わが家の近所に、写真館がありました.
下鴨小学校に入学した私に
真新しい学生服を着せ,
母は紋付き姿で写真館に出かけました.
昔は,街のあちこちに写真館がありました。
A写真館は,綺麗に撮ってくれる…
B写真館はシワがなく若々しく撮ってくれる…など
それぞれ、評判の写真館がありました。
… … …
私たち母子が訪れたのは,
父親が勧めたT写真館でした。
2階が写場になっています。
広いスタジオに天井から照明器具が下がっています。
それをT写真師さんは、それぞれ調節して
ライティングを決めます.
スタジオの隅に大きなカメラが置かれています.
当時,写真館のカメラは,キャスターが付いて移動できる
「アンソニー」が相場でした.
写真は,もちろん、モノクロ写真です
,原板はガラス乾板です.
背景紙の前に置かれたソファに私たちを座らせます.
アンソニーをセットして,
写真師はカメラの暗幕を頭からスッポリ被って,
構図とピントをカメラの後で合わせます.
やがて乾板ホルダーをセットして,
レンズ前に付いている
ソルントンシャッターを巻き上げます,
シャッターから伸びた、ゴムチューブ先のゴム球を持って,
私たちに向きます.
「ハイッ…」
でソルントンシャッターはB(バルブ)で露光します.
写真館の帰り際に、受付で、仕上がりの写真サイズを確認します.
写真師さんはこれから「修正」という大仕事が待っています.
修正ニスで乾板に写っている母親のシワを修正するのです.
写真の仕上がりサイズが大きいと,キメの細かい修正を施します.
サイズが小さいときは,修正が少し粗くなるのでしょう.
… … …
近所の知り合いが,
あんたら親子の写真が
ショーウィンドウに出ているよ知らせてくれました.