日活で「消えた中隊」の製作が始まります.
ストーリーは,大戦の末期の北,満の,ソ満国境で,
ソ連領とにらみ合いの関東軍の話ですから,地味な話です。
出演者は舞台俳優で固めています。
新国劇の、辰巳柳太郎、島田正吾、大山克巳、石山健二郎、清水彰です。
映画女優の島崎雪子が出演しています.
「新国劇」は辰巳,島田でリアルな殺陣(たて)が売り物の劇団でした。
「国定忠治」は迫力のある殺陣でした.
この映画の脚本は,黒澤明と菊島隆三ですから、
しっかりした本だったことでしょう。
黒澤明の作品「姿三四郎」でキャメラを担当した三村明氏は
黒澤監督から一度,監督してみたらと言われたのでしょうか,
… … …
三村明が何故、日活で,監督を引き受けたのか,私にはわかりません.
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監督は,孤独な仕事だと思うようになってきました。
映画監督にアッピールするように俳優は演技をします.
キャメラマン以下,照明,小道具,大道具も監督の意図に合わせて,
セット(舞台)を作り上げます。
監督、対スタッフ,キャストです。
監督の意図をスタッフ,キャストが理解して仕事が出来るように
説得しなくてはいけません.
また監督は,スタッフ,キャストに対して
リアクションの,演技しなくてはなりません.
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渡辺邦男監督のように悲しい場面で,涙を流して見せたり,
俳優さんが熱演したカットでは張り切って力強く
「OK…」と頷かなくてはなりません.
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野球の元中日監督のように、ダグアウトの中で,
選手のまずいプレー見た元監督は,そばにあった椅子を蹴っ飛ばして
怒って見せていました.
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,劇場の観客は遠く離れて,芝居(演技)を見ています。
その遠い場所で見ている観客にアピールするために
、
舞台俳優はどうしても,大振りの芝居になります。
映画は,劇場の舞台よりはるかに近付いたものですから
役の上の表情も大げさに映ります
.
言い換えれば、オーバーな演技になります。
それを、映画監督は,抑えていかなくてはなりません.
「▼▼さん、絶対,監督はやるものじゃありません…」
としばらくして,▼▼さんは三村明氏から
,監督の苦労話を聞きました.
映画監督のことを
「世の中にあんな悪い奴はいない…」
と怒っていた▼▼さんは話を聞いて納得したようです.