国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

助動詞46~その7~

2023-06-23 14:55:29 | 国語

2019-02-16の記事の改変。

 

 


次の文の傍線部に注目しよう

20 京より下り時、みな人、子どもなかり。(土佐日記)

21 「今宵は十五夜 なり けり」と思ひ出でて泣きけり

22 「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ」と詠み給ひ けり






【実戦・直前】

20 京から下ったとき、みんなには子どもがいなかった。
「し」「き」経験した過去。「せ・○・き・し・しか・○」の活用は絶対暗記。土佐日記=日記だから「経験」過去。
「なかり」は形容詞「なし」の「カリ活用」の連用形

21 「今宵は十五夜だなあ」と思い出して泣いた(そうだ)。
「名詞+なり」は断定。会話・和歌の「けり」は詠嘆。地の文の「けり」は原則として伝聞過去。

22 「見渡すと、春の桜の花も、秋の紅葉もないのだなあ。海辺の苫ぶきの小屋のあたりの秋の夕暮れは」と詠みなさった(そうだ)
「なかりけり」の「けり」・・・和歌内は詠嘆。上の「なかり」は「カリ活用」の連用形。
「詠み給ひ に けり。」・・・「に」完了。「けり」伝聞過去
(上が連用形のとき)「てむ・てき・てけり」の「て」は完了♪ 「なむ・にき・にけり」の「な」「に」完了♪ 「てば・なば・てばや・つべし・ぬべし・なまし・てまし」みな完了♪(下に推量、強意かも)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【参考】
☆過去の助動詞「き」「けり」
 ・両方とも連用形接続。(なお、完了の「つ・ぬ・たり」も連用形接続
 ・活用
   き  |   せ  ○  き  し  しか   ○
   けり |   けら    ○   けり ける   けれ  ○
 ・「き」・・・体験・経験の過去
  ・「き」の接続の例外・・・サ変、カ変
    【カ変】 来(こ)+しORしか  来(き)+しORしか  例「来し方」(読み「こしかた・きしかた」)(意味は「過去」)
    【サ変】 せ+しORしか  

                         ※「こ」=カ変の未然形  「せ」=サ変の未然形
  ・けり(伝聞過去「た」「たそうだ」・・・物語の地の文などは伝聞過去が多い。物語の「き」は会話文が多い
     (詠嘆「だなあ・ことよ」・・・会話文中、和歌中に多い



三夕(さんせき)の歌(新古今和歌集の中で「秋の夕暮れ」で終わっている三首の名歌)
「寂しさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮れ」出典新古今集 秋上・寂蓮(じやくれん)
[訳] 寂しさを感じるのは、取り立ててどの色がそうだということもないのだったなあ。そこはかとなく寂しさが漂うよ、真木の群生する山の秋の夕暮れ時は。

「心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮れ」出典新古今集 秋上・西行(さいぎやう)
[訳] 情趣を解さない、出家のわたしの身にも、この情景のしみじみとした趣は自然に感じられたことよ。しぎが飛び立つ沢の秋の夕暮れ時よ。

※知られけり=「知る」の未然形+(心中だから)自発「る」の連用形+詠嘆の「けり」

「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ」出典新古今集 秋上・藤原定家(ふぢはらのさだいへ)
[訳] 見渡すと、春の桜の花も、秋の紅葉もないのだなあ。海辺の苫ぶきの粗末な小屋のあたりの秋の夕暮れは。


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