人工多能性幹細胞(iPS細胞)から目の網膜のもとになる細胞を作り、「網膜色素変性症」という難病の患者に移植して治療する神戸市立神戸アイセンター病院の臨床研究計画について、厚生労働省の作業部会は6月11日、実施を了承した。
年内にも最初の移植手術が行われる見通し。
網膜色素変性症は視野が狭くなり、視力低下や失明につながる進行性の病気。
目が感じた光を電気信号に変える網膜の視細胞が徐々に死滅し、失われる。
遺伝的要因で発症するとされ、根本的な治療法は確立されていない。
国内患者数は約4万人で増加傾向にある。
計画によると、対象は20歳以上でほぼ視力を失った重い患者2人。
京都大が健康な人から作って備蓄しているiPS細胞を使い、視細胞のもとになる細胞を作製。
直径約1ミリのシート状に加工して患部に移植し、正常な視細胞に成長させ、光を感じられるように改善を目指す。
移植後、1年間にわたる経過観察で安全性や有効性を確認する。
同病院には計画の事前審査を行う機関がないため、昨年11月に大阪大の有識者委員会に審査を申請。
2月に了承されて同月、厚労省に申請していた。
計画を主導する同病院の高橋研究センター長は、理化学研究所のプロジェクトリーダーだった2014年、「加齢黄斑変性」という別の網膜の病気の患者にiPS細胞を使った世界初の移植を実施した。
iPS細胞を使って目の病気を治療する研究は、大阪大も昨夏、角膜が濁り視力を失う「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者に移植を実施。
同病院で実施されれば3つ目の病気となる。