踊る小児科医のblog

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エスカレーター巻き込まれ事故で足指骨折/八戸の百貨店

2005年01月28日 | こども・小児科
27日の各紙に、八戸の百貨店で起きたエスカレーターでの事故の記事が掲載されていました。地元でよく行くお店での事故であり、子どもの事故防止は小児科医が行う育児支援の一つとして重要なテーマですので、状況を整理してコメントしてみたいと思います。

<事故状況>
・青森県八戸市のさくら野百貨店八戸店
・1月11日午後7時半ごろ
・青森県内の小学5年の男児、母親と一緒に来店
・上りエスカレーターの2階降り口近くで
・左足の靴のつま先部分を、踏み段と、踏み段ライザーと呼ばれる階段の垂直部分との間に開いた数ミリのすき間に挟まれた
・異常に気付いた従業員が緊急停止させたが
・足が挟まったまま踏み台がせり上がり、足の指3本を骨折した
<原因>
・エスカレーターは1―5階までが1968年に設置された旧型
・新型と違い、踏み段ライザーの部分にくし状の溝がなく平らで、摩擦を防ぐために踏み段との間に数ミリのすき間が開いている
・男児が履いていた靴はつま先部分までゴムに覆われたもので、摩擦が強かったことも挟まれやすくなった要因とみられている
・管理している日立ビルシステム八戸営業所によると、同市内のほとんどのエスカレーターは現在、段差に溝があるタイプだという
<対策>
・同店は事故後、踏み段ライザーに潤滑剤を塗るとともに
・エスカレーターの上り口部分に、ステップの中央に立つよう注意を促すポスターを取り付けた
・店内放送の音量を上げたりする対策を実施
・新型エスカレーターへの更新を検討している。
・同店では「予想できない事故とはいえ多大なご迷惑を掛けた。対策を講じたい」としている(このコメントはデーリー東北のみに掲載)

エスカレーターに靴挟まれる 小5足の指3本骨折 八戸(河北新報)
さくら野八戸、エスカレーターで男児骨折(デーリー東北)

<コメント>
この事故は、旧型のエスカレーターで立ち上がりの部分に溝がなく隙間があり、男児が先端がゴムの靴を履いていて、ステップの前方ギリギリに立っていたという悪条件が重なったために起きたのが原因と考えられます。
また、事故の起きた百貨店は、丸光→ビブレ→さくら野と名称や経営母体が変わってきたことが、設備が古いまま残されてきた要因になっていた可能性が高いと思われます。

もちろん、男児や母親の不注意があったことも事実ですが、事故というのは、ちょっと靴が引っかかったが引き込まれずに済んだという程度の小さなニアミスがいくつも起きていた上で、たまたま悪い条件が重なった時に大きな事故につながるものであり、単独で起きるものではなく、単に不注意を責めても予防にはつながりません。
事実、下記のエスカレーター専門家によるサイトに事故例が多数掲載されていますが、巻込まれ(引込まれ)事故については報道例はないものの「この手の事故は死亡事故にならないケースが多く報道されていないだけで、実に多く発生しています」とコメントされています。

事故報道~はるかの毎日!昇り降り!! エスカレーター・エレベーターの専門サイト

この百貨店の担当者が「予想できない事故とはいえ」と言ったと伝えられていますが、私たちにはエスカレーターのタイプによる違いの知識がなくても、ビルの管理部門やエスカレーターの保守業者は、旧型が新型に比べてこの種の事故の危険性が高いことは当然承知していたはずであり、このコメントは(もしそう言ったのが本当であれば)、事故防止・安全対策に対する認識が足りないと言わざるを得ません。

<結論>
・旧型で垂直部分に溝がなくすき間の空いているエスカレーターは、可能な限り早急に新型に交換すべきである
・エスカレーターやエレベーターの事故はこの他にも多数発生しており、安全な利用についての(特に子どもと親に対する)意識啓発と現場における予防対策が求められている