熊本熊的日常

日常生活についての雑記

だから言わないこっちゃない

2008年10月24日 | Weblog
朝、Canary Wharf駅を出て、職場に向かう途中、無料の新聞を配っているオニイサンたちがいる。毎朝立っているわけではないが、立っていることが多い。そこで「CITY A.M.」という新聞をもらって職場のあるビルに入る。

今日のトップは「THE AXE FALLS AT GOLDMAN SACHS」。金融機関の人員削減の話は、すっかり日常風景の一部になってしまい、別に驚くこともなくなってしまった。その記事のなかに、これまでに実施された英国内の投資銀行関連の人員削減一覧が掲載されていた。これは「Here Is The City」というニュースサイト(http://news.hereisthecity.com)からの引用として紹介されていたものだ。実数として削減規模が最も大きいのはLehman Brothersの14,500人で、他社とは桁違いだ。しかし、社員数に対する削減割合で見るとLehmanは48%で、それよりさらに大きいのがBear Stearnsの54%である。この2社が突出して大きいが、社員の2割以上を削減した会社は12社だ。さらに1割以上という線まで見てみると、21社になり、そのなかには日系金融機関の名前も出てくる。

今年4月20日のブログ「Bloodbath」に、金融業の雇用縮小をおもしろおかしく書きなぐっているマスコミにもやがてその波が襲うということを書いた。このHere Is The Cityの記事にはThomson Reuterの名前もある。メディア産業全体に一層の合理化が迫られることは世の中の流れとして当然だろう。虚業はいつか滅びるのである。この国での金融部門の位置づけを考えれば、英国銀行総裁でなくとも危機感を抱かずにはいられないだろう。

ところで、同じく今日のCITY A.M.にはJP MorganのCEOであるJamie Dimon氏のもとに脅迫状が届いているという記事もある。同一人物からとみられるタイプ打ちの脅迫状が少なくとも45通発見されているという。その内容からJP MorganによるWashington Mutualの銀行部門買収に不満を持つ人物が犯人とみられているのだそうだ。

世間への露出度が高くなれば、その人に対して良く思う人も、悪く思う人も増えるのは仕方の無いことである。ただ、今回の金融危機に関しては、これまで金融機関に勤める人たちの高額報酬を皮肉る報道も少なくないようなので、それが世論に影響を与えていることは想像に難くない。例えば、10月15日のCITY A.M.には「WALL STREET’S BIG NINE: LEADING BANKS EXPECTED TO TAP INTO RESCUE FUNDS」と題する図表が載っていた。この表で、果たしてCEOの年俸というデータが必要なのだろうか?
BANK' S NAME/EXPECTED TO GET/MARKET CAP/CEO/Estimated remuneration
CITIGROUP/ 25bn/ 89.9bn/ VIKRAM PANDIT/ 0.57mn
MERRILL LYNCH/ 12.5bn/ 19.66bn/ JOHN THAIN/ 17.5mn
STATE STREET BANK/ 3bn/ 21.2bn/ RONALD LOGUE/ 28.3mn
JP MORGAN/ 25bn/ 139.5bn/ JAMES DIMON/ 27.8mn
GOLDMAN SACHS/ 10bn/ 47.6bn/ LLOYD BLANKFEIN/ 70.1mn
BANK OF NEW YORK/ 3bn/ 38.3bn/ ROBERT KELLY/ 20mn
BANK OF AMERICA/ 12.5bn/ 115bn/ KENNETH LEWIS/ 24.8mn
MORGAN STANLEY/ 10bn/ 23.4bn/ JOHN MACK/ 41.3mn
WELLS FAGO/ 25bn/ 110bn/ JOHN STUMPF/ 12.5mn
(単位:米ドル  出所:CITY A.M. 2008年10月15日)

常日頃からマスメディアの存在意義というものに疑問を抱いている。「言論の自由」だの「知る権利」だのを錦の旗印にして正義の味方面をしているが、書いている内容は公衆トイレの落書きに毛の生えた程度のものでしかないように思う。