋を受け取って、座席につきます。

 開幕前になりますと、舞台の袖から、白いスーツ姿で藤山寛美が現れます。

「△△町内会、ならびに××趣味の会様の皆様よくお越しくださいました…」

 などと大変なサービスでした。

 松竹家庭劇(曾我廼家十吾)の若手女優、由良みち子さんは、芝居中に客席でガサガサして弁当を使っていたらいやでしょうねと聞きますと、

彼女は

「ようしその箸の動きを止めてやろう…」

と舞台でファイトが湧いてくるといいました。

       続く…