国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

古文は何の役に立つのか

2024-04-04 17:05:53 | 国語

国語を教えているとしばしば聞く話です。

まずは、役に立ったという話から入りますかね。

さて、『風の谷のナウシカ』というアニメ作品があります。名前だけは知っている方は多いと思います。スタジオジブリの公式ページには「スタジオジブリは、『風の谷のナウシカ』の内容的興行的成功を機に、『天空の城ラピュタ』製作時の1985年に、『風の谷のナウシカ』を製作した出版社・徳間書店が中心となり設立したアニメーション・スタジオです」とあります。スタジオジブリが世界へ与えた影響を考えると『風の谷のナウシカ』の役割は非常に大きかったと思うのです。

え? ここでなぜジブリが出てきたかですって。

それは『風の谷のナウシカ』は平安時代の短編物語集『堤中納言物語』の『虫めづる姫君』とギリシャの古典『オデュッセイア』のナウシカーがモデルなのです。『堤中納言物語』がなければ世界の文化の中にジブリ作品がなかったことになっていたわけです。いや、偶然だろうという人もいますが、偶然(運命と言ってもいい)は重要です。なにが役に立つかは結果としてしか分からないのですから。たまに古文同様に役立つのかと言われる数学の微分積分。これがなければ、安定した高層ビルは作れませんし、経済学的な予測もできません。

偶然が大切だということは多くのサイコロを持つことが大事です。古文もサイコロとして持っていても損なしです。

もう少し、古文ができた方がよい理由を掘り下げてみましょう。それは「多様性」の確保です。

よく「多様性」が大事と言われますが、なぜ、大事なんでしょう。私が理解したのはこういうことです。Aで占められた個人とAを中心としてB、C、D、Eがある個人がいたとします(ここで個人を集団や社会と置き換えても同様です)。下がイメージです。

AAAAA

ABCDE

 

AAAAA

AAAAA

 さて、ここで「A」が壊滅する状態を思い浮かべてみましょう。なにが起こりますか。片方は壊滅、片方は40%生き残りますね。

 中心がある=専門性があるのは良いことです。しかし、それだけでは生存可能性が減ります。それが「多様性」を大事とする理由だと私は考えています。

心の中に「古文」を持っていることは自分を安定させる一助となりえます。何かのときに吉田兼好が結論を語っていることに気づくときもあるでしょうし、ほとんどの人が知らない『本朝水滸伝』を独占的に楽しめるかもしれない。自分だけが知っている楽しみって意外と重要です。楽しみがみんなと全部一緒ってぞっとしません? 

幸い、日本の古文の教育レベルは高いです。大学受験レベルをクリアすれば、古語辞典を片手にすると、だいたいの古文は読めます。

古文の世界は入試のためだけにあるわけではないのです。


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