7月14日(土曜日)。晴れ。猛暑注意報発令中。予想最高気温は(メトロバンクーバーのある)沿岸部で25度から30度前後(ニューウェストミンスターでは28度)。いつも暑い内陸は35度から40度くらい。(海風が通るバンクーバー国際空港で計測される)公式の平均気温は22度だそうだから、季節外れの猛暑ってことになるのかな。まあ、湿度が45%前後だから、28度でも楽なことは楽だけど、土地っ子のカレシは「蒸し暑い」と愚痴。内陸地方はもっと湿度が低いけど、乾燥しすぎて森林火災が多発するのが悩み。去年は大規模な火災が数十ヵ所で発生して、焼失面積は合計で日本の国土面積の1.6%に当たる6000平方キロを超え、数百キロ離れている私たちも流れて来た煙に何日も閉じ込められて、毎日の天気予報は気象用語ではないはずの「煙」。
[写真] 朝の太陽はこんな感じ・・・
[写真] 夏の夜空の月もこんな感じ・・・
太陽の光が遮られたおかげでずっと出ていた異常高温注意報は解除になったけど、バンクーバー圏では普通なら「低リスク」の2か3のAQHI(空気質健康指数)も「高リスク」の7になって、街ではマスクがばか売れ。でも、実際にして歩いていたのはほとんどがアジア系の人たちだったような気がする。でも、東京に行くと新宿駅辺りでの「白いマスクの壁」についぎょっとしてしまうあのマスク、微粒子を95%ストップする等級「N-95」のものを正しく着用するのでなければ、かえって逆効果らしい。というのも、普通のマスクは肌に密着させられないから、隙間から微粒子が入って来るし、マスクを通しての呼吸はどうしても強く吸うようになるので、怖いPM2.5を肺の奥深くまで吸い込んでしまうことになるんだそうな。これじゃあ気休めにもならないじゃないの。
振り返ってみると、煙が沿岸方面に流れ始めてから約1ヵ月、空が煙に覆われてAQHIが健康リスクが高い7まで上がった約10日間のあの「不健康な夏」もカレシの急性心筋梗塞に寄与したんじゃないかと言う気がするな。心臓発作を起こしたときのカレシはタバコをやめて30年以上経っていたし、血中コレステロールは正常に近かったし、血圧は高血圧「ぎりぎり」の数値でその1年前より低かったし、糖尿病もなかったので、退院後の生活指導を担当した看護師さんがちょっと首を傾げていた。昔からやや不安神経症的なところがあるカレシのことだから、ストレスの蓄積が主因であることは確かだろうと思うけど、去年の「煙害」が進行を早めた可能性も考えられるな。それと上の階のドタバタとの関係が明らかな「白い粉ぼこり」もある意味で大気汚染として寄与していたかもしれない。というのも、(子供が走っていた)リビングとダイニングの家具だけに毎日拭き掃除をするくらいの白い粉のような埃がたまって、掃除代行業のシーラが異常だと言うくらいだったのが、騒音一家が引っ越すと同時にその白い粉も姿を消した(同時にひどくなっていたワタシの咳も収まった)というエピソードがあったからで、あれは築浅でまだ養生中だったコンクリートの天井に(塗り直しが必要で入居前に)塗ったペンキ(あるいはコンクリート粉と混じったもの)が振動で粉になって落ちて来たものだったんじゃないかと想像しているんだけど。
その前に書いていたモーツァルトとベートーベンをモチーフにした芝居脚本を棚上げして、騒音問題に始まってマンション暮らし全般をテーマにした脚本を書き始めたのがおととしの秋。現実的なテーマだったせいか話がどんどん進んで、テーマがマンション暮らしから、収まるところを知らない住宅価格の高騰や賃貸アパートの空室不足と家賃の高騰などの「普通の市民」がなす術もなく巻き込まれた大都市圏の住宅問題に広がって行って、ワタシのストーリーなのにどんどん勝手な方向に発展。何とかものになりそうなところまで来たときには登場人物たちのラブストーリーになっていて、しまいに3組のカップルが誕生してジ・エンドになったからもう何をかいわんや。あちこちで聞いてみると、そういうことは良くあることらしいけどね。手直しをして、考え直しをして、書き直しをして、と進めているうちに最初は見えなかったことが見えて来て、それを取り込んで行くことでストーリーに幅や奥行きができて、見ている人の共感を呼ぶようなせりふや場面が生まれてくるのかもしれないな。
個人的に先生役を買って出てくれたArts Clubのキャシーが「PTCに送って査読してもらえるところまで来た」と言ってくれたのが11月半ば。PTC(Playwright Theatre Centre)というのは舞台制作はしないで劇作家の育成や支援をしている団体で、査読してもらうために「劇作家」として加入していたので、提出するための「最終版」を仕上げようとがんばっていたところでカレシが心筋梗塞。入院している間、退院してから普通の生活に戻るまでの間、本業の仕事も忙しい時期だったので、1年かけて書き上げたワタシの「処女作」はしばらく埃をかぶることになってしまった。
だけど、世の中は塞翁が馬とはよく言ったもので、思いがけない幸運に恵まれて「処女作」はさらに手直し。やっと査読の申し込みをしたのはつい先月の終わり。結果が返ってくるまでには1ヵ月くらいかかるそうなので、それまで毎日ちょっとどきどき。最悪「くだらない」と言われるかもしれないし、うまく行けば「よくできました(花丸)」で終わるかもしれないし、もしかしたら「さらに磨き上げて制作を目指しましょう」と言ってもらえるかもしれない。どっちにしても、カレシの病気による中断と「思いがけない幸運」のおかげで半年前よりは格段に進歩したものになったのは間違いない。ワタシって不思議に幸運がついて回るらしいところがあって、跳躍台になった「思いがけない幸運」は今でも信じられないくらい思いがけなかった。
あれは3月の初め・・・