ぼくが鉄道ファンになったのは、道路を走る路面電車に不思議な魅力を感じてから。でも、かつて東京を縦横に走り回っていた都電を知らない。都電に限らず、自動車や地下鉄などの台頭によって惜しまれつつ消えていった路面電車の足跡を追いかけるのも、非常に興味があり、時々、それだけのために電車に乗ったりもする。
本書「都電 懐かしの街角」は、昭和50年生まれのぼくにとって未知の世界である「昭和40年代、東京」を、都電を中心にしつつ、自動車や建物、人々の生活や祭りの様子などをとらえた、非常に興味深い写真集だ。いま、仕事で墨田区や江東区あたりを回っているが、この地域には、至る所に都電の史跡を残している。都電の専用軌道だった場所が今は静かな遊歩道になっていたり、竪川の人道橋がかつて都電専用橋で、人々は近道するためにこの橋を渡っていた・・・など。またそれだけでなく、上野の昭和通りや、秋葉原の中央通り、ヤマギワ電気付近を走っている都電の写真もあり、改めて、都電のすごさと、消えてしまった悲しみを感じる。
写真撮影をした天野洋一氏は、同様に「懐かしの横浜市電」という写真集も出版され、これもぼくのお気に入りだ。両者は装丁も非常に似ていて、好感が持てたが、残念ながら、氏が昨年(2004年2月)お亡くなりになったことも「都電~」で知ってしまいました。
都電が今も好きな方、昔の東京を知りたいひとなどにはお奨めできます。