■■【一口情報】 巧妙なオレオレ詐欺に騙されるな
「オレオレ詐欺になんか、騙される方が悪い。俺は絶対に騙されない」と思っている人が多いでしょう。
西田公昭立正大学教授のNHK番組を全7回に分けて連載でご紹介します。上記の様な人こそ読んでいただきたいです。できればNHKアーカイブを利用して、この番組を視聴することをお勧めします。
◇1 第一条 非現実的楽観主義が危ない!
被害が、あとをたちませんし、大きな被害も出ています。「どうしてだまされてしまうのだろう」と疑問に持たれている方も多いようです。
なぜ詐欺などの被害にあってしまうのかについて、心理学の面から、「対策5条」を紹介しています。
自分には関係ないと思っている人は、その態度を改めないと危険だと西田教授は警告して言います。なぜかといいますと、その自信の根拠がどこから来るのか、実に不確実なものだからです。
誰でも、非現実的楽観主義傾向という心理があります。
自分の周囲には、悪い人は多くいないでしょうし、自分は疑り深いほうだとか、思っていたりします。しかし、詐欺の手口は、どんどん改良され、常に我々が知るより先をいっています。ですから、誰も最新の手口を知ることはむずかしいですし、どういう人を狙っているかも、実のところわからないのです。このように西田教授は解説しています。
全方位、24時間の監視体制をとれれば狙われても回避できるかもしれません。しかし継続することは、人間にとっては不可能なことです。
今までは被害に遭っていなくても、それはスキがない人間であるという証明ではありません。
私たちの世界は、基本的に、信じることを前提に成り立っていますし、すべてを疑うことは非現実的です。
もし相手が、だまそうと全力で接近してきたら、これまでのようにはいかないかもしれませんと、謙虚に考えることが必要です。
自信過剰にならずに、だまされるかも知れない、と警戒を怠らない心の構えを持つことが、対策の第一歩だと西田教授は強調しています。これが第1条です。
◇2 第二条 私の失敗と正常性バイアス
自信過剰にならずに、だまされるかも知れない、と警戒を怠らない心の構えを持つことが、対策の第一歩だと西田教授は強調しています。これが第1条です。
この心構えができていませんと、被害にあう危機に直面しても、人間というのは気づきにくいのだそうです。予め、相手に騙されることがわかっていると警戒心が強く働きますが、そうでないと騙されがちになってしまうのです。
これを「正常性バイアス」と言うそうです。
詐欺現場の再現放映番組を見て、「あんな簡単な手口に私なら騙されない」と思いますが、これは事前にオレオレ詐欺であるという予見をもって心構えがあるからそう思いますけど、実際には騙される人が多いのです。
正常性バイアスは、実際に危機に直面していても、緊急事態や非常事態を否定して、自分の都合良いように解釈させてしまいます。
実際に被害にあわれた人は、そのとき魔がさしたように、相手の怪しさに気づかなかったそうです。
私自身が、正常性バイアス状態で失敗したことがあります。
アメリカのロス空港だったと思います。
空港で待っていると知らない人が声をかけてきました。始めは、そのなれなれしさが嫌でした。それでも受け答えをしないのは失礼だと思って、それなりに応答をしていました。
「英語が上手ですね。留学生ですか?」などという言葉につい引っかかって、ニューヨークに住んでいるから話せて当然だというようなことを話しました。
「ニューヨークに住んでいるのなら、アメリカの貧富の差が大きいことはご存知でしょう」などという言葉やそれに関する本を見せ、巧みに私を誘導し、最終的に私にその本をプレゼントするといい、できれば義援金をお願いしますという持ちかけで5ドルを召し上げられました。
後になって冷静に考えてみますと、どう見ても義援金集めではなく、安い本を高く買わせる手立てであったと思いました。
心得の第2条は「売り口上の怪しさに気づく感性を高める」ことだと西田先生はおっしゃっています。
◇3 怪しさを見破る8策(1/2)
自分では騙されないと思っている人ほど、騙されやすいと言うことを認識すべきであるというのがこれまでのポイントです。
相手が、自分を騙そうとしているとき、顔や話し方ではわかりません。では、それを見破る方法はないのでしょうか。
犯人は悪役顔ではなく、やさしそうな顔立ちであったり、見かけは誠実そうで、立派であったり、挙動も不審ではないことが多かったりするので、騙されやすいのです。ところが、注意してみると見破るための8策があると西田教授は言っています。
次回と2回に分けて、その8策をご紹介します。
1 稀有な機会の強調
父上的な感じではありますが、通常ならあまり起こらないようなことがテーマになっていないかどうか、意識しましょう。実際には応募したことがないのに「あなたが当選しました」などと特別に当たったとか、滅多にない幸運なチャンスとか、その種のことで煽っていないかどうかを疑ってみましょう。
2 即断即決の要請
多くのケースで、意思決定を急がせています。相手は、他の人に相談させないように、即断即決を求めてきます。
3 優しい勧誘者
それまであまり日常には関わりなかった人ですのに、急に現れて親切顔をして、相手を油断させて心の中に忍び込んできます。特別に親切だったりする場合には要注意です。
4 絶対得する話
「これは法律で保護されている、特別なケースに相当するので、絶対に損をしません」「一般にあまり知られていないので、他の人は知らないのを私たちがあなただけに教えてあげるのです」というように、無料だとか特別に安いとか、簡単に儲かるとかいうような都合の良い話を持ちかけてきます。
うまい話があれば、誰もが楽して大金を得たりすることができますが、昔から言うように「うまい話には気をつけろ」ということを肝に留めておくべきです。
◇4 怪しさを見破る8策(2/2)
こちらの真理を突いて、うまくその気にさせる人達に共通している行動があります。それを理解していますと、騙されずに済むかもしれません。西田教授による8策の4策までは前回ご紹介しました。今回は、残りの4策をご紹介します。
5 不得手な内容
こちらの知識不足をついてくる手口もあります。
こちらが詳しくない商品や契約内容を、話術でついてきて売り手を信じさせてきます。「わからないところは私たちプロにお任せ下さい」というように、任せておけば大丈夫という言い方です。
通帳と印鑑を添えて出させるなど、相手の手口を見極める必要があります。
6 動揺した状態
古典的なオレオレ詐欺の常習的な手口です。不安、恐怖、そして焦り、あるいは、好意、罪悪感、責任感などの感情に訴えてきて、記述の即断即決や即行動を起こさせようとする手口です。
7 権威者や合意者情報の強調
有名人の名前を挙げて、「著名な人が使っている商品だから安心」とか、「大変な評判だから有名人も使っている」など、未確認情報を吹聴して信頼性を高めようとする手口です。
8 多勢に無勢の状態
これも古典的なオレオレ詐欺の手口ですが、警察役とか弁護士役など、複数の人が関わり、こちら側が一人で、いろいろと言われるとどうしてもこちらの石を言葉に表現できなくなってしまいます。
相手側が複数で、自分側はひとりといった状況で勧められている時には注意が必要です。たとえ、こちら側が複数であっても、群集心理を利用して、マインドコントロールする手口もあるので注意が必要です。
上記にあるような状況に少しでも該当する場合、特にお金とか契約書とかを要求されたら、すぐさま怪しいと身構えましょう。慎重に対処すべきです。
◇5 ストレスや心理的なプレッシャーに負けない耐性をつくっておく
2回にわたって、だましの手口を見破る方法を紹介してきました。
相手は巧妙ですので、それに対処するためには、日頃からトレーニングして、身につけることが大事であると西田教授は述べています。
なぜなら、詐欺や悪質商法の手口はたくさんあり、今後も変化していくでしょうが、悪用される状況は、記述のように8策ぐらいの数に集約できると言うのです。
さて、こういう状況になったとき、敏感に気づいたら、次は、勇気をもった対処が必要となります。これにもトレーニングが必須です。
「8策をわかってさえいれば大丈夫」と、高をくってはいけないと、西田教授は警告しています。
たとえ8策をわかっていても、そういう人はいざという時に不覚をとる可能性が高いと断言しています。
地震や火災のような災害のときに、うまく対処するには、へそかR訓練して、身体で覚えるが大切と言いますが、それと同じことです。
詐欺や悪質商法のときでもそれと同じことが求められています。
振り込め詐欺の被害も、電話の主を確認するなどのとっさの判断や行動が、練習不足でとるべきことが取れないで生じた結果だったといえるのです。
では、日頃、何をトレーニングしておくべきでしょうか。
第一は、ストレスや心理的なプレッシャーに負けない耐性をつくっておくことです。これが、西田教授流の詐欺や悪質商法に対抗する心得の第3条なのです。
◇6 なるべく早くはっきりと断る
西田教授は、「悪質な相手が、感情を揺さぶってくる中で、こちらが理性を残して熟慮するのは簡単ではない」ので注意が必要だと言っています。
西田教授は、その理由として「人間の心は、省エネのシステムでできています。少しでも深く考えたりせずに、直感的に判断を下していきたいと無意識に動き、日常的な習慣にもとづいて、いつものように意思決定したいと考えてしまいます」ということを挙げています。
つまり、私たちは、安易で楽な対応に走りがちなのです。できれば積極的にストレスや緊張の場面を経験して、そんな場に耐える練習をしておくことは、いざというときに役に立つということです。
そして、このような我慢強い心の基盤をつくると同時にやるべきことが、なるべく早く、はっきりと断るトレーニングです。
これが第4の心得です。
電話で断れない人は、会っていまうともっと断れません。
礼儀やマナーは大事ですが、相手次第では無視しなくてはなりません。人には嫌われたくない、喜ばせたいという自己呈示動機と呼ばれる心理が誰にでもありますから、勇気がいることです。当然、慣れないとうまくできないものです。
◇7 第五条 見方をとっさに見出す
これまでだまし被害に遭わないための西田教授による5カ条の1~4までについて、ご紹介してきました。
最後の第五条の心得です。
危険だと察知したときは、とにかく逃げて、誰かに助けを求めることです。
そのためには、味方をとっさに見いだす練習が必要だと西田教授は言っています。
同じ立場でセールスを受けている人に遭遇したら、その相手が見知らぬ人でも思い切って話しかけ、本音を確認する、といった度胸をつけることを皆が心がけるべきと、西田教授が言っています。
即断即決を求める相手をふりはらって、警察や消費者センターなどの公的機関に相談するといった一歩引いた行動が大切です。
このような専門機関でなくても、誰かに相談するという行為が、心に余裕をつくり、あらためて怪しさに気づき、被害を免れた方も少なくないようです。
最後に西田教授による「だまし被害に遭わないための心得五か条」をまとめてみました。
第一条 騙される可能性を忘れない
第二条 売り口上の怪しさに気づく感性を高める
第三条 ストレスやプレッシャーに負けない耐性を作る
第四条 なるべく早くはっきりと断る
第五条 見方をとっさに見出す
第一条は、自分もだまされてしまう可能性があることを忘れない練習です。第二条は、売り口上の怪しさに気づく感性を高める練習です。第三条は、ストレスや心理的なプレッシャーに負けない耐性をつくる練習です。第四条は、なるべく早くはっきりと断る練習です。第五条は、味方をとっさに見いだす練習です。
立正大学教授の西田公昭氏は、このように警告と対策を話していました。
私も、このような状況に立たされたら、このことを思い出して、冷静に行動スタイと考えています。
そのために、さっそく日頃の生活の中で、トレーニングを実践し、いつ遭遇するかわからない詐欺や悪質商法のだましに備えたいと思います。