国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

助動詞46~その1~

2023-05-07 17:21:31 | 国語


【実戦・直前】
傍線部に注目しよう。

1  君を思ふ深き心のほどを御覧ぜられよ

2  ふるさと限りなく恋しう思ひ出でらる。涙こぼるる時なり。

3  坊主なむいも寝られぬ。

4  ありがたきもの、姑に思はるる嫁の君。

5  いとけなき子を見て、思はずうち笑(ゑ)ま








1  帝を思う深い心とのほどを(深さを)ご覧になってください(御覧くださいませ)(られよ=一語)上に尊敬語なので尊敬(仰せ「らる」など)。
    なお「れ給ふ」「られ給ふ」の「れ・られ」は尊敬ではない
2  故郷が限りなく思い出される(自然と思い出す)「心理・心情+る・らる」は自発(自然とそうなること)

 なお、「こぼるる」の「るる」下二段活用動詞「こぼる」の連体形の活用語尾。「こぼ」という未然形はない。
3  坊主は寝ることができない(下に打消し語のある「る・らる」の多くは可能)(「なむ~ぬ」は係り結びで連体形、連体形「ぬ」は打消)
4  めったにないもの、姑にかわいがられるお嫁さん。(BYにあたる表現があるか、補えると受身)「るる・らるる」は連体形。BYにあたるのがここでは「に」
5  あどけない子を見て、思わず微笑えんでしまう(「微笑む」=「うちゑむ」は心理)自発。「いとけなき」の「なき」は助動詞ではない。現代の助動詞「ない」につられないように。「思わず」に自発っぽさがあるよね


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【参考】
●助動詞「る・らる」について
 四段・ラ変・ナ変の未然形+る
 それ以外の未然形+らる
 四段・ラ変・ナ変の未然形が「~a(ア段)」なのは動詞のタイプⅠで習得済みのはず。実は伏線だったのだよ。
 「らる」には「RA」という具合にそれ自身にア段が含まれているのがポイント
 どちらも下二段活用型である。
意味は「受身・尊敬・可能・自発」で私は「ウソカジ」で覚えた。

例文3より
● い・ぬ 【寝ぬ】(意味「寝る・眠る」)
   名詞「寝(「い」と読む)」とナ行下二段動詞の「寝(「ぬ」と読む)」の複合動詞。
 ナ変(往ぬ・去ぬ)と間違えないように。これを全部平仮名で書かれているときは文脈で判断する。

●いも寝【い・も・ぬ】(意味「寝る・眠る」)
   名詞「い(寝)」+係助詞「も」+動詞「ぬ(寝)」
●いをぬ【い・を・ぬ】(意味「寝る・眠る」)
   名詞「い(寝)」+格助詞「を」+動詞「ぬ(寝)」

●鎌倉時代以降には下に打消しがなくても「可能」のことがある。
  例 冬は、いかなる所にも住ま。(冬はどんな所でも住むことができる)(徒然草)

●例文4より
 「ありがたし」語源が「有り難し」で「めったにない」の意味になる

●例文5より
 「いとけなし」幼い。あどけない。子供っぽい。「いときなし」とも

 「うち」〔動詞に付いて、語調を整えたり下の動詞の意味を強めて〕
  ①ちょっと。ふと。「うち見る」「うち聞く」
  ②すっかり。「うち絶ゆ」「うち曇る」
  ③勢いよく。「うち出(い)づ」「うち入る」
   ※「うち」があって意味がわかりにくいときは( )に入れて無視すると良い。(「打ち」の意味がある時は( )に入れない、無視しない)


※一部、改稿。


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