やっと8巻読み終えた。個人全集を通して読むのは今回が初めてだ。8巻全てに一定の質をもった内容を盛り込むのは無理があるように思う。個人の日記や書簡など、そもそも公開を前提とせずに書かれたものを死後に勝手に公開してしまってよいものなのだろうか。その作家に傾倒した人にとっては、そうした私的な文章を手にしたいという欲求があるのはわからないでもない。しかし、私には、そうした行為は単なる破廉恥にしか思えない。
それでも全8巻のうち1巻目から5巻目までは、作家の仕事を辿るのにふさわしいものだ。よく、作家の傑作はその処女作であり、それを超える作品を出し続けるのは至難の技である、というようなことを聞くが、この作家も例外ではないように思う。「ミラノ 霧の風景」が私は一番好きである。それ以降の作品は、他人に読ませるというよりも、自分の人生の整理のような印象を受ける。
書簡は公開するべきではなかったと思う。特に両親宛の手紙は読むに耐えないものばかりだ。手紙から、留学中の生活費が親からの仕送りによって賄われていることを知って驚いた。大学を卒業した人間が、どのような事情があるのか知らないが、単に自分探しのような「勉強」のためにフランスだのイタリアだので何年も親掛かりで暮らしているなど、今の時代ですら、並の家庭では許されないだろう。正真正銘の「良家」のお嬢様だったのだと改めて感心した。また、手紙の文章も酷いものだ。大人が書いたものとは思えないような代物だ。この人のデビューが遅かったのは、遅くなくてはならない必然性があったということなのだろう。
どんなにすぐれた文筆家であっても、無限に創作活動を継続することはできないだろう。読者としての作家との付き合いというのは、もう少し読んでみたいと思ううちに、その作家を卒業するというのが幸福な関係の維持には良いのかもしれない。
それでも全8巻のうち1巻目から5巻目までは、作家の仕事を辿るのにふさわしいものだ。よく、作家の傑作はその処女作であり、それを超える作品を出し続けるのは至難の技である、というようなことを聞くが、この作家も例外ではないように思う。「ミラノ 霧の風景」が私は一番好きである。それ以降の作品は、他人に読ませるというよりも、自分の人生の整理のような印象を受ける。
書簡は公開するべきではなかったと思う。特に両親宛の手紙は読むに耐えないものばかりだ。手紙から、留学中の生活費が親からの仕送りによって賄われていることを知って驚いた。大学を卒業した人間が、どのような事情があるのか知らないが、単に自分探しのような「勉強」のためにフランスだのイタリアだので何年も親掛かりで暮らしているなど、今の時代ですら、並の家庭では許されないだろう。正真正銘の「良家」のお嬢様だったのだと改めて感心した。また、手紙の文章も酷いものだ。大人が書いたものとは思えないような代物だ。この人のデビューが遅かったのは、遅くなくてはならない必然性があったということなのだろう。
どんなにすぐれた文筆家であっても、無限に創作活動を継続することはできないだろう。読者としての作家との付き合いというのは、もう少し読んでみたいと思ううちに、その作家を卒業するというのが幸福な関係の維持には良いのかもしれない。