熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「Hotel Diaries」

2008年10月18日 | Weblog
これは動画作品だが映画とは違う。写真の延長のようなものと言ってしまうのも少し違和感がある。John Smithの作品で、彼が実際に宿泊したホテルの室内を写した一連のビデオクリップ集である。構成は以下の通り。

Frozen War (Ireland, 8 Oct 2001)
Museum Piece (Berlin, Germany, 2004)
Throwing Stones (Switzerland, 2004)
B & B (Bristol, England, 2005)
Pyramids/Skunk (Rotterdam, Netherlands, 2006/7)
Dirty Picture (Palestine, 2007)
Six Years Later (Ireland, 2007)

今日はこのなかから3番目のThrowing Stonesと最後の2作品を除く5作品が上映された(PyramidsとSkunkは別扱い)。

それぞれ10分程度の作品で、特に何か劇的なことが起るわけではない。真夜中に自分の宿泊している部屋の様子を淡々とハンディビデオでナレーションをつけながら撮影しているだけだ。映像そのものはおもしろくない。しかし、観終わって「ん?」と思うのである。

ホテルというのは西洋の価値観による「快適さ」を顧客に提供する宿泊施設である。そのホテルが世界のどこにあろうとも、部屋の内部というのはほぼ同じようなつくりになっている。テレビのスイッチを入れればCNNが映る。ルームサービスの食事のメニューも場所に関係なくほぼ同じようなものである。

ホテルの存在そのものも、感覚的にはその立地している場の文化とは隔絶された特殊なもののように見える。9月20日にパキスタンのイスラマバードでマリオットが自爆テロに遭ったが、テロリストが狙ったのは、米系チェーンで西洋人が多く利用するという理由に拠るのだろう。彼等にとってマリオットは米国そのものという認識だったということだ。2004年製作(日本での公開は2006年)の映画「ホテル・ルワンダ」では舞台となっている欧州系ホテルに治外法権があるかのような存在感を与えている。

こうしてみると、ホテルというのは特殊な空間である。だからどうということもないのだが、日常風景のなかに、そういう特殊な空間というものがあるのだと、ふと不思議な気分になった。