我々のスーツケースを乗せたミニバスが追い越していく 振り返ると、海抜四百二十メートルのTHE ROCKが滑走路の向こうにそびえている。
こんな風に滑走路を歩いて横断するのが日常になっている飛行場なんて、世界でもここだけではないだろうか。スペイン側が陸上封鎖してどうしても必要になって建設されたのだから、こんな事になってしまったのか?
スペインがジブラルタルとの国境を閉ざしていた1960年代から70年代にかけては、観光客がここを歩くことなどなかっただろう。
イギリス領ジブラルタルの街を出てスペイン領へ入るには、どうしてもこの滑走路を横切らなくてはならない。そういう地形なのだ。次の地図で一番上がスペイン領リネア・コンセプシオンの街。下がジブラルタル半島。間の青い部分が「中立地帯」。
その中に空港が建設された↓
ジブラルタルは1713年のユトレヒト条約でイギリスに割譲されたが、現在の空港敷地のある青色の部分は中立地帯であって、時条文に記されたイギリス領ではない、と、スペインは主張している。 青色の部分に記された年号は、イギリスが実質的に使い始めた年号になる。※拡大してごらんください
最初は庭園やクリケット場でスペインも容認していたが、飛行場をつくられてしまって困ったのだろう。 「土地の返還」を求めて、イギリスとの国境が閉ざされた。
もともと1936年に緊急用の飛行機発着場だったものが、どんどん拡張されて、いまや1600mの滑走路を持つようになってしまった。もちろん今も軍が使用している 1987年に民間利用も(スペインとの間に)合意され、現在一日3便から6便程度(季節や曜日による)の飛行機が離発着している。この日はマンチェスター、ブリストル、ロンドン、から各一便+モロッコのタンジールから一便。つまり、一日数回しかない珍しい時間にちょうど立ち会えた、というわけだ。
空港ターミナルの駐車場でミニバスからスーツケースをおろす。ここからは自分で荷物を持って国境を越えなくてはならない。係官はのんびりしたもの。国境問題るなんて感じられない。我々日本人観光客のパスポートはハンコさえ押そうとしなかった。
**スペイン側のカフェでちょっと休憩して 今日は内陸の街・ロンダを目指す。
地中海を右に見ながらしばらく走ると、ジブラルタルTHE ROCKが印象的な姿をみせていた↓
三十分以上走って、内陸への道へ入る一度は見えなくなっていたが、山道をのぼってゆくと再び水平線に浮かんでいた。