今年最大の衝撃だった作品を再読した。
遠藤作品は日本人でいること、人でいることすら嫌になるものが多い。
しかし深い河は考える間もない程に、あっというまに、僕を途方も無い処まで飲み込んでいった。
生と死に向き合うところから始まるのはいつもの遠藤なのだが、本作に関しては何度読んでもテーマが見えてこない。いや、見えないのではなく遠藤と僕の間で共有すべきそれが無いように感じる。もっといてば僕の中にないものがそれなのだろう。そして何もわからないままに飲み込まれてゆく。
僕はガンガーの中で遠藤と同じ光景を目にしたことがある。遠藤はあの河の向こうに何を見たのだろう。僕もいつか遠藤と同じ何かを見るのだろうか。