リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

劇場の灯が再び点る日が近い

2021年07月11日 | 日々の風の吹くまま
7月10日(土曜日)。☀☀☀。静かな土曜日。今日はArts Clubが2022年秋の上演を予定して制作を進めている芝居のワークショップの見学があるので、ランチを食べる暇がなくてもいいように、ベーコンとポーチドエッグとキウィフルーツでしっかり朝ご飯。いつものように洗濯をしながら掃除をして、終わったらもうそろそろ出かける時間。バンクーバー市内まではだいたい1時間と想定して、Stanley劇場に行くときはいつも車を無料で路駐できるところに止めるので、劇場までのウォーキング(半分)を兼ねて15分追加。土曜日なので、反対方向はけっこう交通量が多かったけど、バンクーバー方面はすいすい。途中で(忘れていた)大規模な道路工事に遭遇したけど、それでも目的のスポットに集合時間の30分前に到着。

歩いて10分足らずで劇場に着いたら、すでに10人くらいがドアの外に集まっていて、にぎやかにべちゃくちゃ。パーティなどにわざとにほんのちょっと遅れて到着することをfashionably late(かっこよく遅刻)と言うんだけど、Arts ClubのADCの中核メンバーは、レセプションで何でもいつも早々と集まる癖がある。暇な年寄りが多いからかと思っていたけど、どうやら狙いはイベントが始まる前の親しい同士でのおしゃべりにあるらしい。特にリハーサルやワークショップの見学は日中に少人数を招待してのわずか1時間ほどのミニイベントなので、来る人はだいたい決まっていて、みんな70代、80代のリタイア組。現役時代は企業の経営者や重役だったり、コンサルタントや弁護士だったり、学者だったりと経歴は違うけど、みんな根っからの芝居好きの楽しい人たち。

芝居は父方の祖父母が第2次世界大戦で収容所に送られた日系人、母方の祖父母がイギリス軍の兵士として香港で日本軍の捕虜になった白人カナダ人という家系に生まれたMark Sakamotoという人の回顧録を脚色したもので、戦争中は互いに敵だった家族が、戦後にその子供たち(著者の両親)の世代でひとつの家族になって和解するという内容。異人種、異文化、異体験、異次元の時空間をまたがるストーリーをどうやって2時間ほどの芝居にまとめるかが一番の課題だなと思っていたけど、Stanley劇場のステージにコンピュータグラフィックスを駆使したイメージを投影しながら、演出家が何人もいる映像やサウンドのテクニシャンと相談やら議論やらをしていて、なぁるほど。演劇に興味のない向きには退屈極まりないだろうけど、演劇を独習中のワタシには学校のどんな講義にも勝る絶好の機会で、バルコニー席の最前列で前の手すりに身を乗り出して耳を済ませること30分。

ランチタイムでみんな出払った後で、ドラマトゥルクを務めた副芸術監督のスティーブンと演出家を交えての質疑応答。このワークショップでは場面をつなぎ、登場人物の心情を補完する「ビジュアルなボキャブラリ」を構築しているところだそうで、コロナで劇場の灯が消えている間に生の演劇にもコンピュータ技術が深く浸透したことを改めて実感。お開きの間際に愛犬のメイベルを連れた芸術監督のアシュリーが「みんなに会いたくて」と立ち寄ってくれて、かわるがわるメイベルをなでながら、またひとしきりぺちゃくちゃ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるアシュリーに(勝手に「おばちゃん」を自称している)みんなで「重大発表を待ってるよぉ」。独身のままで40代に入って体外受精で子供を生もうと決めたアシュリーはすごく勇敢だと思う。がんばれっ。