市町村が運営する国民健康靉(国保)で、交通事故などが原因の治療費を本来は事故の加害者側か支払うべきなのに、費用の請求に至らずに国保が年間数十億円を取りはぐれていることが1月8日、厚生労働省への取材で分かった。
放置すると国保に加入する住民の負担増につながることから、河野行政改革担当相が「医療費を無駄にしている」と問題視し、厚労省に実態調査を指示。
市町村によっては長年続いている可能性もあり、同省は加害者側にきちんと請求するよう指導に乗り出した。
交通事故でけがをした被害者の治療費は、加害者が自賠責保険などを使って全額負担するのが原則。
ただ損害保険会社の支払い審査に時間がかかる場合があるため、被害者が国保など公的医療保険を使って治療し、後から国保などが加害者・損保側に費用を請求する「第三者求償」という仕組みがある。
国保の取りはぐれは、市町村の担当者がこの仕組みを詳しく知らなかったり、被害者側の届け出がなく交通事故と気付かなかったりして起きる。
厚労省によると、国保の第三者求償の2013年度実績は全国で約4万3千件。うち交通事故は3万7千件余りで、請求総額は約132億円に上る。
損保業界のまとめでは、交通事故での公的医療保険全体からの請求は10%程度だが、国保に限ると5%弱にとどまる。
もし国保も他の公的保険並みに請求すれば、少なくとも数十億円規模の保険金が国保に支払われると厚労省はみている。
サラリーマンが入る健康保険組合や協会けんぽでは、企業側の働きかけで従業員から比較的順調に被害届が出されるが、自営業や無職の人などが対象の国保では事故を把握しづらい。厚労省は損害保険協会と連携し、届け出漏れを防ぐ考えだ。
医療機関から回ってくるレセプト(診療報酬明細書)のチェックも強化して、交通事故を見逃さないよう市町村を促す。