■■【ヨーロッパ経済の読み方】11月のヨーロッパ経済を時系列的に見る
最近の経済ニュースのエッセンスを、独断と偏見でもってまとめてみました。
◆ ユーロ圏のGDPが2期連続で減少 2012/11/18
EU(ヨーロッパ連合)は、第3四半期(7月から9月)のGDP(域内総生産)が-0.1%と、2期連続でマイナス成長になりました。ゆるやかな景気後退の局面に入ったことを示すと考えて良いでしょう。
ギリシャ -7.2%(推定)
ポルトガル -0.8%
スペイン -0.3%
イタリア -0.2%
ドイツ +0.2%
フランス +0.2%
牽引役のドイツがかろうじてプラスというのですから、EUとしては厳しいですね。
この影響は、元気であった東南アジア諸国にも影響が大きく出ています。
おととしは過去最高の14.8%、去年も4.9%の高い経済成長率を示していたシンガポールですが、今年は半導体をはじめとします主力の製造業の輸出が落ち込み、1.5%程度にとどまる見通しです。
シンガポール政府は、輸出の減少傾向は続くとみて、地下鉄の整備など内需の刺激に力を入れることにしています。その結果、経済成長率は1%から3%と見込んでいます
◆ ユーロ圏はゼロ成長の見通し 2012/11/09
オバマ大統領の当選で「財政の崖」が一歩近づいた感がすることから、ダウが一時360ドルも下落したと伝えられました。支持者に「やるべき仕事はたくさんある」とメールしたオバマ大統領の難問は山積しています。
一方、EU(ヨーロッパ連合)の状況は、はかばかしい回復もなく年末に入るのでしょうか。
ユーロ圏のGDP(域内総生産)は、実質でマイナス0.4%と3年ぶりにマイナス成長に落ち込みました。来年の見通しも明るくはなく、「ほぼゼロ成長」という厳しい見通しをせざるを得ません。
ユーロ圏経済の牽引役のドイツでも、来年はプラス0.8%の低い成長率にとどまると予測されています。
ユーロ圏の失業率についても、経済成長の減速に伴って、来年は11.8%まで悪化するという、背筋が寒くなるような予想が出ています。
信用不安を早期に払拭して、グローバル経済回復に弾みを付けて欲しいです。
◆ ユーロ危機不況とどう闘うか 2012/10/23
NHKの百瀬好道解説委員が、ユーロ危機不況にどう対応すべきかについて解説していました。その要旨を独断と偏見でまとめてみました。
緊縮財政で深刻化する景気後退にどう対応するかが大きな課題です。
ドイツとフランスを中心に、ユーロ圏独自の予算を新しく作る構想が提案される見通しです。
景気対策は原則的には各国の仕事だが、財政事情が苦しい国が多いので、各国まかせでは限界があります。
EU27か国には年間13兆円の予算がありますが、その一部をユーロ圏予算に充てるとしますと、財源が減るユーロ圏以外の国は黙っていないでしょう。
財政に比較的余裕のあるドイツやフランスが、率先して費用の負担を買って出るかどうかが最大のポイントになると思います。
◆ もしユーロ圏脱落が起こると? 2012/10/22
ユーロが安定してきたとはいえ、ギリシャやスペインの動向からは目を離せない状況です。加えてイタリアポルトガルがあります。
これら4か国では厳しい財政状況が続いていますが、ヨーロッパ最大のメディアグループなどが運営する、ドイツの「ベルテルスマン財団」が、「これら4か国が、仮に財政破綻してユーロ圏を離脱したら、どのような経済的な打撃を各国に与えるか」という試算をしました。
主要国が被る経済的な損失は2020年までを合算して「1700兆円」を上回るという見通しを発表しました。
その試算によると主な国の損失額は下記のようになっています。
1位 フランス 300兆円
2位 アメリカ 290兆円
3位 中国 197兆円
7位 日本 88兆円
の損失を被る見通しだということです。
財政破綻してユーロ圏を離脱した場合、これらの国々の国債を保有する国や金融機関などが、巨額の損失を被ります。また、当然のことながら貿易量も大幅に減少しますので、このような巨額な金額になるのです。
そうあって欲しくないですね。
◇ ユーロが安定方向に向かうか? 2012/10/10
通貨ユーロを導入するユーロ圏の財務相が集まり、ESM(ヨーロッパ安定化機構)の初理事会が開催されました。信用不安対策の要となる基金が正式に発足することになったのです。
ギリシャなどを支援してきたEFSF(ヨーロッパ金融安定化基金)に代わって、ユーロ圏の国々が経済規模にあわせて実際に資金を拠出し、財政状況の厳しい国を支援するための常設の基金です。
ESMが支援できる規模は総額5000億ユーロ(約50兆円)に上ります。財政状況の厳しい国への融資に加えて、国債を買い取ったり、経営難に陥った銀行を直接支援したりとEFSFより機動的になります。
その効果に期待したいですか、いかがでしょうか。
◇ ユーロ圏の景気回復はまだ先 2012/10/06
ヨーロッパ中央銀行は単一通貨ユーロの金融政策を決める定例の理事会を開きました。
厳しい景気の現状を引き続き金融面から下支えするため、過去最低になっている今の政策金利の水準を、当面、年0.75%のまま維持することを決めました。これで金利の据え置きは3か月連続となります。
ユーロ圏では、財政状況の厳しい国を中心に景気の落ち込みが続いています。その結果、失業率はユーロ導入以来最悪の水準です。
製造業も低迷が続いています。
政策金利はすでに0.75%台と低く、さらなる利下げの余地は狭まく、金利を下げても大きな効果を見込めない状況です。
前回の理事会で「信用不安の拡大を食い止めるため、財政難の国がEUなどに申請すれば、連携してその国の国債を市場から買い取って支援する」という対応策を打ち出しました。その結果、各国国債の利率が大きく7%を超えることも少なくなってきています。
これ以上の悪化は金利策では限界があるだけに、早い回復を期待します。
◇ ユーロ圏の失業率最悪 2012/10/03
ユーロ圏のことし8月の失業率は11.4パーセントと、ユーロ導入以来、最悪の水準が続いています。しかも3か月続けてのことで、失業率の悪化に歯止めがかからない状態です。
スペイン 25.1%
ギリシャ 24.4
ポルトガル 15.9
アイルランド 15.0
イタリア 10.7
フランス 10.6
スペインの場合には25歳未満に限定すると52.9%と若者の半数以上が失業している状況です。
◇ ヨーロッパ好転の動き 2012/09/08
ヨーロッパ中央銀行の定例理事会が開催されました。
厳しい財政状況のスペイン他を対象に、新たな国債の買い取り策を一定の条件下ではありますが、正式に決定しました。これを契機に変化が起こってきました。
ドイツのメルケル首相が、スペインのラホイ首相が首脳会談後の記者会見で、信用不安の解消に向け協力していく姿勢を強調しました。
好転ではないですが、ヨーロッパ中央銀行は、政策金利については慎重な態度で、今の水準を維持し、変更する執拗はないと判断しました。
スペイン、イタリアなどの国債が買われ始めました。
当然のこと、株価が上昇しています。
これらの動きを契機に、関連各国の状況が好転し、ヨーロッパ信用不安の払拭に繋がるということは、短期間にはムリでしょう。しかし、これが中国経済回復、日米にプラスというような善循環に繋がることを期待します。
【 注 】 タイトル横の日付は、ブログ掲載日