熊本熊的日常

日常生活についての雑記

いってこい

2008年10月17日 | Weblog
今日、近所のガソリンスタンドのガソリンの値段が1年前と同じ水準まで下がった。今週だけでリッターあたり5ペンス下がったことになる。競争原理が機能しているので、値段が上がる時は、近隣の同業者の動きを睨みながら少しずつ上げるが、下がる時は一気にシェア上昇を狙うためか大胆なマークダウンを実施する傾向があるように感じた。特に、金融不安が表面化したここ2週間ほどの間の動きが大きかった。結局、ガソリンの値段は今年の7月頃がピークだったということになるのだろう。

ガソリンに限らず、小売業の値下げの動きが目立つようになった。先日、割引券が送られてきた話をここに書いたが(10月14日「クーポン万歳」)行きつけのスーパーのハウスブランド品は軒並み値下がりしている。あのカレーペーストは9ペンスになっていた。

もちろん、すべての物価が下がっているわけではないが、金融不安に端を発する景気の調整は、人の健康に例えるなら血流障害あるいは心臓疾患と言える。血流が滞った状態が長期化すれば、やがてその部位は壊死する。壊死した組織は即ち不良債権である。壊死した部分が拡大すれば、やがて生命は危機に瀕する。原油価格の下落や小売価格の調整は、滞った血流を正常化するための自然の反応といえよう。もうすぐクリスマス、そして年末年始という一年間のうちで最も消費が活発になる時期を迎える。産業によってはこの時期の需要が年間の収益の大きな割合を占めるところも少なくないだろう。それが不発に終わったときの影響の連鎖は計り知れないものがある。

日本ではここへきて証券会社の個人客の動きが活発化しているそうだ。伝統的なバリュエーションで見れば現状の株価は割安だという判断が働いているのだろう。確かに、これだけ株価が下がれば株価収益率や株価資産倍率といった指標は平時には考えられないような値を示していることだろう。しかし、その「割安」な指標のもとになっている業績予想はどれほど現状の危機を織り込んだものだろうか。この1ヶ月ほどの間に経済情勢は大きく変化している。その変化以前の状態を前提に作られた業績予想と、それに基づくバリュエーションにどれほどの意味があるのだろうか。

一連の世界規模での金利引き下げや潜在的破綻金融機関に対する公的資金の投入で、一旦は小康を得たかのように見えるだろう。しかし、これまで値上がりを続けて、売買益を生み出していた商品相場や不動産相場が下落に転じている。それは世の中の資産価値が低下しているということであり、その資産を運用することで収益を得る事業形態の産業は、機能不全に陥る、あるいは既に陥っている。

日本はサブプライム問題の影響から最も遠いところにあると言われている。それでも9月だけで上場企業が7社倒産し、10月は約半分を過ぎたところで上場企業5社が倒産、生命保険会社が1社破綻している。バブル崩壊以降、上場企業の倒産など珍しくもなくなってしまったので、あまり大きく取りざたされることが無いようだが、本来、上場企業は倒産確率が極めて低いはずだったのである。厳しい上場審査があり、上場後は情報開示を行って、経営に対する市場からの監視を受け、経営の健全性が厳しく問われるのが上場企業である、はずだった。それがこれだけ頻繁に破綻するということが何を意味しているか、誰でもわかると思っていたが、そうでもないらしい。

ガソリンの値段が1年間でいってこいになったからと言って、素直に喜ぶことはできない。