内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

山中で遠い谺を聞くかの如く

2017-04-13 23:59:59 | 雑感

 今年に入ってからでしょうか、何人かまったく未知のフランス人若手研究者からメールが届き、いずれも何らかの仕方での研究上の交流を私に求めてくる内容でした。今日もパリ第一大学哲学部の教員の一人からそんな内容のかなり長いメールが届きました。
 先方が私のことを知ったきっかけは、人づてだったり、私の論文を読んでだったり、あるいはどこかで私の研究発表を聴いたことがあるからだったりと、様々です。いずれの場合も、日本の哲学あるいはもっと広く日本思想に関心をもち、すでにその分野であるテーマについて研究を始めていたり、さらにそれを大きく展開したいと企図している方たちです。
 基本方針として、そのようなコンタクトや依頼には肯定的に答えています。場合によっては、私よりも相手の方の要望に相応しい人を紹介することもありますが。いずれにしても、自分のこれまでの研究活動が何らかの仕方で知られ、それがいくつかの反応を引き起こしているのはありがたいことだと嬉しく思っています。
 喩えるならば、かつて自分がどこかで発した声の反響が、その直後には聞こえてこなかったのに、時を経て予期せぬ仕方で谺のように返ってきたのを聞くような心持ち、とでも言えばいいでしょうか。あるいは、ある山中にあって、周りには人影が見えず、独りで迷い込んでしまって途方に暮れているとき、あるいは日暮れて道遠しの感をひしひしと感じているときに、意外に近いところにやはり何かを探し求めている人がいるのだということに音や気配で気づかされて、勇気づけられるときのような気持ち、とも言えるかもしれません。
 そんな気分の中で、来週水曜日のブリュッセル自由大学での講義・講演の準備に明日から集中的に取り組もうとしているところです。