「写真研究会」は学内の実験棟に暗室がありました。
広い暗室で引伸機、四つ切りのバットが並んでいます。
新入部員が暗室から出てきて,首をかしげています。
「あの現像液はダメですね…」
そんなはずはないと暗室の中に入ります.
現像液,中核浴,定着液の順番にバットが3枚、
並んでいるのですが、
その部員は,真ん中、中間浴(現像停止液)に
引伸機で露光したプリント(印画紙)を浸けてしまったのです.
現像液のバットはアルカリ性で薄茶色をしています.
中間浴と定着液は酸性ですから,酢のような臭いがします.
その臭いでわかるはずですが、その部員は知らなかったのです.
フエロタイプ乾燥機がありました。
現像定着水洗を済ませた印画紙(プリント)を
クロームメッキをしたフェロ板に貼り付けます.
プリントを乗せたフェロ板に新聞紙をかぶせて,その上から,
フェロ板とプリントの間にたまっている空気をゴムローラーで抜きます.
フェロ板をかまぼこ型になった乾燥機に乗せて,帆布をかけます.
スイッチを入れてプリントを電熱で乾燥させます.
しばらくすると,
「パチ…パチ…」
と音がして、プリントが乾燥してきます。.
このフェロタイプ仕上げにはグロッシー印画紙を使います.
なかなか綺麗に仕上がりません.
むらに仕上がったプリントは再び水に浸けて、
ローラーをかけ直して乾燥させます.
同じグロッシーの印画紙でも,印画紙メーカーによって、
かかりにくいもの
割とうまくいく印画紙とありました。
… … …
私には、フェロタイプ仕上げがうまくいく、フジの
クロロブロマイド紙、ベロナが好きでした.
黒の仕上がりが温黒調でした。
黒が少しセピアというか茶色に傾いた色調です.
当時,学生写真連盟、通称「学連(がくれん)」では、
プリントを黒く焼き込んだ写真が主流で
三菱の印画紙、月光V2を黒く焼き込んだプリントが流行りました.